テレビ東京の『ワールドサテライト』 | 松陰のブログ

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テレビ東京の『ワールドサテライト』

今井賢一著『日本の産業社会―進化と変革の道程―』という書籍を紹介する。

今井賢一氏著の『日本の産業社会―進化と変革の道程―』では、産業社会の基礎概念を「技術革新」「投資」「分業」および「組織」として捉えています。すなわち、産業社会とは、絶えざる「技術革新」に基づいて高率の「投資」を行い、「分業」によって財・サービスの供給システムを作り、企業を主体とする「組織」によってそれらを遂行していく社会です(15頁参照)。

技術革新の新たな局面の本質を理解するには、第一次産業革命以来の技術革新の不連続な波を振り返ることが有益です。技術革新の波はなぜ不連続に現れるのでしょうか。また、その背後にあるメカニズムは何なのでしょうか。経済学の視点から、その理由を要約すれば次のようになります。技術革新の過程とは、基礎的な技術革新に続いて改良的な革新が起こり、それらが人々に需要の内容、したがって、生活様式を変え、また経済社会の仕組みを動かしてゆく過程です。シュムペーター氏流に言えば、新生産関数の設定、社会的革新のプロセスです。これら動態的プロセスが完了するまでには、おそらく数十年の期間を必要とするでしょう。経済学的に重要なことは、その長い過程において、次第に技術革新の成果である新製品に対しての人々の効用の逓減、および技術革新への投資に対する収益逓減の現象が現れてくることです。すなわち、一方で消費者にとっては、技術革新に基づく新しい製品、新たなサービスに対する限界効用は逓減し、他方で投資者にとっては、技術革新に対する投資の限界効率(収益率)が逓減していきます。また、特に最近においては、そのような過程に並行して、投資の低収益率化を補う目的での擬似的な技術革新ともいうべきものが数多く現れ、既存技術、既存製品の周辺で実質的基礎の乏しい見かけ上の製品開発が行なわれます(18頁参照)。

企業にとっては、それらのコストも回収しなければならないものであり、それだけ製品価格を上げていかざるをえませんが、消費者にとってはその種の新製品は真の欲求にこたえるものではありません。したがって結局のところ需要は伸び悩み、需要の減少にもかかわらず価格は上がるというスタグフレーションの様相を呈することになって、技術革新の観点からみた袋小路に入るのです。しかし、そのような袋小路に至る過程は、それを打ち破る新たな技術革新を準備する過程でもあります。消費者は既存のものが少しばかり分化した製品に飽き足らずに消費を手控えているわけでありますが、それを裏返しして言えば、人々が新たな技術革新を求めて購買力を留保している過程でもあります。他方、企業にとっては、既存投資の延長線上では高収益を上げられないことが益々はっきりしてくるので、多くの企業は本格的な技術革新を求めて研究開発支出を増加し、必要な革新にも着手するようになります。かくて、経済社会の仕組みの中に、新たな革新を求め、それを生み出し、かつそのインパクトを受け入れようとする態勢が出来上がります。このような技術革新の過程を、資本主義経済の発展におけるこれまでの技術革新の局面との対応を念頭に入れ、今井賢一氏は、重なりあう連続した大きな波をイメージしています。技術革新の大きな波は重なりあって進行するのです(19頁参照)。

今井賢一氏が述べるように経済には循環性があります。19世紀後半から20世紀の初めにかけて、新しい景気の波の発見が経済学者の心を躍らせました。科学の一つの証が法則だとすれば、「景気変動の規則性」には、この背景に何らかの法則を直感させるものがあり、科学者としての経済学者の興味をそそったのです。一口に景気の波といっても、周期の長いものから短いものまで、色々あることが分かっています。その景気の波には、ジュグラー・サイクル(主循環)、キチン・サイクル(小循環)、コンドラチェフ長波、建設循環などの種類があります(『ゼミナール・日本経済入門(第十版)』日本経済新聞社編 53頁参照)。

今井賢一氏著の『日本の産業社会―進化と変革の道程―』という書籍で重要なのは、「中間組織」に関する記述です。36頁に載っています。何らかのかたちで市場と組織とが組み合わされたもので、市場と組織の中間にあるという意味で「中間組織」と呼んでいます(37頁参照)。日本の産業社会を理解する上では重要な概念です。