野中郁次郎・睦正共編著『マーケティング組織―その革新と情報創造―』という書籍です。 野中郁次郎 | 松陰のブログ

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野中郁次郎・睦正共編著『マーケティング組織―その革新と情報創造―』という書籍です。

野中郁次郎氏・睦正氏共編著の『マーケティング組織―その革新と情報創造―』という書籍は、マーケティング組織の理論と実際を研究したものです(野中郁次郎・睦正共編著『マーケティング組織―その革新と情報創造―』1頁参照)。エクセレント・カンパニーとして、花王、松下電器産業(現・パナソニック)、日立製作所、日本電気(現・NEC)、東芝の事例を挙げています。

マーケティングの組織の概念化には、いかなるパラダイム(理論構築の前提となるものの見方)があるのでしょうか。この点に関しては、従来のマーケティングの文献は組織のあり方についていかなるパラダイムも生み出してこなかったと言ってもよいです。従来のマーケティング戦略の基本的枠組は、4P政策でしたが、それは組織の原理を含んだものではありません。中でもとりわけ注目されるのが、組織のコンティンジェンシー理論です。ここではマーケティング組織のパラダイムの一つとしてのコンティンジェンシー理論をレビューし、マーケティング組織の環境適応についての「ものの見方」を展開していきます(野中郁次郎・睦正共編著『マーケティング組織―その革新と情報創造―』16頁参照)。

組織論の分野を中心に、コンティンジェンシー理論と呼ばれる諸理論が台頭してきていますが、それらは共通して、次のような特色をもっています。第一は、コンティンジェンシー理論はその中に条件性を導入していることです。英語のcontingencyという言葉は、不確実性、偶然性、あるいは不測事態を示す言葉ですが、形容詞としてのcontingent uponは、「(・・・)しだいの、(・・・)を条件としての」という意味をもっています。また哲学用語で言えばcontingentは自由な、決定論に従わない、あるいは永遠に対する偶然の、経験的な、という意味があります(16頁参照)。第二の特色は、そしてこの点が最も重要ですが、コンティンジェンシー理論は組織全体の状況適応を問題とすることです。コンティンジェンシー理論は、実際には組織のあらゆるレベルで考えることができます。個人レベルでは、例えば、モチベーションのコンティンジェンシー理論、集団レベルでは、例えば、リーダーシップのコンティンジェンシー理論などです。事実、コンティンジェンシー・セオリーという言葉が最初に提唱されたのは、状況特性によってリーダーシップ・スタイルの有効性が異なることを発見したフィードラー氏によってでした(野中郁次郎・睦正共編著『マーケティング組織―その革新と情報創造―』16頁参照)。

しかし、コンティンジェンシー理論が組織論に新しい飛躍をもたらしたのは、個人や集団レベルに状況適応理論を提唱したからではなく、それらを包含した組織全体の環境適応理論を開拓しようとした点にあります。おそらく、状況の差が組織にとって最も顕在化するのは、組織と環境の関係においてでしょう。環境不確実性の増大に連れて組織の環境適応について実践的な理論をつくるという現代的ニーズが高まる中で、組織のコンティンジェンシー理論は、組織の本質的な問題を人間関係論に支配的であった個人や集団行動の分析に還元しないで、それらをより根源で規定する組織構造や管理システムの環境適合を捉えた点で新しいものの見方を提供したのです。その意味において、組織のコンティンジェンシー理論は、ミクロ組織論からマクロ組織論への転換を生み出すきっかけをつくったとも言えます。