米国発のサブプライムローン問題で、連日危機を煽る報道がなされているが、私はそんなに大した問題ではないと思っている。米国の住宅ローン残高は、約2000兆円の規模である。そのうち、ざっくり言って、プライムローン(信用度が高い人向け)が約1600兆円、オルトA(比較的信用度の高い人向け)が約200兆円、サブプライムローン(信用度の高くない人向け)が約200兆円である。サブプライムローンの2割が焦げ付いたとして40兆円の損失額、仮に全てが焦げ付いた(こんなことはありえないことだが・・。)としても、損失額は約100兆円である。

 日本のバブル崩壊の過程で、日本の金融機関全体でこうむった損失額が約220兆円であったことを考えると、今回の損失額は最悪でも、その半分にも満たない規模だ。それに、日本の場合はすべて日本一国で処理したが、今回は証券化という手法を使い、損失が全世界に分散している。全世界に散らばっているから余計に怖いという議論もあるが、そうではないだろう。損失額が同じであるから、多くの金融機関で薄く広く支えたほうがきずは小さくてすむだろう。

 それに今回、米国はインフレ政策をとってしのごうとしている。全体の物価を調整的に上げることによって、これ以上の住宅価格の下落を防ごうということだ。この政策は、効果を発揮するだろう。ひるがえって、日本のバブル崩壊時には、当時米国のクリントン政権の執拗な円高攻撃に遭い、ひどいデフレに陥ってしまったため、損失額が必用以上に拡大してしまったのだ。

 米国は、日本のバブル崩壊を反面教師にし、的確な対策を打ってきている。この時期に、大恐慌が来るというような悲観論を論ずれば注目を浴びるだろうが、我々は、そういう論調に踊らされないようにすべきである。