高島博治著『ビジネス・ゼミナール・入門会社の税金』という書籍を紹介する。
以前、私は法人税の申告書を記載し、税務署に提出したことがあります。税金というと何か難しいように思えますが、実際、私でも申告書を書けるのですから、それほど難しいものではありません。高島博治氏著の『ビジネス・ゼミナール・入門会社の税金』の書籍では、まず税金の種類について説明してあります。
税金の掛け方から見ると、最終的に税金を負担する人に直接的に掛けるやり方である直接税と、物を作った段階で税金をかけ、それが物の代金に織り込まれて、最終的には消費する人に負担が移っていくことを予定して掛けるやり方である間接税があります。直接税には、法人税、所得税、相続税、贈与税などがあり、間接税には、消費税、酒税などがあります。
直接税と間接税には、それぞれに長所と短所があります。直接税の長所は、①各種の控除や累進税率を設定することにより、経済的な負担能力の大きい高所得者ほど重い税負担を求めることができます。負担の垂直的公平を図れる上で優れた機能があります。②各種の控除などの設定により、各人の経済的な負担能力に応じたきめ細かい配慮を行うことができます。間接税の長所は、①所得の種類などにかかわらず、消費の大きさが等しければ等しい負担を負います。負担の水平的公平を図れる上で優れた機能があります。②事業意欲や勤労意欲をあまり損ないません。直接税の短所は、①所得の種類によって、課税ベースの把握に差が生じやすいです。②負担感が大きいことに加え、累進税率により負担累増感が高まるので、勤労意欲や事業意欲を損ないやすい面があります。間接税の短所は、担税者個々の事情を配慮しにくく、また、負担が所得に対して逆進的です(6頁参照)。私個人の考えとしては、この間接税の逆進性を懸念しています。逆進性ということは、富める者の負担が少なく、貧しい者の負担が大きいということ。昨今、格差が問題視されている状況下、貧しい者の税負担を増加させるのは社会問題を拡大させてしまうように思われます。また、直接税の勤労意欲減退を短所に挙げていますが、一方、間接税は消費意欲の減退をもたらします。そうでしょう、支払をする度に値札以上の税金が加算されるのですから、消費現場で控える気持ちがおきるのは必然です。
法人税は、会社のもうけ(利益)にかかる税金ということでしたが、この税金の対象になる会社の利益のことを、税法では「所得金額」と言います。そして、所得金額に税率を掛けて税額を計算します。「法人税額=法人所得金額×法人税率」です。税法上の所得金額は、もともと会社の利益と同じようなものですが、金額まで完全に一致するわけではありません。なぜかというと、会社の利益は、企業会計原則、商法の会社の計算規定などに従って計算されますが、その目的は、株主に対して会社の財政状態および経営成績を適正に報告するとともに、株主に配当できる利益がいくらあるかなどを決めることにあります。これに対して、税法の所得金額の計算は、税金を掛けることが目的ですから、この目的の違いから、両者に色々と違う面が出てくることになります。会社の利益は、企業会計原則、商法(=会社法)に従って計算します。「利益=収益―費用・損失」になります。一方、税法の所得金額は、「所得金額=益金―損金」となります。要するに、益金は収益であり、損金は費用と損失ですから、結局は、会社の利益と税法の所得金額は、もともと同じような計算原理の上に立っているわけです。ただ、企業会計や商法(=会社法)と税法とは、その目的が違いますから、両者に差が出てくるわけです。税法には色々と規定が並んでいますが、実は、主に両者の差違のあるところが書いてあるのです。同じ部分については、税法では重要事項について同じであることを確認する以外、ほとんど何も書いていません。この同じ部分については「公正妥当な会計処理の基準」によって計算しますから、税法としては、そこは企業会計に任せておけばよいという立場に立っています。税法としては、何も細かいことを書く必要はないのです(17頁参照)。
会社の利益と税法の所得金額は、基本的には同じような計算原理に立っていますから、税法は、まず会社が利益を計算するのを待って、これに両者の差違だけプラスしたりマイナスしたりして、所得金額を計算します(17頁参照)。会社の利益に加算するのが、益金算入、損金不算入であり、会社の利益に減算するのが、益金不算入、損金算入です(20頁参照)。つまり、企業の会計を知っていれば、後は、何を益金算入、損金不算入、益金不算入、損金算入すればいいのかが分かれば申告書を記載することができるというわけです。簡単でしょう。親切なことに、税務署には、該当する勘定科目の別表が用意されています。最終的には、「別表五(二)」(381頁参照)→「別表五(一)」(382頁参照)→「別表四」(385頁参照)を経て、「別表一(一)」(401頁参照)において課税所得額と納付しなければならない法人税額が確定します。
国または地方公共団体の財政需要を賄うために、どのような税を、どのように賦課徴収すべきかについての原則を租税原則と呼びます。租税原則として有名なのは、アダム・スミスの租税原則です。この租税原則は、①公平の原則(各人民は各自の能力にできるだけ比例して納税すべきである)、②明確の原則(租税は、その支払い期日、金額、方法が明確でなくてはならない)、③便宜の原則(納税の方法や時期は、納税者にとって便利でなければならない)、④最小徴税費の原則(徴税費はなるべく小額でなければならない)の四原則です(1頁参照)。高島博治氏著の『ビジネス・ゼミナール・入門会社の税金』という書籍を読めば、税法と会計の相違、そして申告業務の概要が分かります。何よりも税金に関して伝えなくてはならない要素をきちんと記載していることです。分かりやすく、本当に勉強になる書籍でした。