芹沢高志・内田美穂共訳・エリッヒ・ヤンツ著『自己組織化する宇宙』という書籍を紹介する。 エリッ | 松陰のブログ

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芹沢高志・内田美穂共訳・エリッヒ・ヤンツ著『自己組織化する宇宙』という書籍を紹介する。

エリッヒ・ヤンツ氏著の『自己組織化する宇宙』という書籍は、一般的なシステムの成長における普遍的な論理を説いた書籍です。一般動的システム理論です。

自己組織化は、生物、エコロジー、社会、文化的構造に現れた、豊饒な形態世界に潜むダイナミックな原理です。しかし、自己組織化は、私達が通常生物と呼んでいるもの達に限られた特徴ではありません。物質世界における構造には根本的に異なった二つの基本クラス、散逸構造と平衡構造がありますが、自己組織化は広く散逸構造に見られる特徴です。それ故、自己組織化ダイナミクスは生物・非生物両領域にまたがり、それらを結び合わせるものです。化学反応系の散逸構造では、自己組織化が最も単純かつ純粋な形で現れます。ここでは開放性、高度の非平衡、ゆらぎの内部強化といった、より複雑なレベルでも同様に見られるような条件を、明快に、また単純な形で知ることができます(61頁参照)。

階層性をもつ六つのシステムの特性に着目して特徴を分ければ、システムは基本的に異なった二つのクラス、構造保存型システムと進化型システムに類別できます。構造保存型システムと進化型システムを六つの特性で比較すると、全体的なシステムのダイナミクス:構造保存型・静的(ダイナミクスなし)or保存的自己組織化、進化型・散逸的自己組織化、構造:構造保存型・平衡構造、不変or平衡構造へと向かう退化、進化型・散逸構造(平衡から遠く離れている)、進化、機能:構造保存型・無機能ないし他者創出的or平衡状態を参照する機能(他者参照的)、進化型・自己創出的(自己参照的)、組織機構:構造保存型・可逆過程をとる計画的振動or平衡構造へと向かう不可逆的過程、進化型・回路的(ハイパーサイクル)、サイクルローテーションを行うという意味で不可逆的、内部状態:構造保存型・平衡or平衡に近い、進化型・非平衡、環境との関係:構造保存型・孤立的あるいは開放的(成長可)、進化型・開放的(バランスのとれた持続的交換)、ということになります。構造保存型システムの方は、すでに平衡に達してしまったシステムと平衡に向かう途中にあり、そのダイナミックスがすでに平衡への志向性を有しているシステムとに再分が可能です。このエリッヒ・ヤンツ氏著の『自己組織化する宇宙』という書籍のテーマは「散逸的自己組織化」であり、それが「進化型システム」と述べています(86頁参照)。

熱力学的秩序を超えたところで散逸構造が自発的に形成されても、それでダイナミックな発展が終わったということではありません。周囲の環境とのエネルギー交換が続き、しかも、間断なく起こり続ける「ゆらぎ」がその動的体制内で吸収されてしまう限りは、できあがった散逸構造も原則としては安定しています。しかし、一般的に言えば、非平衡システムの構造が安定していることはまずありません。ゆらぎが大きく育ち、ある臨界規模を超えると、どのような構造も、新しい体制へと移行していきます。システムの動態に質的な変化が起こることです。そして、新たな動的体制へと移行することで、エントロピーの生産能力を回復します(100頁参照)。ちなみに、エントロピーとは、全エネルギーのうち、自由には利用できず、方向をもつエネルギー流や仕事のかたちで使えない部分を計る尺度です。換言すれば、エントロピーとはシステム内のエネルギーの質を計る尺度なのです(70頁参照)。生命は常に先に進んでいきます。ここでいうゆらぎとは、システムの動的な行動、反応や拡散の速度を変えてしまう、メカニズムのゆらぎです。ゆらぎはシステムの外部から概ねランダムなかたちで働きかけ、新たな反応物質を加えたり、もとの反応系の役割を質的に変えてしまったりします。しかし、外部から作用するだけでなくても正のフィードバックを通して、ゆらぎがシステムの内部で蓄積されていくこともあります。これは進化的フィードバックと呼ばれ、このサイクルは何段階も繰り返されます(101頁参照)。

