ついに楽天がTBS株の買い増しを宣言した。提携交渉が遅々として進まないことに楽天側が痺れを切らした格好だ。考えてみれば、楽天とTBSでは企業体質がまったく違う、いわば対極にある企業だといえる。この両社が交渉をしてもなかなかかみ合わないのは、当然の結果だろう。かたやサッカーのつもりで試合をしても、もう一方が蹴鞠(けまり)のルールで応対してくるのだから。

 楽天は、自由競争の中で鍛えられた近代化された企業であるが、一方のTBSは、規制に守られてきた中世の封建的な企業風土を持つ企業だ。この違いが、両社の経営陣の行動に如実に現れていると思う。楽天側は、企業統合あるいは業務提携という形を通じて相互補完的な関係を築き、相乗効果でお互いの成長を促進し企業価値を上げていこうとしている風に見える。しかし、一方のTBSは、主義、主張がまったく見えてこない。楽天の提案を断るのであれば、それに替わる成長戦略をみずから示さなければならない。現状では、経営陣の保身にためにだだをこねてるようにしか見えないのは残念だ。このままでは、TBSの株主や社員の利益にもならないと思われる。

 世界的にグローバリゼーションが進展するなか、今回の騒動は、国際的にも注目されている。いまのところ、この問題の結末がどうなるかはわからないが、単に楽天vsTBSだけの問題ではなく、日本経済が真の意味で封建社会から抜け出すことができるかどうかの試金石になるのではないだろうか?

 

楽天の研究―なぜ彼らは勝ち続けるのか/山口 敦雄
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