進め!正太郎


父が五年程前に長野の蓼科高原近くに小さな山荘を建てました。

父は昔から蓼科が好きで長年の夢だったようです。

それからというもの、両親は揃ってしばしば蓼科に行っています。

自然に囲まれて静かな高原は疲れた身体を癒してくれるんでしょう霧


僕も仕事が無い時は極稀に遊びに行くことがあるのですが

先日は父と二人だけで八島ヶ原湿原にハイキングに行って来ましたくつ。


八島ヶ原湿原は霧ケ峰の北部に位置する小さな湿原です。

希少な植物が多く群生し、特にこの季節は気持ちの良い所です晴れ

湿原の周囲を歩いて近くの山を登るコースで大体3時間。

手軽に楽しめるハイキングとしては丁度いいんですよね。


考えてみると父と二人でハイキングなんてしたのは初めてな気がします。

たまには父子二人ってのもいいもんですな音譜


父は当初僕が噺家になる事に真っ向から反対しました。

勿論母も諸手挙げての賛成ではありませんでしたが、渋々認めてくれました。

そりゃまぁ長男が芸人になるなんて親としては認めたくないもんですねにひひ


結局父は師匠の元に入門の挨拶に行く際、一緒に来てくれませんでした。

父なりの必死の抵抗だったように思います。

母と二人で師匠に挨拶に行った事が昨日の事のように思い出されます。


父は僕がすぐにでも辞めると思っていたのではないでしょうか得意げ

一年経ってもなかなか辞めない僕に父はやっと認めてくれたのか、

お世話になっている師匠の元に母と一緒に改めて挨拶に来てくれました。

あの日の事は僕なりにとても感謝しているのですよ、お父さん。


あんなに反対していた父が今は「息子が駆け出しの落語家なもんで!」

と声を大にして宣伝してくれたりします。わからないもんですね(笑)

この歳になってまで世話になりっぱなしで、ありがたい事ですあせる


そんなこんな色々思い出しながら山道を登っていました。

父はもう還暦を過ぎましたが僕よりもよっぽど元気で、僕より先に

ひょいひょい山道を登って行きます。結構ついていくのたいへん汗


帰り道に父が言いました。「今度は蓼科山(標高2530m)に一緒に登ろう。」

僕は言いました。「嫌です。」


かっこうやうぐいすがすぐそばで鳴いていました鶯

眼下に見える緑がとても鮮やかで、吹く風はとても爽やかです。

インドアな僕でさえ初夏の山は魅力的に感じるもんです。

父とまた山を登りたいと思いました、低い山なら。