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以前、桜井進氏の『測るための数、計るための数学』という講演を聴きに行ったことがあります。内容はなかなか良かったです。ただし、桜井進氏が、講演中にやたら吠えていました。桜井進氏は語りました。昔からマスコミは数学を迫害した。その弊害は現在も影響している。しかし、3・11以降、数学力がなければならなくなると思うと。10年前に桜井進氏は決起し、江戸時代より冠たる数学国家の日本がこのままではいけないと思ったそうです。受験数学ではなく、大学に入ってからの数学、大学を出てからの数学を教えたいとも考えていたようです。数学者とは、数や概念を創り出す者であり、技を概念化させる者だと述べました。講演の内容はジョン・ネイピアの対数誕生の物語りです。西洋近代革命は全てを数に変換し、全てが可視化できるようにしました。数学を知るには数学の歴史を知ることが重要です。16世紀のヨーロッパは大航海時代です。しかし、海難事故も多発していました。そこにスコットランドの8代城主のネイピアが海難事故を減らすため、尽力したのです。それは、安全に航海を行なえるようにしたいという船乗りや国民への思いからでした。ネイピアの功績は、球面三角法「ネイピアの公式」の発見、計算機「ネイピアの計算棒」の発明、対数logの発明、小数点の発明です。発明と発見は違うようです。発明は、今まで現存しなかった物を個人等の創意工夫で現実の物として生み出し、特許権を設定でき、法的保護を得ることができます。発見は、既に存在してはいますが、未だに認知されていなかった物を最初に見つける事実行為で、法的対象にはならないそうです。発見・発明の過程は、球面三角法「ネイピアの公式」の計算が困難だったので、容易に計算できるように計算機「ネイピアの計算棒」や対数logを作りました。対数logを作る過程の副産物として、小数点が作られたそうです。大航海時代の社会の中心課題は、航海術に必要な精密な天体観測と精確な暦の作成でした。緯度は太陽の角度から簡単に求められますが、経度を求めるのに苦労していたそうです。経度が分からなくなってしまうために、船は目標地を見失い、長期に及ぶ船での生活のため、壊血病になる人も多かったそうです。イギリスの時計職人のジョン・ハリソンが経度の測定が可能な機械式時計を製作し、経度の測定を克服したそうです。こういう航海上の問題を解決する人類の挑戦から必然的に三角関数が作られるようになったのです。円を計るためには、Sin、Cosが必要です。当然と言えば当然。地球は球状です。故に、位置を正確に知ろうと思えば、球や円を計ることになるのは必然だったからです。球面三角法、ネイピアの法則が作られたのです。幾何学とは英語でGeometryと言います。Geoとは地球のことで、metryとは計るということです。つまりGeometryとは地球を計るという意味を表しているのです。次に、フランスは、万物の尺度を求めようとします。度量革命です。ナポレオンはm(メートル)という単位を国際条約で定めました。さらにナポレオンはエジプトに多くの数学者、天文学者を連れて行き、ピラミッドなどの測定をしたそうです。また、距離を測ると、手計算と実測では誤差が出ました。その誤差が地球がどれだけ球面で、どれだけ膨らんでいるかを理解する要素となったそうです。ネイピアは天文学の計算が難しいことが諸悪の根源だと思っていました。そこで天文学の計算を容易にする工夫を考えます。画期的だったのが、掛け算を足し算に変換することです。私は、掛け算を足し算で解ける方法を考えつけるネイピアという人間を天才だと思いました。logos(理性)+Arithmos(数)=logarithm(数の理法)と名づけました。ネイピアはこれをCanon(カノン)、つまり神の言葉としたのです。桜井進氏は、ネイピアは神の言葉という重い名前をつけたのに、日本では“対数”という軽い言葉に訳されてしまったと話していました。では、実際に1.43×5.93をlogを駆使して解いてみます。1.43は常用対数表では0.1553、5.93は常用対数表では0.7731になります。0.1553+0.7731=0.9284になります。0.9284を常用対数表で探すと、8.48になります。1.43×5.93=8.4799ですので、ほぼ等しい数値が求められたことになります。また、ネイピアは新約聖書における『ヨハネの黙示録』の暗号を解読したことでも有名だそうです。人類が必要とする神様の知恵が書かれているそうです。ネイピアの理論はまだ難解でした。イングランド人のブリックスがネイピアを尊敬し、二度目の出会いの時に常用対数を完成させたそうです。ちなみに、ネイピアの対数は自然対数であり、それをオイラーが気付いたようです。桜井進氏は、数、数字、数値の違いについて述べました。数は(number)、数の概念のこと。数字(digit)は、アラビア数字や漢数字などのような数を表す記号のこと。数値(value)は、100m、100kgなどの計量・計測されて得られた数です。私はこの『測るための数、計るための数学』という講演を聴いて、ネイピアという数学者の偉大さを知りました。何よりも航海に携わる人々の安全のために尽力した気持ちの美しさに感銘を受けました。安心して航海をさせたいという情熱がこのような素晴らしい功績をもたらしたのだと思います。尊敬すべき人物だと思います。現在の航空技術は航海技術を多大に参考にしているそうですので、現在の人類の安全な交通にまでネイピアの業績は貢献しているのだと感じました。