カルガリーの日々
ウィニペグからカルガリーへのフライトは遅れに遅れ、空港でたまたま一緒になったフリンジアーティストのジミーと二人でパブで飲んであれこれおしゃべり。
2時間も待つんだから、飲むしかないわよね。
ジミーとサシで話すのは初めて。ブリティッシュアクセントでものすごく早口で喋る。
一流のコメディアンである彼は、とにかくテンションが高くて、毒舌で、ずっと私をからかっている。どれが冗談でどれが真面目な話なのか、判別しがたいくらい。
でも驚くほど何を言っているかわかるので、これは仲良くなれそうだと思った。
シェフでもあるというジミーは、この空港パブの馬鹿高いポテトをずっと「くそゴミ」と呼んでいた。お腹が空いていたので私が注文したのだが、いくつかの味のポテトのメニューから私が「どれがいい?」と尋ねると、「それはな、おまえ。どのゴミがいい?って訊いてるのと同じだぞ!」と。
3杯ほどビールを飲んだのち、搭乗間際になってジミーがウィスキーのショットをごちそうしてくれた。「機内で寝られるだろ?」と。
このパブでオーダーする際に、私が店員さんに手を振って合図したところ「アジア人はそれをやりがちだけど、下手するとそれは失礼にあたるからやめておけ。文化の違いだってことを俺はわかっているけど、白人の文化では店員に手を振ったりしない。うちの妻も韓国人で、よく手を挙げたがるから、いつも俺が止めてるんだ。」と。
そしてどうやって店員を呼ぶのかを実演で見せてくれた。
グラスが空になったら、無表情でそれとなく店員を探し、じっと見つめるらしい。
アイコンタクトだ、と繰り返していた。手を振る方が理にかなっているけれど、忍耐強く店員が気づくのを待つんだ、と。
これは真面目な情報らしかった。サンキュー、ジミー。
2時間半ほどでカルガリーに到着し、無事に荷物も全て出て来た。
ティナが迎えに来てくれる都合上、わざわざ一度予約したフライトを変更して早めたのに、結局2時間以上遅れたため、変更手続きにかかった料金も無駄になり、その上ティナのお母さんに迎えに来てもらうことになり、何重にも手間がかかった。
北米の航空会社っておおむねこうだから困る。
ちなみに今回はウェストジェット航空だった。
ティナの家に泊めてもらうのは今回が3回目。1回目は2013年のミスしゃっくりのとき。2回目は2015年だったが、実はこの年は私はカルガリーフリンジの抽選には落選しており、フリンジには参加していなかったものの、その空白の期間にただ単に滞在場所を求めてティナの家に泊めてもらっていた。
9年ぶりに再びここに滞在させてもらう。
ティナのお母さんのキャロルともいろんな近況を報告し合う。
そしてティナのお友達のバースデイパーティが行われているBBQレストランへ。
ティナとキャロル。忙しい中ありがとう。
ティナが注文しておいてくれたBBQセット。見よ、この肉の量!
なんとティナが全部ごちそうしてくれた。ありがとう…!
ティナが用意してくれていた立派なエアマットレスでバタリと寝る。
初めて来た年には、朝起きるたびにマットレスがペチャンコになって床にくっついており、そりゃもう苦労したものだし、wifiのパスワードを調べるのにティナが何時間もかけてくれたりと、いろんな出来事があった。そして素晴らしい思い出もたくさんある。
よかったら2013年の8月の小心記をお読みくださいませ。
ティナと猫のブランチ。前にいた猫たちは天国に旅立ったそうだ。
翌日には我がベニューであるAlexandra Centreへ行き、同じBYOVの仲間であるポール、エリカ、そしてジミーたちとともに照明や音響や客席の仕込みをしていった。
通常のフリンジではBYOVだとしても劇場のスタッフが仕込みをしてくれるのだが、ここは劇場ですらなくただの「部屋」なので、機材は何もなかった。
ポールたちがツアーで持ち運んでいる自前の照明音響機材を親切にも共有してくれたのだ。
ありがとう、ありがとう。いつもありがとう。
実はポールはストーリーテリングとギターと歌、そしてジミーもストーリーテリングのため、彼らは照明も音響もほとんど必要ないのだ。
にもかかわらず「ヤノミの人形劇には照明とか暗幕とか必要だろ?」ということで、わざわざテクリハの前日にこの仕込み日を提案し、みんなで協力してくれたのだ。
カルガリーフリンジのテクニカルディレクターであるトーマスと、プロデューサーであるミッシェルも立ち会ってくれたし、フリンジが見つけてくれた私の演目のためだけのテク、デイブも来てくれた。
ここでは参加費と別にテクにも人件費を支払わなくてはならない。でも他のフリンジよりも参加費がかなり低いので助かっている。
デイブとは初対面だが、とても優しくて朗らかで、仕事もキッチリしてそうだ。頼もしい。
こちらがデイブ。よろしくね!
