コーヒーの商品価格にめったに起きないことが起こっている。それは、アラビカとロブスタの価格逆転現象である。東京アラビカの当限価格より東京ロブスタの当限価格ほうが高いという状態が続いている。理由は、アラビカ種の主産地であるブラジルなどの輸出が好調なことと、ロブスタ種の主産地であるベトナム、インドネシアの船積みが遅れているためである。

 まず、アラビカ、ロブスタとは何かということを説明しておきたい。ご存知の方は、この段落を読み飛ばしていただきたい。ロブスタといっても、ザリガニではありませ~ん。コーヒー豆には、大きく分けてアラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種の3種類があるが、日本で流通しているのは、アラビカ種とロブスタ種である。コロンビア、モカ、マンデリンといった有名な豆は、すべてアラビカ種で、一般的に高級とされている。害虫などにも弱く、繊細であるため、栽培コストも高い。一方のロブスタ種は、アイスコーヒーやインスタントコーヒーなどに使われる豆で、一般的に価格は安く、栽培コストも安い。ただ、高級コーヒー店で、若干の苦味を引き出すために、アラビカ種のコーヒーにわざと10%程度ロブスタ種を混ぜていたりする場合もある。したがって、生豆の商品価格もアラビカ種の方がロブスタ種よりも高いのが、普通である。

 ところが、高級なアラビカ種のほうが、ロブスタ種よりも価格が安い状況が続いているのである。しかし、このような状況は長続きしないであろう。ロブスタを買っていた実需筋が、そのうちアラビカに乗り換えてくることが予想されるからだ。このようなことから、現在は、アラビカ買-ロブスタ売の裁定取引(サヤ取り)の絶好の仕掛けポイントにあると考えられる。ファンダメンタルを無視したこのようないびつな状況は長続きしない。