今年の夏はこれまでよりも暑い

汗がダラダラと出てくる

水を飲む

なまぬるさが喉を伝わる

音楽を聴きながら自転車を漕ぐ

してはいけないことか?

文博は高校に向かっている

彼には最近彼女ができた

アプローチは相手からである

やにわに僕は相手に惹かれていった

僕は悪い心地がしなかった

むしろ幸せを感じるほど快適で未開拓の土地に宝を見つけたような気分を心得ていた

高校入学まで一度も女性と縁のなかった僕にとっては不思議だった

こんな僕を好きになってくれる人がいるなんて

 

彼女とはどういう存在なのだろうか

自分を愛してくれる存在だけで言い切れるのだろうか

言葉で表せないことだろう

この世の中には言葉で表せないことが多々ある

しかし、それは本当に良いのだろうか

哲学といった抽象を言葉にする学問みたいに

彼女は何かという命題に対する答えはあるのだろうか

貴様は何を言っているんだ

と、思われるかもしれない

僕は今の社会を変えたい

 

普通の人と違う人生を歩むことが僕の最大の使命だ

おい、みんなの人生は全て違うだろ!

いや、そうじゃない

人生というくくりを変えたいのである

歳をとるまで仕事をして生を終える

なんかもったいなくないか

秩序ある正しい人生を歩みながら後世の人が憧れるような真似をされるような生き様を見せてやる

 

時は夏の夜

午後8時を回ったところだろうか

僕は今、彼女と花火を見ている

夏の夜空にはじける花火

色とりどりの花火が模様を描き散っていく

国のために散っていった兵士たちを髣髴とさせる

だれもそう思っていないだろう

我が国を守った兵士

いや守らなければならなかった兵士

国は何をしていたんだ?

なぜ・・・戦争をするのか

花火の轟音とともに戦争に対する憤怒が心からこみ上げ声に出そうになる

彼女が手をつないできた

手を絡み合わせてくる

怒りは抑えられ楽しく花火を見ようと努めた

そう、今日は楽しく花火を見るのが目的だ

 

人間はなぜすぐ批判するのだろう

いつまでたっても誹謗中傷は消えない

なんの目的があるのだろう

そんなことにエネルギーをつぎ込めるほど何か心に抑えきれない不満を抱いているのか?

それを吐き出して他人に迷惑をかけるのが正しいことなのか?

違うだろう

心は素直になれない

もっと客観的に物事を見るべきなのに

自分の考えに拘る愚の民は存在するべきなのであろうか

 

高校が始まって数か月たって学校祭が始まる

学校祭の準備中いつも話しかけてくる女子がいる

つぶらな瞳と濁りのない目そして純粋な笑顔

隣で作業と共にする

話を続けるのが苦手な僕だったが

相手は話が好きなようで会話を何とか維持することができた

なんだか落ち着くな

そう感じ始めたのは準備が終わって家に帰るころであった

「今日はありがとう! 楽しかったよ」

別れ際にこう放たれた言葉は心をいや胸をドキドキさせるものがあった

いつの間にか僕は彼女に惹かれていった

そんなとりとめもない日々が過ぎていき学祭当日を迎えた

メールで一緒に回りたいなと連絡が来た

「いいよ」と返す

「やった!」とリアクション

実際二日目の午後に共に回ることができた

友達からすれ違うたびに茶化される

恥ずかしい気持ちと一緒にいる喜びが交錯する

人生で初めてだ

こんなに女子とかかわる機会があったのは

もどかしさを隠しつつダサいと思われないよう行動に気を遣った

ただ純粋に楽しんだ

 

イデオロギーとか政治の信条とかは高校生にとっては無縁なのだろうか

金科玉条と言える憲法?法律にただ従えばいいのだろうか

若者の政治の無関心さを肌で実感させられる

選挙で僕の支持者が負けた

もう年を取ったおじさんおばさんに・・・

そんな彼らに何を皆は求めているのだろう

投票率の多くを高齢者が占めることは異常ではないか

若者は社会に不満を嘆きつつ他人任せで知らんぷり

改革を求める意味すらもう意味をなさないのだろうか

 

超進学校と称されることもある学校に僕は通っている

みんな勉強ができるが思ったよりはじける部分もある

中学までは友達でも信用ができなかった

学力の違いが人間関係にも支障をきたす

変わっているね そう毎日呼ばれ続けた

皮肉交じりのこの言葉に変に興奮した

みんなはどんな人生を歩むのだろうか

体の芯からゾクゾクする

 

高校は一風変わった

僕がいるべき場所はここだ!

