以前、某大学の宇井貴志教授の『道具としての数学:経済学での使われ方』という講義を聴講したことがあ | 松陰のブログ

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以前、某大学の宇井貴志教授の『道具としての数学:経済学での使われ方』という講義を聴講したことがあります。経済学の好きな私は本当に面白かったです。まず宇井先生が数学者に対する所見を述べました。それまでは真っ暗闇の深海をひたすら潜り続けることに類似する数学の世界。私は一つの世界に没頭し、高い課題のために苦しめる数学者を少し羨ましく感じました。数学者は応用を目指しません。数学者の仕事は定理の発見と証明です。定理は数学者の審美眼で評価されます。それは芸術に近いものです。役立つことを目的にはしません。しかし、宇井先生は数学は役立つものだと言います。天体軌道、人工衛星など、数学が実用化され、人類の発展に寄与しているのです。宇井貴志教授は大学時代に数理工学を専攻したそうです。数理工学は、世の中の諸現象の本質を数学を使って数理モデルとして表現し、それを使って問題解決の方法を創る学問です。数学はビジネスでも活用できます。生産計画、販売計画、需要予測、在庫管理、配送計画など、様々な場面で数学が利用されています。経済学は経済活動を分析する学問です。マルクス経済学、現在は社会経済学、政治経済学と言います。そういう領域の経済学もありますが、今回の講義では、近代経済学、主流経済学を教えてくれました。経済とは財・資源の分配です。財には二酸化炭素のように悪い財もあります。このような悪い財を英語でバッドというようです。そして、通常の財をグッズというそうです。経済学とは単なる市場経済の擁護ではなく、市場経済の補完です。市場経済は多数のモノがバラバラに活動しているのに、そこそこうまくいくことを成り立たせています。そこが市場経済の魅力です。経済では各個人が自分に得になるように行動することを前提とします。仮定する理由は、個人の得が全体の得になること目指すためです。望ましい状態を見つけるため、各個人が自分に得になるように行動することを前提とするのです。当然、個人としての最適な選択と社会としての最適な選択の間には社会的なジレンマが生じます。例えば環境問題。二酸化炭素の問題はそのものです。これは共有地の悲劇というジレンマ問題に類似しています。農家が牧草地を共有しています。しかし、全ての農家が牛を放牧すると牧草地は荒れ果て利用できなくなってしまいます。その場合、農家同士は協力しなくてはなりません。農家の協力、非協力を説いたものです。二酸化炭素による地球温暖化問題と類似しているでしょう。これを応用数学のゲーム理論を駆使して、農家間の協力と非協力の利益をマトリックスに表し、数学で出すのです。これは、あの有名な囚人のジレンマと同じ論理です。その後、パン屋における値下げ競争の論理、銀行取付の論理を教えてくれました。銀行取付に関しては、2003年12月25日に起きた佐賀銀行のデマメール事件をケーススタディーに挙げ、分かりやすく説明してくれました。しかし、一人の女性の佐賀銀行が倒産するという嘘メールがチェーンメール化し、そのデマが広がり、本当に倒産の危機に陥るとは、非常に恐いと思いました。起こると予測すると起きる、このような現象を自己実現型というらしいのですが、銀行の破綻も破綻するほどの要素がなくても破綻すると周囲が思うことによって実際に破綻してしまうもの。これは株価の暴落や恐慌の発端にも当てはまります。一つの方向に走り出した時の集団行動の恐ろしさを感じます。その後、NPRにおけるお菓子の評価の事例を通じて、交換することにより、パレート効率的資源配分に向かうことを教えてくれました。交換を繰り返し、止まった状態が望ましい状態に近づく。これがパレート効率的資源配分です。パレート効率的資源配分は厚生経済学に分類されます。この他、ビックリーのオークション理論の話、周波数オークションの話などをしてくれました。周波数オークションに関しては、欧米で「同時競り上げ式」が利用されていて、日本でも検討中だそうです。2015年に実用化される第四世代携帯電話では同時競り上げ式が利用されるかも知れないらしく、周波数オークションに関する懇談会が検討しているようです。宇井貴志教授の話は非常に面白かったです。厚生経済学はミクロ経済学ですので、是非、今度はマクロ経済学の話を宇井先生から拝聴したいと思いました。