無題 | 小堺翔太オフィシャルブログ『ショウタパドック』Powered by Ameba

無題

競馬界では悲しい出来事が立て続けに起きてしまいました。

高知・塚本雄大騎手、JRA・藤岡康太騎手が落馬事故により亡くなりました。

 

改めて文字にしてみても、事実として受け取りがたく、嘘であって欲しいと思いますし、心の整理が付かない状況です。いち競馬ファンとして、また何度かお話を伺う機会があった立場の私でこのような状況ですから、近しい場所にいらした関係者の皆さんやご家族の心境を思うと…どう言葉に表現していいのか、言葉が見つかりません。

 

謹んでお悔やみ申し上げますとともに、心よりご冥福をお祈り申し上げます。

 

 

このような状況に関連して、自分の事を語るのがどうか、という想いはあるのですが、少し気持ちを綴らせていただければと思います。

 

訃報を立て続けにお伝えしなければならない事に、私自身もかなり心が沈んでしまっておりました。レースで見続けてきたプレーや普段の姿がどんどん頭に浮かび、さらにお二人とも笑顔や穏やかなシーンばかりが思い出され、それでまた心の中に水たまりができるようです。

それでも普段通りに競馬は行われ、目の前ではプレイヤーの皆さんが懸命に競馬を続けてくださっている。にもかかわらず、いつもの通りその中に自分の身を置くことが出来ずにいました。「出来事を言葉にする」という仕事においても、何を喋っても言葉が宙に浮いたような状況で、それがまた色んな方に失礼な気がして心苦しかったです。

 

 

今日のグリーンチャンネルの中継では、冒頭で藤岡康太騎手のお話をさせていただきました。

「康太さんが乗られていた馬だから…」と勝利を挙げたルーキーの高杉吏麒騎手が涙を流しながらウイナーズサークルでサインに応じていたこと。中山グランドジャンプを勝った黒岩悠騎手がゴールの瞬間に康太騎手の名前を叫ばれていたこと。関係者の皆様が様々な想いで今週の競馬に臨んでくださっていること。いつまでも康太騎手の笑顔やプレーを忘れないように。そしてすべての人馬の無事を祈って。話をしていてもやはり寂しさが溢れてしまいそうになりました。

 

日曜日に行われたレースでは、康太騎手が関わって来た馬の活躍が目立ちました。前走まで乗っていた馬、コンビを組んで初勝利を挙げた馬、康太さんが主戦だった重賞勝ち馬の仔の勝利。どれもご紹介しながら、平静にと思ってもやっぱりこみ上げてきてしまって、どうする事も出来ませんでした。

 

正直、今日の皐月賞も現地で見るのをどうしようか…と思っていたのですが、帰り道方面のホームまで降りかけたところで踵を返すように中山競馬場へ向かいました。競馬場に着いてしまえばそこでは“日常”に触れる事も出来ましたが、福島のメインレースを康太騎手の同期・丸田恭介騎手が勝ち、馬上で気持ちが溢れる姿に涙。皐月賞の馬場入場、小塚歩アナウンサーの「魂の騎乗はきっと天に届くはず」という康太騎手の兄・佑介騎手が乗るミスタージーティーの紹介に涙。

そして皐月賞。康太騎手が中間の調教を付けていたジャスティンミラノの勝利、涙涙の関係者の皆さんの姿や戸崎騎手のコメントにまた気持ちが溢れてしまいました。「こんなことってあるんだ」という想いと「こんなことってあるんだって思いたくなかった」という悔しさと…

そこに康太騎手の存在の大きさが“ぬくもり”をもって感じられたことで、よりなんとも言えない気持ちになりました。

 

皐月賞を制したジャスティンミラノ

 

レースを終えたジャスティンミラノが、戸崎圭太騎手のインタビュー中にどこか何かを想いたたずむように止まっていた姿がとても印象に残っています。馬自身のポテンシャル、陣営の努力、引き出した戸崎騎手の手腕も当然あったのでしょうが、今日の勝利はやはり康太騎手の力もあったのだろうと思います。

 

 

今日の出来事もそうですが、折に触れて今年起こった出来事や残念ながら失われてしまった存在の大きさや尊さ、そして輝いていた瞬間や姿を思い出すことがあるはずです。しばし寂しい気持ちは続きますが、ずっと心の中で生き続けてくださるように、いつまでも語り継いでいけたらと思います。