伊丹敬之著『新・経営戦略の論理』という書籍を紹介する。 戦略の成功の本質は、ストラテジック・フ | 松陰のブログ

松陰のブログ

ブログの説明を入力します。

伊丹敬之著『新・経営戦略の論理』という書籍を紹介する。

戦略の成功の本質は、ストラテジック・フィット(戦略的適合)にあります。戦略の内容が、戦略を取り巻く様々な要因(例えば顧客)とうまくマッチした状態になっていることを、ストラテジック・フィットがあると言います(2頁参照)。戦略がフィットすべき相手となる「戦略を取り巻く要因」は、企業環境、経営資源、企業組織の三つに大別されます。各々の要因と戦略との間に存在すべき適合関係を、環境適合、資源適合、組織適合と呼びます。この三つの適合をダイナミックに維持していけるような戦略が「いい戦略」なのです。戦略は、人間の集団であり、かつ有限の資源や能力を持った企業を、環境の中でうまく率いていくために必要となります。企業活動の基本方針です。設計図と言ってもよいでしょう。したがって、環境、資源、組織という三つの要因が戦略を取り巻く大切な要因として浮かび上がってきます。環境は、企業にとっての外部要因、資源と組織集団は企業の内部要因です(4頁参照)。

環境適合とは、戦略の内容が企業環境の動向にマッチしたものとなっていることを言います。この書籍では、環境という要因を、さらに顧客、競争、技術という三つの要因に分けています。環境という複雑なものに対する戦略の適応の内容を考える時には、せめてこれくらいの大別された環境ごとに分けて考えないと話が十分に具体的にはならないからです。顧客とは顧客のニーズの動向のこと、競争とは競争相手の動向のこと、技術とは世の中の技術の動向のことです。これらの要因と戦略の内容とのフィットのことを、顧客適合、競争適合、技術適合と呼びます(6頁参照)。「環境適合」という時には、そこには「環境にあわせる」という受動的なニュアンスが付きまといますが、もっと能動的にも捉える必要があります。戦略の適合すべき要因は、顧客、競争、技術、資源、組織の五つで、適合レベルは三つ、これだけ全部を考えないとストラテジック・フィットの内容をしっかりと考えたことにはなりません。適合レベルの三つとは、第一のレベルは、戦略を取り巻く要因の現状を所与として、それに合わせるという適合。第二のレベルは、その要因の自律的な変化へ対応していき、さらに能動的に望ましい方向へ変化させていく戦略をもつという意味での適合。第三のレベルは、その要因の本質や変化を逆手にとってテコとして利用する戦略をもつレベルの適合です(8頁参照)。

伊丹敬之氏著の『新・経営戦略の論理』という書籍の背後にある大前提は、「よい戦略には論理がある」です。この書籍全体を通じて底流のように流れている大きな論理は、ダイナミックかつアンバランスな成長の論理、見えざる資産の利用と蓄積の論理、戦略にかかわりをもつ人々(企業の人々、顧客、競争相手)の心理を考えた人間くさい論理、の三つです(10頁参照)。経営戦略とは、組織活動の基本的方向を環境とのかかわりにおいて示すもので、組織の諸活動の基本的状況の選択と諸活動の組み合わせの基本方針の決定を行うものです(19頁参照)。通常の企業活動における基本戦略は、企業活動の基本的方向をかなり概念的かつ簡潔に示したものとして、企業のあるべき姿の基本コンセプトの決定と、それをさらに具体的に構成する、a製品・市場ポートフォリオ、b業務活動分野、c経営資源ポートフォリオの決定からなっていると一般的に言えます(21頁参照)。簡単に言えば、a製品・市場ポートフォリオとは、誰に何を売るか、であり、b業務活動分野とは、売るために自分は何を自分の業務とするか、であり、c経営資源ポートフォリオとは、そのために、どんな能力と特性をもつか、ということになります(23頁参照)。かなり自由度がある三つの要素の間に、いかに緊密な適合的関係をダイナミックにつくりだしていくかが大切です(23頁参照)。また、戦略とは将来の企業のあるべき姿を示すと同時に、そのあるべき姿(製品・市場について、業務活動について)へ現状から到達するための行動のシナリオをも示さなくてはなりません。その業績がどのような企業の姿から生み出されるかを決める必要があります。それが企業の将来のあるべき姿です。どんな製品分野を中心とするか、どんな資源を蓄積しておくか、等々についての企業のあるべき姿です。その決定が戦略の第一の決定です。さらにそのあるべき姿と現状の姿の間のギャップを埋めるための行動を企業は取る必要があります。その行動の基本シナリオを決めるのが、戦略の第二決定です。業績は到達すべきゴールを示し、それをいかに達成するかの企業活動の基本方針を「あるべき姿」と「変化へのシナリオ」という形で決めるのが戦略です(29頁参照)。

