テレビ東京の『ワールドサテライトニュース2』 | 松陰のブログ

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テレビ東京の『ワールドサテライトニュース2』



井関利明監訳、D・ペパーズ・M・ロジャーズ共著『ONE to ONE マーケティング』という書籍を紹介する。

今や情報テクノロジーの発展により、企業は、顧客「一人一人」を把握し、彼らと一対一で対話を続け、そして個別の仕様に従ってカスタマイズした製品・サービスを提供することが可能になってきます。これがワン・トゥ・ワン・マーケティングです。その原理はこれまでのものとは全く異なっています。それは根本的に新しい競争のパラダイムなのです。ワン・トゥ・ワン・マーケターは、自分の顧客が誰であり、その顧客に接触するにはどうするべきかを個別に把握しています。そして、市場シェア獲得を成功の尺度とするより、むしろ「ある時点で一人ずつ」の顧客における「顧客シェア」の増大に専念します。ある時点で一つの製品に集中して、可能な限りの製品・サービスを販売し、生涯を通じた愛顧を得ることを目的とするのです。ワン・トゥ・ワン・マーケティングを遂行する企業が顧客のロイヤルティを維持するには、クオリティの高い製品と、顧客満足に対する高レベルの配慮をもつことが必須となります。基本的にワン・トゥ・ワン・マーケティングは、昔からあるリレーションシップ・マーケティングが洗練されたものに過ぎません。ただし、何千人あるいは何百人もの顧客とのリレーションシップを一人ずつ個別に維持するために、情報テクノロジーで武装しているものです。そして、これは当然のことですが、顧客シェアの上昇は、市場シェアの上昇へと繋がっていきます。マス・マーケティングとセグメンテッド・マーケティングが、本質的に製品中心の発想なのに対し、ワン・トゥ・ワン・マーケティングは顧客中心の発想だと言えます。マス・マーケティング・パラダイムにおける競争優位は、製品のクオリティの高さ、または、実質的かイメージによるものかはともかく、製品の差別化がもたらすものでした。しかし、製品中心の企業には不幸なことですが、情報テクノロジーの発達によって、顧客との個別交渉が可能になった反面、長期にわたる製品や品質の有効な差別化を維持することは不可能になってしまったのです。ワン・トゥ・ワン・マーケティングには、ある普遍的で有効な原則が含まれており、それは、いかなる文化に属するいかなる企業にも適用可能です。すなわち、顧客シェアへの志向、個別フィードバックと顧客との協働の推進、規模の経済から範囲の経済、製品の差別化から顧客の差別化、顧客を製品に合わせるのではなく製品を顧客に合わせる、といった原則なのです(ⅰ頁参照)。

リレーションシップ・マーケティングと、その中核となるワン・トゥ・ワン・マーケティングの両者ともに、従来からの伝統的なマス・マーケティングの発想と手法を拒否し、思考枠組みの転換とビジネスの再創造とを明瞭に主張しています。新しいパラダイムの提唱です。ドン・ペパーズ氏は、「ビジネスとは、企業が顧客の生活を見つめ、語り合うところから生まれ、個別化されたよき相互関係を通じて発展する相互作用そのものです」と述べています。さらに、ドン・ペパーズ氏は、「人々の語ることに耳を傾け、共につくる協働作業」であり、「顧客とのワン・トゥ・ワン関係の確立」だと言っています。そして、大規模における個別対応を可能にするのが、コンピュータとデータベースとネットワークによる柔軟な生産方式と、テレコミュニケーション技術の急速な発達であると語っています。マス・マーケティングとワン・トゥ・ワン・マーケティングを対比してみると、(マス)顧客獲得⇔(ワン・トゥ・ワン)顧客維持、(マス)販売・取引⇔(ワン・トゥ・ワン)関係づくり、(マス)販売促進中心⇔(ワン・トゥ・ワン)顧客サービス中心、(マス)市場シェア⇔(ワン・トゥ・ワン)顧客シェア、(マス)製品品質志向⇔(ワン・トゥ・ワン)クォリティ中心<顧客を満足させる性質>、(マス)TO Automate⇔(ワン・トゥ・ワン)TO Informate、(マス)集中処理志向⇔(ワン・トゥ・ワン)分散協調志向、(マス)マネジメント志向⇔(ワン・トゥ・ワン)エンパワーメント志向、(マス)“Cure”型⇔(ワン・トゥ・ワン)“Care”型、(マス)モノローグ型⇔(ワン・トゥ・ワン)対話型、(マス)規模の経済⇔(ワン・トゥ・ワン)範囲の経済、になります(ⅴ頁参照)。

マス・メディアというのは万人向けに提供されるものであるため、概して無味乾燥なものになりがちです。マス・メディアというのは、マーケターが競争他社に負けじと声をはりあげるため、競合する各企業のメッセージの叫び合いでもあります。しかし、このような喧噪の中で声を張り上げることは、ビジネスの究極の目的―あらゆるマーケティング活動の最終目的である売上げの向上とブランド・ロイヤルティ(顧客が特定のブランドを繰り返し買う度合い)―の獲得から考えると意味がありません。ワン・トゥ・ワン・フューチャーにおけるニュー・メディアによって、集団としての顧客に向かって叫ぶのではなく、一人一人の顧客と直接コミュニケートをすることが可能になるのです。以下の三点においてワン・トゥ・ワン・メディアは従来のマス・メディアと大きく異なります。①ワン・トゥ・ワン・メディアは、個別対応型(個別的にアドレス可能)です。アドレス可能なメディアとは、必要とされるメッセージを個別に届けることができるものを言います。②ワン・トゥ・ワン・メディアは、双方向です。従来のマス・メディアは、企業やマーケターから顧客に対する一方向のメッセージしか伝えることができません。しかし、双方向的なニュー・メディアはすでに実用可能であり、どんどん新しく開発されています。それらを利用することによって、個々の顧客の声が的確に企業側に伝わるのです。③ワン・トゥ・ワン・メディアは、費用が安いです。規模の小さなビジネスは、顧客や見込み客の数も手頃で、一人一人とじかに接触することができます。個人的にアドレス可能な電子メディアを利用することによって、新規の顧客を見つけ、得意客とも密な関係を保つことができます(9頁参照)。

従来のマス・メディアはワン・ウェイ・コミュニケーションでしたが、インターネットなどの普及によりツゥー・ウェイ・コミュニケーションが可能になりました。一方向の情報伝達では顧客に情報を一方的に送るだけで顧客の満足までははかれません。しかし、双方向のコミュニケーション・システムでは、顧客のレスポンスを知ることができます。この顧客のレスポンスは、顧客のニーズであり、ウォンツであります。企業と顧客が双方向のコミュニケーションによって対話し、互いに進化していく関係のあり方をワン・トゥ・ワン・マーケティングでは説いています。