山田雄一著『組織科学の話』という書籍を紹介する。 組織の実体を形づくっているのは、個人の集合で | 松陰のブログ

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山田雄一著『組織科学の話』という書籍を紹介する。

組織の実体を形づくっているのは、個人の集合ですから、その働きはいつも総合的なものです。しかし、私達が組織の特徴を説明したり、組織の働きを改善したりしようとする場合には、一つの分析的な視点に立たなくてはなりません。それはちょうど、美味しいコーヒーは、豆も、ひき方も、水も、いれ方も、クリームも、砂糖も、全て総合されて“美味しい味”を醸し出しているのは確かですが、コーヒーの味を説明したり、もっと味の良い、あるいは味の変わったコーヒーをいれようという場合には、豆や、ひき方や、水や、入れ方をそれぞれ別々に工夫する必要があるのと同じです。組織は、大きく分けて三つの次元から成り立っています。つまり、機構、制度、および運用です。機構とは、組織の組み立てのことで、縦の分業(階層分化)、横の分業(機能分化)がどのような形で仕組まれているかということです。制度とは、ある組織機構が作動する場合の動き方がどのようにとりきめられているかということです。そして、運用とは、ある組織機構や組織制度が現実にどのように働かされているかということです(15頁参照)。

二人の人間が相互作用を営むのはコミュニケーションを通じてです。また逆に二人の人間の間にコミュニケーションが生ずれば二者間に相互作用が生じたことになります。そこでニューカムのようにこの両者を同義と解する考え方が出てきます。勿論、通信理論にしたがって、“入力メッセージ”が“受信”され“解釈”され“意図”によって加工され“送信”されて“出力メッセージ”として出て行くという過程にしたがってコミュニケーションを分析するオスグッド氏らのような考え方もあります。また刺激と反応の累積による学習によって言葉の意味作用が獲得されるという面からコミュニケーションを扱う考え方があります。しかし、組織内の対人的コミュニケーションを扱うには、相互作用とコミュニケーションを同義に解する立場の方が実際的です。このような立場を最も明瞭に意識したコミュニケーション理論を展開したのは、D・K・バーロー氏です(1960年)。彼に拠れば、コミュニケーション行動は送り手と受け手の相互依存関係を意味し、その相互依存の程度は共感の度によって次の四つのレベルに分かれます。それは、定義的依存関係、作用=反作用的依存関係、期待的依存関係、相互交流(共感的依存関係)、です。定義的依存関係というのは送り手が受け手を定義することによって成立するような浅い相互依存の関係です。作用=反作用的依存関係とは一方の所定の反応によって他の者が所定の反応を起こすような相互依存関係です。期待的依存関係とは「個人が自己の内部で応答を試み、他人が自分の発するメッセージにどう反応するかを予想するためにシンボル(内言語)を使い、自分の行動と他人の行動を見通す能力によって裏うちされた相互依存関係です。相互交流とは、共感がさらに深まって、相互に相手の痛みをわが痛みと感じ、相手の喜びをわが喜びと感ずる相互依存関係です。このように見てくると、バーロー氏のコミュニケーションのレベルの深まりは、ちょうどリカート氏のいうシステム1からシステム4に至る管理過程の深まりに見合っていることが分かります(158頁参照)。

実際に組織内のコミュニケーションを分析するための手法を紹介します。コミュニケーションを分析するための手法には、内部観察、間接的分析、定点調査法、断面分析、ECCO分析などがあります(163頁参照)。