経営資源とは、ヒト、モノ、カネ、情報です。ヒトという経営資源には、現場の労働者、技術者、セールスマン、管理職、経営者などが入ります。モノという経営資源には、工場や機械、原材料、部品、営業所や本社の建物や設備などが入ります。カネという経営資源には、設備資金や運転資金などで、カネがなければ事業活動は動き出せません。情報という経営資源には、技術的なノウハウなどが入ります。情報的経営資源を、企業のもつ「見えざる資産」の総称だと考えれば、顧客の信用やブランドイメージ、流通チャネルの支配力、あるいは従業員のモラルの高さ、経営ノウハウなども情報的経営資源の一例だと考えられます。伊丹敬之氏は、この見えざる資産と呼ぶべき情報的経営資源が最も大切な資源だと考えています(47頁参照)。見えざる資産は『新・経営戦略の論理』という書籍のコア(核)となる概念です。見えざる資産はカネを出しても買えないことが多く、したがって、自分でつくるしかありません、また、つくるのに時間がかかることが多いタイプの経営資源なのです。したがって、競争相手との差別の源泉になりやすい資源なのです。見えざる資産の様々な特徴(「事業をうまく」やるのに必要、金を出しても買えない、つくるのに時間がかかる、多重利用が可能など)の故に、その蓄積をどう戦略的に考えていくかが、極めて重要となってきます。競争力の源泉をいかに効率的につくりうるかが、見えざる資産の蓄積によって大きく左右されるからです(50頁参照)。

以上に述べた理念を基に、顧客(83頁参照)、競争(131頁参照)、技術(176頁参照)、資源(211頁参照)、組織(259頁参照)の戦略の詳細を説明しています。企業の戦略は自分の見えざる資産に常にピッタリ合ったものであってはなりません。見えざる資産を少々オーバーするような戦略を取る必要がしばしばあります。自社の見えざる資産を部分的にオーバーする事業活動を敢えておこなうこの戦略を、オーバー・エクステンション戦略と名づけています(298頁参照)。私が『新・経営戦略の論理』という書籍で興味深かったのは、技術にあった戦略における「肯定技術」と「否定技術」の箇所です。肯定技術とは自社の既存製品、既存技術の延長線上にある技術。否定技術とは既存の製品や技術にとってかわったり、存在価値をゼロにしてしまうような技術です(186頁参照)。技術にあった戦略の章には、「肯定技術」と「否定技術」以外にも参考になる記述が多く、勉強になると思います。

伊丹敬之氏著の『新・経営戦略の論理』という書籍を読み、見えざる資産の重要性を強く感じました。自分に投資すること。常に自分の中の見えざる資産を蓄積することが大切なのです。私は書籍を読むことは自分の中に見えざる資産を蓄積する方法だと考え、学生時代からずっと書籍を読破し続けてきました。「芸は身を助ける」と言いますが、困った時に自分を助けてくれるのは自分の中にある見えざる資産だと考えています。これからも自分の中にある見えざる資産を拡大させるために勉学に励んでいきたいと思います。