鎌田茂雄全訳注・宮本武蔵著の『五輪書』という書籍を紹介する。 剣の道という一芸に秀でた人物から | 松陰のブログ

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鎌田茂雄全訳注・宮本武蔵著の『五輪書』という書籍を紹介する。

剣の道という一芸に秀でた人物から何かを学べると思い、読みました。平成23年2月23日のNHKの歴史秘話ヒストリア『やりたいことで強くなる-宮本武蔵・人生必勝の教え-』という番組に拠れば、世界各国で「人生に勝つ秘訣を教えてくれる」書物として愛読されているそうです。ちなみにオリンピックのことを五輪とも言いますが、その五輪は宮本武蔵の『五輪書』から来ているそうです。

『五輪書』を最初から最後まで読み、『五輪書』は「空之巻」に全てが集約されていると思いました。「武士は、兵法の道を確実に会得し、その他色々な武芸を身につけ、武士として行わなければならない道についても心得ぬところがなく、心に迷いがなく、日々刻々に怠ることなく、心と意の二つの心を磨き、観と見の二つの眼を研ぎ澄ませ、少しも曇りなく、一切の迷いの雲が晴れわたった状態こそ、正しい空であるということができる(244頁参照)」ということです。また、それは「地之巻」における兵法を学ぼうとする人の九つの道を行う法則でもありました。第一に、実直な正しい道を思うこと。第二に、道は鍛錬すること。第三に、広く多芸に触れること。第四に、広く多くの職能の道を知ること。第五に、物事の利害得失を知ること。第六に、あらゆることについて直実を見分ける力を養うこと。第七に、目に見えないところを悟ること。第八に、わずかなことにも気を配ること。第九に、役に立たないことはしないこと(86頁参照)と通じています。

この『五輪書』は、兵法を五つの道に分け、巻ごとにその効用を知らせるため、地、水、火、風、空の五巻として書き表されています。地の巻は、兵法の道のあらまし、二天一流(宮本武蔵の流派)の見方を説いています。水の巻は、水を手本とし、心を水のようにすることです。実際に読んでみて、構え方や足の運び方などの戦いにおける具体的な所作が記載されていました。火の巻は、戦いのこと。戦における具体的な戦術が記載されていました。風の巻は、世上の兵法について各流派のことが記されています。最後は空の巻。空というから奥もなく入口もありません。道理を体得しては、それにこだわることなく、兵法の道は、本来、自由であって、自然と人並み優れた力量が備わり、時期到来して、その拍子を知り、自然に敵を打ち、自然に相対します。これが空の道です。自然に真実の空の道に入ることを、空の巻として書き留めてあります(66頁参照)。

私がこの書籍で興味を惹いたのは、「観」と「見」の違いです。観は「観る」であり、見も「見る」でありますが、同じみるでもそのみかたが違います。宮本武蔵は、「観の目」と「見の目」を使い分けています。私達が普段見るのは、見の目で見ています。自分の好きなことはよく見えますが、それは全部、私が私がという我見に過ぎないということ。だから私達は、目も確実にとらえていると思っていますが、それはとんでもないことです。どんなに見えても関心がないことは目に入りません。「観」については、極めて重要であり、昔から武道では、「観は心で聞く」と言います。普通は聞くというと耳で聞くのでありますが、心で聞くのが観なのです。心は臍下丹田にあります。この丹田で相手の気の動きを聞くのです。聞くのであるから目で見る必要はありません。だから当然、目はふさいで見ることになります。内なる丹田で見るのです。内なる心で相手の動きを感じて見るのが観なのです。観は志で見るのであり、本心で見るのです。観は相手の動作を見るのではありません。相手の気の動きを見るのです。相手の動作を見るのは「見」に他なりません(102頁参照)。

宮本武蔵は兵の道を極めるためには、朝鍛夕錬が欠かせないと述べています(152頁参照)。朝鍛夕錬は鍛錬のことです。鍛は千日の稽古であり、錬と万日の稽古のことです(13頁参照)。継続される日々の稽古が大切であり、その稽古の中で体得される感覚の知こそが重要なのだと伝えています。私も日々、学問に真摯に努力し、暗黙知の体得によって、さらに高い次元に進化できるように努めていきたいと思います。能々吟味有べし。