マズロー氏と言えば、欲求階層説。小口忠彦氏監訳、フランク・ゴーブル氏著の『マズローの心理学・第三 | 松陰のブログ

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マズロー氏と言えば、欲求階層説。小口忠彦氏監訳、フランク・ゴーブル氏著の『マズローの心理学・第三勢力』という書籍はマズロー氏の欲求階層説を解説した書籍です。

原著のメイン・タイトルである「第三勢力」というのは、具体的に言えば、「第三勢力の心理学」のことであって、マズロー氏が自分で創始した心理学の運動に命名したものです(頁参照)。心理学の歴史において、人間の本性を、「邪悪な衝動」であるという前提の下に理論構成しようとする立場をとる勢力と、自然科学にモデルを求め、人間の本性を、「機械的」な図式の下に理論構成しようとする立場をとる勢力とが、二つの強力な勢力になっていたことについては、大方の意見は一致しています。マズロー氏も、こうした見解の下に、「第三」の途を選ぼうと試みていることになるのです(頁参照)。他の二大主流理論から区別するために、「第三勢力の心理学」と新しく名づけられました。第三勢力の心理学と呼ばれるこの新しい理論は、人間そのものへ、つまり、人間の欲求・目標・業績・成功などへ焦点を合わせています(ⅩⅣ頁参照)。

マズロー氏の欲求階層説は、五つの階層からなります。それは、生理的欲求、安全の欲求、所属と愛の欲求、承認の欲求、自己実現の欲求、です(83頁参照)。人間は、人類に普遍的で、明らかに不変で、発生的あるいは本能的な起源をもつ無数の基本的欲求によって動機づけられています。これがマズロー氏独特の理論的見解における基本概念です。欲求は、また単に身体的なのではなく、むしろ精神的なものです。それは、人類の真の内的な本性でありますが、弱くて簡単に歪曲され、また誤った学習・習慣・因襲には負けてしまいます。「それらは、文化では抹殺できず、ただ抑圧できるだけの、人間の本性の内在的側面である」とマズロー氏は述べます。これは明らかに、本能は強固で、変化せず、悪である、という長い間多くの人々によって支持されてきた従来の考え方に挑戦するものです。マズロー氏はこれとは反対のことを示唆しています。すなわち、欲求は簡単に無視あるいは抑圧されるものであり、「善か中立的なものであって、決して悪ではありません」。基本的欲求は、その欠如が病気を生む、その存在が病気を防ぐ、その回復が病気を治す、ある非常にこみいった自由な選択場面では、阻まれている人によって、他の満足に先がけてこれが選ばれる、健康な人では、低調で、衰えているか、それともはたらかない、という条件を満たすものです(60頁参照)。

では、マズロー氏が述べている五つの欲求についての概要を説明します。生理的欲求。人間の全ての欲求の中で最も基礎的で強力であり、はっきりしているのは、生命維持に関する欲求です。すなわち、食物、飲物、保護、性、睡眠、酸素への欲求です。例えば、食物、自己承認、愛などを欠いている人間は、まず第一に食物を要求し、これが満たされるまでは他の一切の欲求は無視されるか、あるいは背後に追いやられてしまうでしょう(61頁参照)。安全の欲求。生理的欲求が、十分に満足されると、マズロー氏の言う安全の欲求が現れます。不安定な人間は秩序や不変性に対する強力な欲求をもっていて、目新しい、予期しないことは徹底的に避けようとするものです(63頁参照)。所属と愛の欲求。生理的欲求と安全の欲求が満たされると、愛・所属の欲求が現れます。「ところで人間は普通、他の人々との愛情関係、言い換えれば自分のいる集団の中で一つの位置を占めることを渇望するようです。そして、この目的を達成するためには非常な努力をするのです。この世の中の、いかなるものよりそういう一つの地位を得たいと欲し、おそらく、空腹であった時に、愛情を非現実な、不必要な、重要性のないものとして嘲笑ったことなどすっかり忘れてさえしまうであろう」とマズロー氏は述べています。マズロー氏の言う愛情は、純粋に生理的欲求として研究されている性とは区別されなくてはなりません。愛の欠如は、成長と可能性の発達を阻害するものであることにマズロー氏は気付きました。愛とは、マズロー氏に従えば、二人の人間の間の、信頼で結ばれた、健康な、愛情に溢れた関係を含んでいます。良い人間関係には、不安もなく、また防御もないものです(64頁参照)。承認の欲求。人間は二種類の承認の欲求を持っています。すなわち、自尊心と他者からの承認です。(1)自尊心は、自信・能力・熟練・有能・達成・自立、そして自由などに対する欲求を含んでいます。(2)他者からの承認は、名声・表彰・受容・注目・地位・評判そして理解などの概念を含んでいます。十分な自己承認をもっている人間は、より自信があり、有能で、生産的です。ところが、この自己承認が不十分であると、人間は劣等感や無力感を抱くことになります(67頁参照)。⑤自己実現の欲求。「人はなれる可能性をもつものになる必要があります」。成長・発達ないし可能性の利用(マズロー氏が自己実現と呼ぶもの)への心理的欲求を確認することは、人間の行動の研究の重要な側面です。マズロー氏は自己実現の欲求のことを「人がなるところのものにますますなろうとする願望、人がなることのできるものなら何にでもなろうとする願望」と述べています(68頁参照)。マズロー氏が発見したものは、基本的欲求あるいは欠乏欲求と対比して、成長欲求(存在価値ないしB-価値)とマズロー氏が記述する、もっとはるかに高次のカテゴリーに属する欲求の新しいリストの全体でした。その存在価値のリストは、フランク・ゴーブル氏著の『マズローの心理学・第三勢力』という書籍の76頁に14項目として記載されています。高次の段階の行動をする人間は、自発的で表現が豊かで自然で自由です(75頁参照)。

「自己実現の欲求」は、マズロー氏の理論の中核をなす重要な概念です。自己実現している人間は自分の期待や願望によって自分の見解を曲げることはありません。人間を正確に判断し、偽物やインチキを見抜く点において、自己実現している人間は平均人とは並はずれた能力をもちます。自己実現する人間は、卓越した認識能力の故に決断力に富み、善悪を見分けるより明確な観念をもっています。そのうえ更に自己実現する人間は一種の謙遜をもっています。彼らは他人の意見に慎重に耳を傾け、自分は全てを知っているのではなく、他人から何かを教えてもらえるのだということを認めています。この卓越した認識能力は、自己を適切に理解していることに起因すると一面言えます。自己実現した人間の認識は、願望・不安・恐れ・期待・誤った楽天主義や悲観主義によって乱されることは、比較的まれです。マズロー氏はこの没判断的な認識のタイプを、「存在認識」あるいは「B-認識」と名づけました。完全に成熟した人間は二通りの方法で、すなわち瞑想的(存在価値)および決断的に、認知します。認識が認知に変われば、決断・判断・非難・計画および行為が可能になります。自己実現する人間は、重要とみなす何らかの仕事・課業・義務あるいは職業に、例外なく専念していることを、マズロー氏は見いだしました。自己実現する人間は仕事に興味をもっているからこそ懸命に働くのです。自己実現する人間にとっては、仕事は楽しくてたまらないものなのです。大切な仕事に没頭することは、成長、自己実現・幸福にとって極めて必要なことです。マズロー氏は、創造性は、彼が研究した自己実現する人間の全員に見られる普遍的な特徴であることを、見いだしました。創造性は、健康・自己実現・完全な人間とほとんど同義です。創造性と結びついている特徴は、柔軟性・自発性・勇気・誤ちをいとわないこと・開放性・謙虚です(39頁参照)。