日本のCPIは、まだまだゼロ付近かマイナス傾向が続いており、一見日本経済は、まだデフレ状態から脱却していないように見える。しかし、そういう統計数字は置いておいて、国民の生活実感はどうであろうか?最近、生活コストがアップしてきていると感じる方が多いのではないか?過去に本ブログ(2007.6.12号)でも述べたように、生活用品の多くが値上げされてきている。原料高に耐え切れず、他にも多くの製品が値上げ予備軍として控えているので、今後値上げは加速してくるであろう。

 では、なぜ総務省の出すCPIは、思ったより低いのか?その理由は、CPIの算出方法を見てみるとよく分かる。携帯電話やテレビ、パソコンなどのハイテク製品が、CPIの低下に大きく寄与しているのだ。たとえば携帯電話だが、たしかに通話料、パケット通信料はどんどん安くなってきている。しかし、皆さんの月間使用料は安くなっているだろうか?答えはノーだ。使用頻度、データ量が増えてきているので、逆に月間使用料は上がってきている人が多いと思う。実際、事業者側が発表しているARPU(一契約者当りの平均売上高を示す数値)も上昇傾向にある。また、テレビについてもしかり。たしかに画面インチ当りの価格は、これまたどんどん安くなってきている。しかし、画面サイズ20インチのテレビの買い替えに、また20インチのを普通買いますか?当然、今度は30インチのがほしいでしょう。しかももっと高機能のものを。パソコンなどについても同様だ。

 私の感覚では、政府発表のCPIよりも2~3%位高いところが国民の実感ではないかと思う。政府としては、CPIは低めに出したほうが都合がいい。物価連動型の個人国債の利払いを低めに抑えられたり、年金の支給金額も物価に連動して増減するので、これも低く抑えられる。また、なによりもインフレ対策が後手にまわることで、つぎに来るインフレはより強いものになるので、国の1000兆円にも及ぶ借金が実質棒引きされるというメリットがある。しかし、われわれ国民の側から考えると、CPIがまだ低いからといって安心するのはあきらかに危険である。常に政府発表より2~3%高いところが現実であると意識して、今後に備えるべきであろう。