事情を知った後で、なんだこれってこういう事だったの。
と、驚くことは多いです。

公務員試験や、法律系の資格試験受験者なら誰でも知っている群馬県司法書士会事件判決が3対2のギリギリの判決だったということを最近知り、その反対意見とやらを判例検索で見ました。


1件の登記事件で50円の追加金ぐらいで文句言わずに出せよ、と今まで思ってました。
長~いので、下線部分だけでも読んでください。


この特別徴収はちょっとひどくないですか。
従わない会員には10倍払えと懲戒の対象とか。
借りてた共済金の即時返還。
これはあまりにも。

震災対応とかで他の会の支援、そこについて賛同しない人はあんまりいないと思うんですよね。
それが最高裁までいったってことは、他の部分で譲れないことがあったんでしょう。



裁判官深澤武久の反対意見は,次のとおりである。
 1 私は,本件拠出金の寄付が被上告人の目的の範囲を逸脱するものではなく,
その調達方法についても,会員の協力義務を否定すべき特段の事情は認められない
とし,また,被上告人が強制加入団体であることを考慮しても,本件負担金の徴収
は,会員の政治的又は宗教的立場や思想信条の自由を害するものではなく,会員に
社会通念上過大な負担を課するものではない,とする法廷意見に賛同することができない。
 その理由は次のとおり
である。
 2(1) 司法書士となる資格を有する者が司法書士となるには,その者が事務所
を設けようとする地を管轄する法務局又は地方法務局の管轄区域内に設立された司
法書士会を経由して日本司法書士会連合会に登録をしなければならない(司法書士
法6条1項,6条の2第1項)。登録をしないで司法書士の業務を行った場合は1
年以下の懲役又は30万円以下の罰金が定められている(同法19条1項,25条
1項)。このように被上告人は,司法書士になろうとする者に加入を強制するだけ
でなく,会員が司法書士の業務を継続する間は脱退の自由を有しない公的色彩の強
い厳格な強制加入団体である。
 (2) このことは会員の職業選択の自由,結社の自由を制限することになるが,
これは司法書士法が,司法書士の業務の適正を図り,国民の権利の保全に寄与する
ことを目的とし(同法1条),司法書士会が業務の改善を図るため会員の指導・連
絡に関する事務を行う(同法14条2項)という公共の福祉の要請による規制とし
て許容されているのである。このように公的な性格を有する司法書士会は,株式会
社等営利を目的とする法人とは法的性格を異にし,その目的の範囲も会の目的達成
のために必要な範囲内で限定的に解釈されなければならない。
 (3) 被上告人も社会的組織として相応の社会的役割を果たすべきものであり,
本件拠出金の寄付も相当と認められる範囲においてその権利能力の範囲内にあると
考えられる。ところで,本件決議当時,被上告人の会員は281名で年間予算は約
9000万円であり,経常費用に充当される普通会費は1人月額9000円でその
年間収入は3034万8000円であるから,本件拠出金は,被上告人の普通会費
の年間収入にほぼ匹敵する額
であり,被上告人より多くの会員を擁すると考えられ
るD会の500万円,E会の1000万円,F会の1000万円の寄付に比して突
出したもの
となっている。これに加えて被上告人は本件決議に先立ち,一般会計か
ら200万円,会員からの募金100万円とワープロ4台を兵庫県司法書士会に寄
している。司法書士会設立の目的,法的性格,被上告人の規模,財政状況(本件
記録によれば,被上告人においては,平成7年1月頃,同年度の予算編成について
,会費の増額が話題になったこともうかがえる。)などを考慮すれば,本件拠出金
の寄付は,その額が過大であって強制加入団体の運営として著しく慎重さを欠き,
会の財政的基盤を揺るがす危険を伴うもので,被上告人の目的の範囲を超えたもの
である。
 3(1) 被上告人は2(1)のような性格を有する強制加入団体であるから,多数決
による決定に基づいて会員に要請する協力義務にも自ずから限界があるというべき
である。
 (2) 本件決議は,本件拠出金の調達のために特別負担金規則を改正して,従前
の取扱事件数1件につき250円の特別負担金に,復興支援特別負担金として50
円を加えることとしたのであるが,決議に従わない会員に対しては,会長が随時注
意を促し,注意を受けた会員が義務を履行しないときその10倍相当額を会に納
入することを催告するほか,会則に,ア 被上告人の定める顕彰規則による顕彰を
行わない,
イ 共済規則が定める傷病見舞金,休業補償金,災害見舞金,脱会一時
金の共済金の給付及び共済融資を停止し,既に給付又は貸付を受けた者は直ちにそ
の額を返還しなければならない,
ウ 注意勧告を行ったときは,被上告人が備える
会員名簿に注意勧告決定の年月日及び決定趣旨を登載することなどの定めがあり,
また,総会決議の尊重義務を定めた会則に違反するものとして,その司法書士会の
事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長に報告し(司法書士法15条
の6,16条),同法務局又は地方法務局の長の行う懲戒の対象(同法12条)に
もなり得るのである。
 (3) 本件拠出金の寄付は,被上告人について法が定める本来の目的(同法14
条2項)ではなく,友会の災害支援という間接的なものであるから,そのために会
員に対して(2)記載のような厳しい不利益を伴う協力義務を課すことは,目的との
間の均衡を失し,強制加入団体が多数決によって会員に要請できる協力義務の限界
を超えた無効なもの
である。
4 以上のとおり,本件決議は,被上告人の目的の範囲を逸脱し,かつ,本件負担
金の徴収は多数決原理によって会員に協力を求め得る限界を超えた無効なものであ
るから,これと異なる原判決は破棄し,被上告人の控訴は理由がないものとして棄
却すべきである。