名和太郎氏著の『ホロン経営革命』という書籍を紹介する。 ホロンとは部分的に全体として、あるいは | 松陰のブログ

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名和太郎氏著の『ホロン経営革命』という書籍を紹介する。

ホロンとは部分的に全体として、あるいは全体的に部分として振舞う、階層(ヒエラルキー)の節目を示します。アーサー・ケストラー氏は、生きている自然の基本原理は一方では階層的組織であり、他方では開放系の特徴であるとの考え方に立ち、各レベルにある生命体なら有機的組織体は、一方では、下の層に対しては全体として振る舞い、上の層に対しては部分として振る舞うというSOHOモデルを提案しました。SOHOは自己統制的に開かれた階層秩序のことで、ホロン的秩序と呼んでもいいです。ホロン的秩序の一般的性質は、生物は構造的見地からは、単一の部品の集合体ではなく、また機能的見地からは単一の行動単位の鎖ではありません。生物は、順次、低位の亜全体(サブ・ホール)へと枝分かれする準自律的な亜全体のマルチレベルのヒエラルキーです。ヒエラルキーのどのレベルにおいても各亜全体をホロンと呼びます。生命の分野には、絶対的な意味での部分や全体は存在しません。生物学的ホロンは、全体としての自律性と、部分としての従属性をあわせもつ自己統制的な開かれたシステムです。ホロンの自己主張傾向と統合傾向、樹状化と網状化、規則と戦略性、ヒエラルキーは統制経路をもっています(14頁参照)、の七つです。

ホロンは生きているシステムの構造概念であると同時に機能概念で、全体であると同時に個、ゆらぎ、自己組織化、引き込み現象、相補性、リズム、分散性、などの性格を持っています(30頁参照)。この概念を経営に利用しようとしたのが、ホロン的経営なのです。世界経済を引っ張ってきた大企業は、経済が成熟化するとともに組織の官僚化が目立ち、急激に変化する環境にうまく適応できなくなってきました。これが大企業病です(112頁参照)。経営理論の面においても、二十世紀の特色である機械工業時代の反映として、組織面でも、経営面でも、機械モデルに近かったのです。例えば、組織には、階層構造の原理、命令一元化の原則、管理範囲の原則、権限委譲の原則、専門化の原則です(42頁参照)。ところが、企業を取り巻く環境は、急激に変化しています。それは、商品ライフ・サイクル(寿命)の短縮化は、年々早くなっています。消費者ニーズの個性化と質的変化です。技術革新が日進月歩に進化しています。政治・経済環境の変化、部と部の間のこと、つまり「部際的」な仕事の対象が次から次に出てきていること。パラダイムの大転換です。(46頁参照)そのような環境変化に対応するために、ホロン的経営が求められてきたのです。

組織の活性化には、「引き込み現象(エントレインメント)」が重要です。引き込み現象には、「相互引き込み」と「強制引き込み」があります。「相互引き込み」は、ばらばらの状態では、自分勝手なリズムで動いていた心筋細胞が、一つの塊になると、互いに引き込み合って、一つの拍動になるような現象と言います。「強制引き込み」は、ある振動数をもっているシステムに外部から振動を加えると、自分固有の振動数(リズム)を外部の振動とぴったり一致させる現象です。「相互引き込み」と「強制引き込み」には、それぞれ二つの型があります。引き込む形として周期がぴったり一致するのを「調和引き込み」、互いの振動数は異なるが、波の底が二つ目ごとに一致するような「倍数引き込み」があります(58頁参照)。企業など組織体は、見方を変えれば、リズムから成り立っていると言えます。人と人との関係や部と部、課と係といった間にある「心のリズム」が企業にとっては大切です。社員がやる気を出すも出さないも、社内、部内の雰囲気や上司、仲間との関係がうまく調和しているかどうかにかかっています。個々人のリズムが互いに「引き込み現象」を起こすと、組織は活性化しますし、1+1が3にも4にもなります(60頁参照)。H・I・アンゾフ氏は、企業資源から、その部分的なものの総計よりも大きな一種の結合利益を生み出すことのできるこの効果は、いわゆる「2+2=5」として注目されていることが多く、このような効果をシナジー効果と呼ぶと述べています(『企業戦略論』H・I・アンゾフ著 99頁参照)。個々人のリズムが互いに「引き込み現象」を起こすと、シナジー効果のような結果が得られるのです。故に、管理者の仕事は、部下達の間に協力のリズムを作ってやることです。管理者の役割は引き込み現象を管理することなのです。

人間のものごとの認識とか、ものごとが「わかる」ということは、かなり“ゆらぐ”ということに関係しています。人間のパターン認識とか直観に関する分野に該当します。パターン認識というのは、例えば、二、三匹の犬を見て、犬一般のことが分かり、初めて見る種類の犬でも、足を一本なくし、三本足の犬でも犬だと分かることです。「わかる」ということは、このパターン認識と直観とが関係しているらしいのです。パターン認識は、対象物と脳と知識の自己組織化現象と言われていますが、例えで言えば、道があるから歩くのではなく、歩いた跡に道ができるのでもなく、歩くところに道があるといった感じなのです。難しく言えば、「わかる」とは主観と対象の融合ということです(91頁参照)。人間は、感覚器官を通じて受け取った情報を中枢神経にあげますが、中枢神経は、その情報を“料理”して、感覚器に戻します。そこで感覚器官の情報の集め方を制御し、正しい情報を理解しようとします。これをフィードバック機構(事後制御)と言います。これに対して、フィード・フォワード制御(事前制御)というものがあります。中枢神経は、予め感覚器官に、受け取る情報の振る舞いを予測して、とるべき態度を制御しています。フィードバックは、制御結果を情報として、制御器に戻し、制御の仕方を最適なように調整するシステムで、これを繰り返すことによって、制御はうまく働くようになります。これに対して、フィード・フォワードは、制御器に影響が現れる前に、未来を読んで必要な訂正動作を行う制御です(92頁参照)。フィードバックは受動的な適応、フィード・フォワードは能動的な適応です。これからは、この能動的な適応であるフィード・フォワードを重視しなくてはならないということです。

名和太郎氏は、『ホロン経営革命』という書籍の中で、ホロン経営を実施するための十一のすすめを記載しています。それは、仕事の範囲をしばるな、従来の考え方を棄てよ、物質も心も波動だと思え、批判するな、徹底的に批判せよ、現状を打破せよ、マージナルマンを尊重せよ、仲間づくりを推進せよ、社外ネットワークをつくれ、仕事をゲームと考えよ、まずやってみよ、の十一個です(259頁参照)。は矛盾するように思えますが、この『ホロン経営革命』を読めば、その深い真意が分かります。素晴らしい書籍ですので、誤解しないように読破して欲しいと思います。