「働く」ということ Part 2 | ■■■現役商社マン/武浪猛の商社マン流人生指南■■■     若き血に燃ゆる者たちへ!

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このままじゃ、日本国は滅亡の国家に成り果てる。 世界の中で揉まれてきたオレは、オレ流の武士道というものを育んで来た。オレの言葉が、少しでも君ら若者の心に刺さればと思って、オレはこのサイトを立ち上げた。 さぁ、この国を元気にしようじゃないか。

前回の続きだ。

オレがリストラに従事していたころ、一人だけ、最後まで転職先が決まらない従業員(オレよりもちょっと年上だった)がいた。

オレはなんとかしたいと、裏で候補先会社の人事担当役員と非公式な電話会議をして彼を売り込んだ。幸運なことに、最後に採用の通知が来た。

なんと、その後に、彼からランチに誘われた。

「解雇となって一時は落ち込んでしまったが、これほど手厚くいろいろと汗水流して奔走してくれて感謝している。是非、ランチをご馳走したい」との嬉しい申し出だった。


転職先が決まったとは言え、収入は下がるわけで、しかもその原因であるオレをランチをご馳走してくれるなんて、オレは喜んでレストランに駆けつけたよ。

ランチでは仕事の思い出話に花をさかせつつ、最後に彼から「タケシ、この国では、人員解雇の際にこんな手厚い転職のサポートは考えられない。正直、びっくりしている」と言われた。

オレは「日本では和を重視する。“赤信号、みんなで渡れば怖くない”なんて皮肉もあるが、良い面を見れば、一人だけが幸福になったって、みんなが幸福にならない限りは、真の幸福だと感じない。そう想うのが日本人のメンタリティーだ。」と伝えた。

彼は涙を流しながら「日本の企業で働けたことを、誇りに思う」と両手でオレの手を握り締めてきた。



命の次に大事なものは何だろうか?
時間、お金と言う人は多いだろう。

しかし、この二つにとても大きく関わっているのが「職」だ。

ほとんどの人はお金を得るために働かなければならない。そして、働くために、自分の人生の何分の1かにあたるたくさんの時間を費やす。忙しいのを嫌がる人も多いが、同時に当然、暇になって何もすることがないことに怯える人も少なくない。さらに、働くとは、単にお金を得るために時間を切り売りすることに留まらない。

大小こそあれ、働く行為の結果、誰かの役に立ちたい、社会に貢献したいと願う、その人の存在意義を表現する手段でもある。解雇、リストラは、命の次に大事なお金や時間を壊してしまう。家族をどう養うのか、働いていた時間をどう過ごすのか、その人の生活は大きく変わってしまう。さらに解雇、リストラとは、何よりその人の存在意義、もっと言えば尊厳すら奪ってしまい兼ねない行為だ。そのような行為に手を出さざるを得ない時、雇用主と雇用者の関係は、様々なリスクをはらむ。解雇を断行せねばならない雇用主が、リスクマネジメント対応を徹底するのは、当然だ。まして、訴訟大国の米国では、最大限に慎重になる必要がある。

その上で、どのように解雇と言う行為に、解雇される人に、自分が向き合うか?

これは、文化/国柄を問わず、自分自身の人間性が試される瞬間だ。

貴社米国支店の方々が、新たなチャンスに出会えることを祈って


武浪 猛