細谷功著の『地頭力を鍛える』という書籍を紹介する。現在の情報化社会は情報洪水の下にあり、何が本質 | 松陰のブログ

松陰のブログ

ブログの説明を入力します。

細谷功著の『地頭力を鍛える』という書籍を紹介する。現在の情報化社会は情報洪水の下にあり、何が本質なのかを見極めることの重要性が高まってきているように思えます。地頭力は現代社会において一番必要とされている能力なのかも知れません。私も編集の仕事をしていた時には、仕事柄、漢字に強かったのですが、コンピューターを利用し、インターネット等で検索する頻度が多くなってから、以前、書けた漢字が書けなくなり、利便と共に失っているものもあることに実感を得ています。最近、手で書くことの重要性を感じています。しかし、私が思うに、利便性が悪だとも思っていません。洗濯機、炊飯器等々、家電製品が奥様方の家事負担を軽減し、女性の人生における時間にイノベーション(革新)をもたらしたのは事実です。利便性が生活を向上させたことは確かであり、利便性と共に、自分自身で自己の進化を管理することが大切なのだと思います。それが真の機械との共生だと考えています。

 頭の良さには三種類あります。第一は、記憶力がよく何でも知っている「物知り」のタイプ。第二は、対人感性が高くて人の気持ちを瞬時に察知して行動できる「機転が利く」あるいは「気が回る」タイプ。第三は、数学の問題やパズルを解くのが得意な「考える力」の強いタイプです。細谷功氏は『地頭力を鍛える』という書籍の中で、第三のタイプを「地頭がいい」と定義しています。あらゆる問題解決をする上での基本となる考え方が「地頭力」です(14頁参照)。この三つの能力を三次元空間で考えます。X軸に地頭力、Y軸に対人感性力、Z軸に知識・記憶力を置きます。XYZ軸から作られる三つの面の中で、XY平面である「考える力」の地頭力と「伝える力」の対人感性力の組み合わせが、現代社会で求められている能力です。残りの一軸であるZ軸(知識・記憶力)を活用し、増幅させてさらに新しい知識を生み出して伝達していくという点で、いわば「知識の触媒機能」とも言えるもので、知識の増殖・伝播機能を果たすと考えられています。知識の陳腐化が激しい現代にあっては、インターネット等で収集した情報・知識をこのXY平面の力で増幅させて新たな知を創造して付加価値を創出していくのが理想的なサイクルです(22頁参照)。

 地頭力を鍛えるツールとして、フェミル推定を挙げています。フェミル推定とは、「東京都内に信号機は何基あるのか?」といった、把握することが難しく、ある意味荒唐無稽とも思える数量について何らかの推定ロジックによって、短時間で概数を求める方法のことです。「原子力の父」として知られるノーベル賞物理学者・エンリコ・フェミルが、自身こうした物理量の推定に長けていたと共に教鞭を取ったシカゴ大学の講義で学生にこのような課題を与えたことから、彼の名前を取ってフェミル推定と呼ばれています(40頁参照)。フェミルは、この書籍を読む前に、以前、読破したレイ・カーツワイル著の『ポスト・ヒューマン誕生』という書籍でも紹介されていました。449頁に記述されていたSETI(地球外知的生命体探査)の話題にフェミルが考案したフェミル・パラドックスが記載されていたのです。フェミル・パラドックスとは、もし地球外知的生命体が存在しているのならば、なぜ地球人にはその存在が分からないのかということです。地球外知的生命体が知能を発達させ、駆使して、タイプ(恒星の力を利用して電磁波の放射による通信を行う文明)とタイプ(所属する銀河のエネルギーを利用する文明)の文明レベルに達したのならば、宇宙がこれほどまでに静かなのは奇妙だということ。もし地球外知的生命体が存在するならば、十分に進歩した文明によって通信して来ない(通信に気付かない)のはおかしいというパラドックス(逆説)に陥るというものです(『ポスト・ヒューマン誕生』レイ・カーツワイル著 451頁参照)。私もこの文章を読んで唸ってしまいました。

 話を地頭力に戻しますが、問題解決に対する知的好奇心が全ての基本となります。いわば地頭力の原動力です。次に地頭力のベースとなるのが、論理思考力と直観力です。これらをベースとした上で、地頭力固有の要素が、(1)「結論から考える」・仮説思考力、(2)「全体から考える」・フレームワーク思考力、(3)「単純に考える」・抽象化思考力の三つです(24頁参照)。仮説思考におけるポイントは、どんな少ない情報からでも仮説を構築する姿勢、前提条件を設定して先に進む力、時間を決めてとにかく結論を出す力の三点です(96頁参照)。フレームワーク思考力は、大きく全体俯瞰力と分解力に分けられます。フレームワーク思考力の全体プロセスは、全体俯瞰、切り口の選択、分類、因数分解、全体再俯瞰とボルトネックの発見です(112頁参照)。抽象化思考の基本プロセスは、抽象化、解法の適用、再具体化の三ステップです。抽象化思考力に必要なポイントは、モデル化、そのための枝葉の切り捨て、アナロジーの考え方の三点です(158頁参照)。私も地頭力を鍛え、モノの本質を的確に捉え、情報の大海の中、迅速に最適な解を求められるように進化していきたいと思います。