自己創出的な体制は、独自の個性、周囲の環境に対する独自の自治を発揮します。システムが周囲の環境と動的な関係を結ぶ上で保たれる自治の度合を、システムの意識と定義します。自己創出システムの環境とのフィードバック関係が、そのシステムの認識領域を構成します。散逸構造は自らを維持し再新するにあたって、何を取り入れ、何を放出しなければならないかを知っています。それを知るには、自らに問いただせばこと足ります。つまり自分自身を参照するのです。自治とは基本的な構造と機能の相互依存の表現とも考えられます。ある動的体制の中でプロセスが相互に作用しあい、それが明確な空間構造を生みます。自己創出的な体制の中で進む自己再新のことを考えれば分かるように、ここで働く多数のプロセス鎖は循環的に結びついています(96頁参照)。自己創出的な大域安定性は、進化を続けるシステムがある特別な状態にある時に限って現れます。ゆらぎがシステムに吸収さえてしまう場合、あるいはゆらぎが、そもそも起こった場である環境そのものによって消されてしまう場合です。自己創出性を導く条件とは開放性、非平衡、自己触媒の存在です。内部でゆらぎを自己増殖させ、システム自身が閾値を超えて進化する可能性を保証しています。このような内部的な自己増殖がなければ、真の自己組織化はありえません。システムは無限に続く一連の不安定状態を次々に通過しながら、その度ごとに新たな自己創出構造を自発的に形成していきます(105頁参照)。

自己超越とは、自らの存在の限界を超えようとすることです。システムが自己組織化を進め、自らのアイデンティティの限界を超える時、そのシステムは創造的になります。自己組織化パラダイムにおいては、進化を全レベルでの自己超越の結果とみなします。あらゆるレベルで対称性の破れが時空の切り開き、自己組織化システムのダイナミクスが展開していきます。新たな構造へと進化を続け、各々の自己超越の臨界点において、未来を形づくるための新たな自由度が導入されます。複雑さは時間とともに展開し、過去を生きた経験と未来への創造的飛躍の双方を同時に映し出します。進化は基本的に開いています。自らのダイナミクスと自らが進むべき方向を決定します。進化のダイナミクスは、マクロ、ミクロシステムの相互進化が綾なすシステムの織物の中で展開します。この動的相互連結を通して、進化はまた自らの意味をも見出していきます(361頁参照)。回路的組織機構は、散逸的自己組織化システム、中でも生命システムの特徴をなすものです(363頁参照)。相互進化は自己組織化システムの回路的組織機構を、長期にわたる螺旋状のものへと変えていきます。ハイパーサイクル内の各自己触媒ユニットは、生態系内の適所(ニッチ)に相当します(381頁参照)。ハイパーサイクルとは、ひとつ、あるいはそれ以上の反応参加者が自己触媒の役割を果たすような、変換的、あるいは触媒的プロセスの閉回路のことです(84頁参照)。ここでの適所とは、より小さな生態系を表しています。生態系内の生物は、通常、ひとつだけの適所に属することはありません。ある適所内で突然変異が起こると、それが遺伝的突然変異、新種の参入、あるいは新しい動的関係の成立いずれであろうと、とにかくこのような変異は他の適所の変化をも刺激します。あるいは触媒として働くことになります。特にあるひとつの適所の複雑さが増すと、隣接する各適所を刺激し、これに対応して複雑さが増大します。このようなプロセスでは、ひとつ以上の適所に属している生物が重要な役割を演じます。適所の相互進化は、正のフィードバックで結ばれています。サブシステムレベルでのこうした相互進化が、システム全体の進化を生んでいるのです。ウルトラサイクルは、一般的な学習プロセスのモデルとなります(381頁参照)。ウルトラサイクルとは、高次の複雑さの進化をハイパーサイクル論のように競争の結果としてではなく、より大きなシステム間の相互依存の結果とみなす生態系サブシステム間の相互進化のことです(216頁参照)。学習するシステムに本来備わり、その固有の認識領域に属している諸プロセスを動員して進められるものです。学習とは経験を貯えるシステムの相互進化です。ウルトラサイクル内では、情報は単に移されるだけでなく、生産されます。情報とは、情報を生み出す潜在力を生成するものです(382頁参照)。

