世界的に資源ナショナリズムが台頭してきた。南米諸国の資源の国有化の動きや、ロシア、中国での資源の囲い込みの動きがしだいにエスカレートしてきているのだ。

石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」の工事が、環境対策の不十分さを理由にロシア政府から承認を取り消され、結局ロシア国営天然ガス独占企業体ガスプロムに経営権を移譲させられた。もともと「サハリン2」の主導権を握っていたのは、ロイヤル・ダッチ・シェル、三井物産、三菱商事であった。また、英BPが開発権をもつ東シベリアの大型ガス田事業にも、ロシア政府は違反があるとして開発免許を剥奪した。

 中国も資源の囲い込みを強めている。たとえばオーストラリアでは40年間に渡り権益を保持してきた日本の住友金属鉱山からニッケル鉱山の長期供給契約を奪い取るなど国を挙げての資源外交を仕掛けている。また、オーストラリアのウラン鉱山の開発でも、中国が大きく先行しており、日本は周回遅れというよりも日本を乗せずに船は出港してしまっている状況だ。日本のほうは、これまでは企業にまかせっきりであったので、とても太刀打ちできる状況ではない。

 資源のほとんどない日本にとって、将来の資源の供給を確保することは安全保障上たいへん重要なことだ。最近、ようやく安倍首相が中央アジア、中東諸国を訪問し、遅まきながら資源外交を始めたことは、せめてもの救いだ。オーストラリアにも早急に行くべきだ。オーストラリアは、日本にとって地理的にも近い資源大国なので、もっと大事にすべきだ。