『わんぱく天国』の舞台~塚山公園を歩く~ | 湘南雑筆堂~本と美味いもん日記~

湘南雑筆堂~本と美味いもん日記~

湘南(?)に暮らし30年近く経ちます。30年も住んでいると、いろんな発見をするもんです。 
 そんなちょっとした湘南の発見を自分の読んだ本に絡めて皆様にお伝えできればなと思います。
 

もう4年以上前になります。
このブログで塚山公園の按針塚についてご紹介したところ、コメントしてくださった方が一冊の本をご紹介してくれました。 ご紹介いただいて間もなくネットで購入!!さっそく読みました。

その本が佐藤さとる著作『わんぱく天国』。佐藤さとるの代表作で思い浮かべるのはコロボックル物語。村上勉の独特なタッチの挿絵を見ると、ああこの作品かと思い出せる方も多いのではないでしょうか。僕の中では著者はファンタジー小説を書く作家と認識していましたが、私の地元を舞台にした本を書いているとは知りませんでした。と言うのも、作者は幼年時代を横須賀で過ごしています。あとがきでは按針塚を「心ふるさと」とまで言っており、大切な題材をついに使ってしまったとの気持ちを述べています。

舞台は昭和十●年の横須賀。
遊びざかりの小学生たちが、塚山公園周辺の遊び場をめぐり、時に対立したり、時に協力しあい、ギャングエイジ特有の連帯感って言うんですかね、遊びを通じてまとまっていく様を描いております。

至るところに、自分が知っている地名が登場するので、情景も思い浮かべることができ物語に入り込みやすかったですね。

冒頭からまもなく登場するのは横須賀駅近くを通る国道16号線沿いに今も残る「汀橋」。物語では「渚橋」と表記されていました。


~小さい水兵さんは、かかえこんだぼうー杖ーで、「渚橋」と書いたバスの停留所の立てふだを、トントンとたたいて、それから歩きだした。~



~やがて、鹿島神社の横にでた。かなり大きい神社である。土地の人は「鹿島さん」と親しみをこめてよぶ。~



~省線(国鉄)横須賀駅の線路があり、



その向こうは海だ。~



~塚山公園は、この石段をのぼった上にあり、春はさくらの名所だ。~



物語を読んでからこの地を歩くと、階段の向こうから、物語の中の少年たちがひょっこり顔を現すのではないか、そんな気にもさせられました。



この本の面白いのは、物語を突然離れ、子どもたちの遊びの詳細なルール説明が始まるところ。メンコや凧など、当時の子どもたちの遊びがよく理解できます。作者も書きながら、童心に帰りさぞ楽しかったのだろうことが容易に想像できます。

ここ塚山公園は自分の学童期の思いでの場所。家族で花見に訪れたり、学校の遠足で高学年のお兄さんと一緒に手を繋いで上ったり、広場では隣の小学校の連中と遊び場をめぐりいさかいがあったり……
ホント、佐藤さとる氏とは時代は違えど、子ども同士は同じようなことで張り合ったりしてたんね。いつの時代も子どもって同じですね。

って思いたいのですが、今の子どもたちってどうなんですかね?我が子はあんまり徒党を組んで遊んでなかったな。子育てしながら思うのは、最近の親は自戒の意味も込め、いろんなことに先回りしすぎなんじゃないかな。失敗しないように、怪我しないように……親として必要なことは伝えて行くべきだけど、過剰な配慮はさけるべきだと私は思います。失敗してもいいんじゃないんですかね?徒党を組むなかで、裏切られたり、信じ合えたり、遊びを通じて学ぶことっていっぱいあるんじゃないかな。この本を読んで、そんな学童期の子どもについて思いを巡らしました。

今、スマホとかリアルなゲームとか楽しいものが周りにありすぎて自然の中で遊ぶことって少なくなってきていると思います。「今どきの子どもは……」っ思うけど、どの世代も自分も含め同じこと言われていますよね。ゲームもいいけど、『わんぱく天国』に出てくる子どもたちのように自然の中で遊び、時には自分達で遊びを生み出したりして、みんなでワイワイ遊んで欲しいな。




先日、秋の塚山公園に足を運びました♪紅葉がキレイですね。山間の道からカオルや明が現れるのでは!?そんな雰囲気が今でも残っています。

昭和と変わらぬ風景を残す塚山公園、紅葉を眺めながらの散策、気持ちいいですよ~♪ぜひ、お出かけくださいませ~