新日鉄とアルセロール・ミタルとの攻防がテレビ放映され、個人投資家の間でも話題になっているが、世界規模で進展する再編の嵐は、鉄鋼業界だけにとどまらず非鉄業界にも吹き荒れ始めた。

 米アルミ大手のアルコアが、カナダの同業アルキャンへの敵対的買収を明らかにした(8日ロイター)。買収総額約3.2兆円という規模だ。また、非鉄最大手のBHPビリトンが、同じく非鉄メジャーの一角のリオ・ティントの買収を狙っているとの観測が報道された。

 別子が権益を保有する割合で換算した埋蔵鉱の時価総額は、銅で3.1兆円、ニッケル9.2兆円、金1兆円で、主要3金属で約13.3兆円にもおよぶ。ひるがえって、別子の現在の時価総額は、約1.7兆円である。もちろん、採掘、精錬コストがかかるわけだが、それを割り引いてもあまりにも時価総額が低すぎる。それに加えて、別子は類まれなる精錬技術を保有している。特に、ニッケルの精錬技術であるHPAL工法は、世界で他の追随を許さない最高水準の技術である。

 また、日本で別子ほど自山鉱比率の高い会社は、ほかには見当たらない。日本では、非鉄メジャーを目指せる唯一の会社といっていい。別子の社長も10年後に世界の非鉄メジャー入りを目指すと公言している。このような美味しい会社を、業界再編の中で世界がほっておくはずがない。いずれは、M&Aの標的になるであろう。いや、すでになっていても不思議ではない。

 最近、遅まきながら株価も水準訂正を始めたが、息の長い大きな相場になるであろう。今回、会社側が開示したアナリスト向け説明会資料を分析すると、会社発表の収益見通しがあまりにも保守的で、私が時価で計算し直して見たところ本年度実質一株あたり予想利益は332円となった。15倍に買われても、約5000円という数字がでてくる。また、今後の資源不足の深刻化が明らかになってくる過程で、さらに注目されていくものと思われる。おそらくこのトレンドは、長期的に変わらないだろう。

 別子のホルダーは、もうすでに大きな含み益を持っておられると思われるが、売らないでしばらく忘れていたほうがいいと思う。WGCの豊島氏が、「バイ・アンド・ホールド」ではなく、「バイ・アンド・フォゲット」がいいとよく言われている。これは、金地金売買についての話であるが、別子の場合は、まさに、「バイ・アンド・フォゲット」戦略が有効なように思う。つまり、買って忘れておくということである。変に覚えていると、含み益が多くなるとついつい売りたくなってしまうし、調整局面(ここまで急激に上昇してきたので、2割程度の調整があっても不思議ではない。)でも肝を冷やすことになるから。そして、2010年に行われる南ア・ワールドカップあたりで思い出せばいいのではないだろうか?南アといえば、世界有数の資源国なので、思い出すのにちょうどいいタイミングだ。そのころには、10000円を超えているか。ただし、来年で株式の優遇税制が廃止になるのであれば、一旦利確し、買い直したほうがいいということはある。

 

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