オッリペッカ・ヘイノネン・佐藤学共著『オッリペッカ・ヘイノネン「学力世界一」がもたらすもの』とい | 松陰のブログ

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オッリペッカ・ヘイノネン・佐藤学共著『オッリペッカ・ヘイノネン「学力世界一」がもたらすもの』という書籍を紹介する。

2010年12月7日、経済協力開発機構(OECD)65ヵ国の満15才の生徒47万人を対象に実施した「生徒の国際学習到達度調査(PISA)」の結果が発表されました。PISA2009年度世界ランキング表にて、読解力の分野では、1位・上海(中国)、2位・韓国、3位・フィンランドが、数学の分野では、1位・上海(中国)、2位・シンガポール、3位・香港(中国)、6位・フィンランドが、科学の分野では、1位・上海(中国)、2位・フィンランド、3位・香港(中国)がランキングしていました。今回は、全ての分野で上海(中国)が第一位に輝いたようです。それ以前、2000年、2003年、2006年のPISAにおいて、世界のトップに輝いていたのがフィンランドです。今回の調査でも上位にランキングされています。そのフィンランドの教育水準の高さの秘密を知りたくて、『オッリペッカ・ヘイノネン「学力世界一」がもたらすもの』という書籍を読みました。

1990年代の初め、深刻な経済危機に直面していたフィンランド。教育大臣に就任したヘイノネン氏は、国の未来を切り開くためには、教育に投資して新たな産業を興すしかないと大胆な教育改革を進め、フィンランドの学力向上に大きく貢献したのです。教育の成果により、失業率が20%を超える不況から、携帯電話メーカー世界最大手のノキアなど、IT産業の急成長で景気が回復し、世界トップクラスの経済競争力を獲得しました(9頁参照)。1990年代から2000年にかけて、世界の多くの国が教育こそが社会改革のカギだと宣言していました。しかし、そうした国々の政治的見解は、教育というものを出費と考えていました。しかし、フィンランドの政策は、教育を支出と見るのではなく、未来への投資とするものだったのです(12頁参照)。

PISAの問題が40、41頁に掲載されていました。暗記する力よりも考える力を試しているのが分かります。これからの不確実性の高い環境を切り開いていくには、考える力が重要なのだと私も思います。そしてリテラシーが重視されてくるものと思われます。情報化社会以前は、情報不足の環境下、いかに情報を収集するかが重要でした。しかし、現在のような情報氾濫の環境の中では、大量にある情報の中で妥当な情報を選別し、正確に情報を解釈することが求められてくるのです(38頁参照)。例えば、某国の首相が記者会見を終え、もう質問がないことを確認し、帰ろうとした直後に背後から記者から質問するかのごとく、「総理」と呼び掛けました。首相はそのまま帰ったのですが、その日のニュースでは、総理は記者からの質問に答えずに帰ったと記者会見を蔑ろにしたように報道されていたとします。確かに、質問を無視した場面だけを見れば、そのように見えます。しかし、その場面以前には、首相はきちんと記者の質問に答えていたのです。果たして、この報道は正確に報じていると言えるのでしょうか。メディアは、編集によって視聴者に対して歪曲な解釈ができるように情報操作ができるのです。故に、そういうメディアの実情を理解した上で、しっかりとしたメディアリテラシーを国民が持たないと、意図的な情報操作に国民が洗脳されてしまう危険性があります。若干、話はそれていますが、解釈の重要性という意味では同様の問題だと思います。木を見て森を見ず。木と森の両方を見て、解釈するのが正確な解釈になるのではないでしょうか。

ヘイノネン氏へのインタビューで印象的だったのは、教育の機会の均等でした。教育の平等と質はトレード・オフな関係だと思われていました。しかし、フィンランドは、その二律背反する教育の平等と質の向上を同時に達成したのです(60頁参照)。教育の平等と質の向上を達成したフィンランドの教育制度は、学校、学級の規模が小さい、授業と学びの様式、プロジェクト型のカリキュラムと協同学習の展開、遅れた生徒に対する手厚い指導などです(66頁参照)。フィンランドの教育の最大の特徴は、教育における平等を徹底させることによって、世界一の学力水準を達成したことにあります(85頁参照)。それぞれの国の文化や諸事情などがあり、全てをフィンランドのような教育制度に変えることは不可能かも知れませんが、理念である「教育の平等と質の向上の同時達成」を国家の投資として尽力していって欲しいと願っています。それが延いては、日本の国力に繋がってくると思います。