ドアを開けることと

新しい空間にいることは

必ずしも同義ではない。



ドアを開けてみたものの

あまりに冷たい空気や

暑い空気が押し寄せる。



あるいは、

砂嵐のような黒胡椒が

顔面に叩きつける空間であったとき、



ドアを開けてはみたものの

その空間に立ち入ることを躊躇したとしても、それは仕方ない。



もっと言えば、

開けたドアから、

異臭を放つピンポン球が襲いかかってきたら、


そのピンポン球がすごく重くて、弾力があったら、勢いがあったら、


慌ててドアを閉じるか、

右にあるもう一つのドアを開けてみたくなったとしても不思議ではない。



だから、彼女たちは提案した。


「一つの空間には必ず二つ以上のドアを設けること」を。


右でもいいし、左でもいい。

上でも、下でも、斜め上でもいい。

右に二つでもいい。



そういうことが

自由っていうことじゃないのと

祖母は言って、タバコの煙りを深く吐き出した。