岩淵明男著『アメーバ経営革命―「変化即応型」組織戦略のノウハウ―』という書籍を紹介する。 単細 | 松陰のブログ

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岩淵明男著『アメーバ経営革命―「変化即応型」組織戦略のノウハウ―』という書籍を紹介する。

単細胞の原生動物であるアメーバは、環境の変化に対応して姿形を変え、仮足を出して移動します。激しく変化する新しい時代には、アメーバのように強かに環境変化に対応していくことが大切であり、学ぶところが多いと思われます(5頁参照)。アメーバ経営では、技術こそ生物の遺伝子に相当し、企業を進化させる要素であると考えています(5頁参照)。

これからの企業は、マルチ属人間を抱えていくわけであり、そうした人間が増えれば増えるほど企業としての活力が生まれるということを理解しなければなりません。というのは、自尊社会では企業は明確な企業文化を持つことも重要ですが、それはその企業に共通した価値観であり、大きな枠組みです。この共通の価値観さえ持っていれば後はできるだけ異質な人間がいた方が、「激変」への対応ができますし、色々な発想も出て来て企業の活力に繋がっていきます。自尊社会の企業は輪郭だけが明確な金太郎飴であることが大事なのです。その輪郭だけの金太郎飴の顔形が「企業文化」であり、その輪郭を描いた線の間には多種多様な素材が詰まっているのが理想です(169頁参照)。

アメーバ経営は、自然学的企業進化論に準拠しています。自然学的企業進化論では、種は獲得形質の情報がその種の全個体の遺伝子に蓄積された時に、いっせいに進化すると考えます。自然学的企業進化論では、遺伝子に相当するのが技術であると考え、企業の進化は技術に根差しているのです。遺伝子が細胞の中に存在するように、技術は細胞に当る個人に所属します。技術を持った細胞、つまり技術を持った個人を増やせば増やすほど企業は進化しやすいということになります。個人の集合が企業でありますが、こうした論理でいけば、人こそ企業なのです。自然学的企業進化論に基づいたアメーバ経営が、細胞に相当する個人に注目するのも、アメーバは単細胞生物で、生物としての最小単位であるからです。アメーバは単細胞とは言え、意志を持ち、環境が変化すると、細胞内の原形質を流動させ、足に似た仮足を突出させて場所を移ろうとします。つまり環境の変化を認識し、その対応策を意思決定し、移動を決断します。移動を決断すると自分自身で行動をするのです。水の流れに身を任せて、行き先を天に聞くのではありません。運否天賦では決してないのです。アメーバ経営とはこのような変化を認識し、その対応策を意思決定してその実行を決断するとともに自ら行動するという一連の流れの中で、企業はどう対処していくべきかを考えるということです。そして、重要なことは、単細胞のアメーバと同じように、企業も個人が最小単位という認識に立つことです。最も単純な原生動物に学ぶのもそのためです。企業は個人の集合ではありますが、個人が自分の意志を持ち、意思決定し、決断して行動しなければ企業は成り立ちません。アメーバのように個人が自立していかなければ、企業も自立できないのです(202頁参照)。

ポスト工業化社会の自尊社会はあらゆる物が激しく変化し、経営環境もこれまでとは比較にならないスピードで変わっています。そのため、過去の成功体験が全く役に立たなくなってしまい、アン・ラーニング(学習棄却)、ゼロ・ベースの経営が決め手になってきました。しかし、アン・ラーニングといっても、何も学ばないというのでは時代についていけません。時代の変化の本質を的確に把握して、その変化についていく知識、技術を身に付けていくことは必要です。むしろ不可欠といった方がいいです。成功体験は新しい発想を阻害するので邪魔になりますが、新しい発想をするためには知識、技術は必要条件なのです(218頁参照)。

(注)遺伝学においては、一応、獲得形質の遺伝は否定されています(『生物進化を考える』木村資生著 8頁参照)。