進化はマクロとミクロの相互進化から成り立っています。生命のマクロ進化は、ミクロ進化分枝に沿ったより複雑さの発展によって基本的な特徴を決定されます。マクロ進化の役割がまずバランス調整であるのに対し、ミクロ進化は保存的に伝えられた複雑さを基に、より革新的、超越的役割を果たします(433頁参照)。また、ふたつ以上のシステム間での関係には、相互作用、コミュニケーション、共生、融合というタイプの関係があります(399頁参照)。共生は新たなセマンティック・レベルを生みます。こうして一連の自己創出レベルにある進化プロセスが結びつき、ひとつの進化鎖、つまりメタ進化をつくりあげます。進化プロセスは、そのコヒーレンス、および大域的に見た連続性の度合から、三つの次元に分けて考えます。まず、それぞれの自己創出システム、時空構造のシークエンスを通して個体発生的に進化する次元。次に、ある特定の自己創出レベルにおいて、システムが系統発生の複雑な織物の中で進化する次元。第三は、進化プロセス自身が進化し、新たな自己創出レベルを切り開いていく次元です。第三の次元こそ、エリッヒ・ヤンツ氏著の『自己組織化する宇宙』という書籍のテーマです。メタ進化では、垂直的レベル移行が、複雑さの増大を意味する対称性の破れと理解されます。進化するシステムは、プロセスがどのような次元にあろうとも、レ・リジオの可能性、つまり始源と結びついていて、そこまで溯りうる能力をもっています。レ・リジオとは、崩壊した対称性と統一性を復元させるものなのです(422頁参照)。

エリッヒ・ヤンツ氏著の『自己組織化する宇宙』という書籍は内容があまりにも濃厚過ぎますので、はじめから要約するのには限界があり、このくらいにしておきます。まだまだ語りたい概念はたくさんありますが、それは実際にこのエリッヒ・ヤンツ氏著の『自己組織化する宇宙』を通読して、この書籍の内容の深さを感じていただければ幸いです。ただし、この書籍の中で最後に特筆しておきたいものがあります。それは情報に関する記述です。自己創出的なシステム間で交換される情報は、セマンティックにとどまらず、本質的にある効果を生むものとして構成されている点で実用的とも言えます。実用的情報は、情報の受け手を変化させるので、その構造がもつ、情報の送り手としての潜在力をも変化させます。情報とは、情報を生み出す潜在力を生成するものです。実用的情報とは、二つの相補的な側面、新奇性と確立性とから成り立っています(116頁参照)。はじめてこの箇所を読んだ時、情報に対する新たなイメージが創造されたことを覚えています。新奇性と確立性という情報の性質を理解しました。

この書籍の優れた点は記述した内容を説明するために添えられた図表の素晴らしさです。記述された内容のイメージが把握できるような充実した図表が掲載されています。この芹沢高志氏・内田美穂共訳・エリッヒ・ヤンツ氏著の『自己組織化する宇宙』という書籍一冊で自己組織化が何かが分かります。この書籍は、単なるシステムの話だけではなく、哲学などを含む様々な学問が濃縮された良書です。指定図書にしてもいいぐらい、全人類の方々に読んで欲しい書籍なのです。