金子郁容著『ネットワーク時代の企業―LANを超えて―』という書籍を紹介する。 企業活動の中で金 | 松陰のブログ

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金子郁容著『ネットワーク時代の企業―LANを超えて―』という書籍を紹介する。

企業活動の中で金子郁容氏著の『ネットワーク時代の企業―LANを超えて―』という書籍が対象にしているのは、「複数の人間が協力しあって行う頭脳活動」全般です。この基本的構成は何かと突き詰めてゆくと、結局、それは企業内外の情報をネットワークによって、企業意思決定に結び付けることとして捉えます。企業内外の情報を意思決定活動に結び付け、企業の最終アウトプットに凝縮させることは、企業におけるネットワーキングの原点です。「ネットワーク時代」と呼ばれる現代は、企業活動に新たな挑戦を突きつけ、一方で新たな武器を提供しています。挑戦とは激しく変動する競争激化の社会環境であり、武器とはひとつにコンピュータ・通信新技術ならびに情報ネットワーク社会基盤などの固いネットワークであり、もうひとつに「人のつながり」や企業間のソフトな関係といった、柔らかいネットワークです。企業活動の三つの基本構成要素、つまり情報、ネットワーク、意思決定活動には、各々A・Bと呼ぶところの二面性があります。A型情報は情報の形式面、B型情報は情報の内容面を指します。A型ネットワークは固く、恒常的で無駄のないインターフェース・エージェントを持ち、B型ネットワークは緩やかで、必要に応じて開き、冗長性に富むインターフェース・エージェントを持つものです。ここでインターフェース・エージェントとは、ネットワークにおいて「もの」と「もの」を繋げる役割を果たしているものです。A型意思決定作業は定型的でやり方の手順が決まりきったものです。これに対してB型意思決定活動は人間の本来の判断力と感性を用いて、その場その場の状況に反応しながら行なわなければならない「人間的」な活動です。転記作業、キーパンチング、給与計算、予め決められた発注点による在庫管理などはA型作業です。B型活動は例えば接客による販売活動、ネゴシエーション、新製品開発R&D、企業多角化の進出分野の選択などです。A型作業では「効率」が、B型活動では「効果」が問題にされます(157頁参照)。

企業が最終的に目指すことは、調達し得るインプットの制約の下でアウトプットを最大にすることであり、つまり企業をグローバルシステムとして見た時の効率最大化です。R&D活動とか顧客接待とかいうB型活動は、したがって、それがいつまでもBに留まっていては企業の最終目標に貢献しません。B型活動の効果はそれが「いつの日にか」効率に変換されてはじめて認識されます。一つの範疇から基本的に性質の異なった別の範疇にものを移すことを「トランセンドする」と言います。企業活動の目的を達成するためには、企業内外の様々なネットワークシステムと企業内の意思決定活動のインターフェースを適切に取ることが、企業経営の中心的戦略課題であり、それが「ネットワーキング戦略」です。A型B型のネットワークシステムとA型B型の意思決定活動のインターフェースの取り方は四種類あり、その各々の具体的方法を、『ネットワーク時代の企業―LANを超えて―』では「アプローチ」と呼んでいます。その四つのアプローチは次のようなものです。それは、①アプローチAA・・・A型システムを使ってA型作業の効率化を推進する方法、②アプローチAB・・・A型システムを使ってB型活動を支援する方法、③アプローチBB・・・B型システムを使ってB型活動を支援する方法、④アプローチBA・・・B型システムを使ってA型作業の効率化を推進する方法、です。これらに加えてもうひとつ重要なプロセスを考慮しなくてはなりません。それはB型意思決定問題をA型の意思決定問題に移行する方法です。これを「B→A移行」の方法と呼びます。ネットワーク戦略とは、企業活動の目的を最も効率的かつ効果的に達成するために、これら四つのアプローチとB→A移行の方法を適切に組み合わせ、バランスさせることです。四つのアプローチにB→Aを加えて五つの方法のうち、アプローチAAとBBは「ノン・トランセンデンタル」です。その他の三つはトランセンデンタルな要素を持っていて、そのために各々「範疇の壁」を超えるための困難が伴ってくることになります(159頁参照)。

四つのアプローチとB→A移行をメンバーとするバンドは呼吸を合わせて企業の経営目的の達成に向けてそれぞれの楽器を奏でるのですが、五人のプレーヤーそれぞれが自分の役割を十分に果たし、かつ全員のコーディネーションが巧くとれた時には、力強い「トランセンデンタル・ダイナミズム」が生じます。ダイナミズムの駆動力は、アプローチBB、ABとB→A移行のB作業のA型への転換です。アプローチAAとBAがトランセンドされたB型作業を企業の最終アウトプットに直結させます。ここでB型作業がA型に転換されるので、A型作業は常に増えることになります。その増加の負荷を打ち消すために継続的な自動化努力が要請されます。アプローチAAとBAが自分の役割を十分に果たせば、A型作業量の増加にも拘わらず効率化によって処理時間自体は減少します(165頁参照)。