そう思えた

多分同級生も同じことを思っているのだろう

みんな協調性があってとても接しやすい

男児も女子も最初はわだかまりがあったがすぐに打ち解けた

クラスの雰囲気は良好といったところだろう

みんな先生も友達も話がとても面白い

会話の楽しさをここで実感した

そういう日々を過ごす中僕に視線を向けてた人がいたとは思ってもいなかった

まさか彼女にまで発展するなんて

 

花火の終わり、僕は彼女を迎えに家まで送った

相手の親にバレないようにする必要があった

彼氏ができたんだよ!そう親に簡単に言えるものではないだろう

この話を続ける前に付き合うまでの話をまとめたい

部活の大会で学校を休む時期があった

その時期に相手が僕にメールを登録してくれて授業プリントを送ってくれた

その後たまに連絡を取り合う中になった

学校祭の準備で一緒にいる時間が増えて共に回った

夏の花火大会は2回あり、そのうちの一回目の花火に誘われた

帰り際に「なんで花火誘ってくれたの?」と聞くと

「好きだから。」と返答。

「付き合ってくれる?」と続けて言われ「うん」と頷く

なんか文字だけではあっけない告白だが実際はちがう

二人はひどく理性を乱していた

僕はもうそのときに彼女を好きになっていた

相手も僕が好きなのは分かっていた

相手の気持ちを確認しようとしたところ

急に好きと言われた

その時の表情は赤面でありながらも何か腹を括ったようであった

僕は音が聞こえるくらい心臓がバクバクしだした

まさかの告白!

僕はうん と返事をした

相手はとても喜んでいたようだった

カップル成立が確定したのはその後メールで僕が改めて気持ちを送ったことである

これからよろしくね!

 

夏の二回目の花火

浴衣を着た彼女と部活帰りの半袖短パンの僕

不格好でも許してくれる心の広さ

付き合って日にちが経った今でも実感する

河川敷に座り花火を見る

となりで急に彼女がもたれかかってきた

幸せとはこのことなのだろうか

 

帰路はひどく混雑していた

迷子にならないように僕は彼女に手を差し伸べた

承諾した すなわち手をつないだのである

安心感、落ち着き、安堵

暗闇に広がる空に映える星と手を絡ませ合う体温の温かさがロマンティックに感じる

しんしんと雪が降るクリスマスに笑顔でサンタがプレゼントを運ぶように・・・

無事彼女を最寄り駅まで届けることができた

彼女はまだ僕と一緒にいたいそう

彼女の家の近くまで歩くことにした

家の近くで僕は決心した

口で正直に愛してますと伝えようと

もう彼女は僕にとってかけがえのないでは済まされないほど大切な存在になっていた

伝えたい気持ちと恥ずかしさが葛藤している

 

結果は伝えることができた

初めてのハグをする

相手の手が背中にまとわりつく

彼女の体温だけでなく心の暖かさも全部感じる

時が止まっているようだった

うっとりしすぎて倒れそうになる

疲れもあったのだろうか

ベンチを見つけて一緒に座った

今日の振り返りをする

楽しかったね!

そんな会話を続けた

時間がもう遅いので親が心配するだろうと

訪ねる

そうだね・・・と答えた彼女

僕もそろそろ家に帰るときが近づいてしまった

名残惜しいけど解散にするかといった時、

彼女の口が僕の頬に当たった

彼女は優しく笑っていた

僕はありがとうと応え、お返しにと頬にキスをした

二人の目が合った

相手が目を閉じた

短い沈黙が続いた後彼女の肩に手を当てて

口にキスをした

初キスである

二人の時間が一生続いてほしいといわんばかりに幸せを心から感じる

相手が急にまたキスをしだした

口にキスをされていたら急に舌が口に入ってきた

心臓が飛び出る

理性が爆発してしまう

僕はハグをしながら彼女の行動に身を任せた

気づいたら15分も過ぎていた

さすがにこれ以上は親が心配するので解散を決めた

じゃあね また遊ぼう!

ため息が漏れてしまった

コンビニに駆け寄り炭酸ジュースを買う

一気飲みをした

心が空っぽなような満たされているような

質量のない気体が体を覆いかぶさる

風が吹いた

肌に染みる

雑念を忘れて二人の時間を大切にしようと思えた

もう政治の不満とかどうでもいい

それ以上に彼女がさらに恋しくなった

月を見る

彼女の笑顔が浮かんで見えたようだ。