デイブとトーマス。
別の劇場で上演する仲良しのアーティストの一人ブルースもアメリカから車で何日もかけて到着し、この仕込みのあいだあれこれ愉快に賑やかしてくれた。
「ヤノミの舞台監督の僕としては、ポールはクビだな!」とかなんとか冗談を言いながら、我々の仕込みを冷やかしていた。
オーランドで2012年に上演した、おさらスープ(ヤノミと、to R mansionの上の空はなび、野崎夏世によるスペシャルユニット)の「My Exploding Family」を中学生くらいの頃に観てくれたという彼。それが忘れられない舞台だそうで、「自分が憧れたアーティストと、今こうして友達になれるなんて、ほんとうに光栄なことだよ。」と言って、みんなを感動させていた。
今ではブルースも大人気のアーティストで、オーランドにとっても各地のフリンジにとっても欠かせない存在になっている。
うれしいねえ。しみじみと。
ジミーはのちに私に「お前はただ仕込みを見ていただけだろ、俺がお前のために必死に汗水たらして働いてやったんだ!俺は照明なんぞ要らないのに!」と毒舌ジョークを吐いていた。
みんなでお茶していろいろ話す。私はウィニペグでの観客の反応を踏まえて、ショーの内容を少しアレンジしようかと考えてみんなにも相談してみた。
みんな親身になっていろいろな意見やアドバイスをくれた。
帰りはブルースが車で送ってくれた。ティナの家はフリンジエリアからバスを2本乗り継いでおよそ1時間くらいのところにある。
これはブルースと一緒に舞台をやっているアミカの車。凄まじくアーティスティック。
アミカもまた昨年からぐんと親しくなった天才アーティスト。道中にコロナに感染して回復中。
さらに翌日にはフリンジにチェックインし、ステイプルズでポスターを印刷し、劇場やお店などにポスターを貼り、バスのチケットを購入し、スーパーで買い出しをし、あれやこれやと雑用をこなしていく。
それらの全てにティナが車を出してつきあってくれた。
夕方からのテクリハにも車で送ってくれた。荷物が多いので非常に助かった。
ティナはいくつもの仕事を掛け持ちしており、常に忙しい。にもかかわらず私のために時間を割いてくれたのだ。ありがとう、ティナ。
ほんとうはゴルフの予定もキャンセルして、私と遊びに行こうかなと思っていたらしいのだが、「あら、あなた忙しいのね、遊ぶ暇なさそう。ゴルフキャンセルしなきゃよかった。」とぼやいていた。ごめんねごめんね。
「いいのよ、今日暑いし、ちょっとは休む時間が必要だったから。」
でもティナの大好きなホラー映画を観る会は、滞在中に必ずやろうと約束する。
ティナは料理上手だが意外なことに料理は好きではないらしく、忙しすぎて最近は全然料理をする暇がないという。それでも、冷蔵庫いっぱいにいろんなものを準備してくれて「ビールもあるし、お茶も、トーフも、ここにあるものなんでも自由に使って食べていいから。」と言ってくれる。
マンションも私のために掃除してくれていた。
短い滞在の私に、いろいろな提案をしてくれている。動物園もあるよ、カルガリーの歴史が再現されているテーマパークもあるよ、これもあるよ、と。
かつては有名な観光地であるバンフにも連れていってくれた。
フリンジアーティストというのは、他の人たちが想像する以上にめちゃくちゃ忙しく、各地で舞台に立ちながら常に次のフリンジの準備をし、連日連夜働いている。
だがはたから見ればやはりアーティストというのは気楽に遊んでいるようにも見える場合が多い。そして、そう見えるのが仕事の一部でもある。
そして私がどんなに働いているかよく知っているビレットの家族たちは、それでもなお、せっかく遠く日本から来たのだからと、地元の楽しさを伝えようと心を配ってくれるのだ。
遊ぶことが苦手な私だけど、クロアチアでもブルガリアでもウィニペグでも、地元の家族や友達たちの提案にはできる限り乗るようにしている。
体力のつづく限り。
ジョン・ベネットとブレア。ブレアはウィニペグからの道中、車がぶっ壊れて大変な目に遭いながらようやくカルガリーに辿り着いた。
テクリハの後、近くのパブでジョン・ベネット、ジミー、ブレアと飲む。
その後、フリンジの歓迎パーティに参加する。
大好きなクラウンでマジシャンのジェームズ・ジョーダンとも再会!うれしい!
プロデューサーであるミッシェルの「影(アシスタント)」を務めているという若い女の子たち。ユニフォームも素敵。
アーティストたちで賑やか。地元のカンパニーも、ツアーアーティストも、スタッフたちも。
さらにその後、あるゲイバーでアミカとブルースがキャバレーショーをやるというので、ジョン・ベネットとジミーと3人で観に行った。
ウーバー(個人タクシー)の運転手はピカピカの新車でやってきて、「あなたたちがこの新車に乗せる最初の客だよ。」と言った。
おお、幸先が良さそう!
アミカとブルースのショーはエドモントンでも上演予定の「牛」にまつわるショー(キャバレーならぬカウバレー!)で、ものすごく面白かった。私はこのショーにエドモントンで一夜限りゲスト出演する予定になっている。ドキドキ。ネタを考えなくては。
ジョン・ベネットがいつもの穏やかでマイペースな口調でにこにこしながら言う。
「いつも金のことばっか考えて、金のためにフリンジやってる奴らも中にはいるけど、こういう真の面白さこそがフリンジなんだよなあ。こいつらみたいにクリエイティブなアーティストは、基本的に金とかどうでもよくて、とにかく新しくて面白いことをやってるから、俺は大好き。ヤノミもそう。」
とてもいい夜だった。
帰りは病み上がりのアミカが車でみんなを順番に送ってくれた。
「疲れているし病み上がりなのにごめんね。」と言うと、「いろんな人たちがこれまでに私を車で送ってくれたし、私も同じようにしてるだけ。気にしなくていいよ。」と。
北米で乗る友達たちの車のフロントガラスは、たいていボコボコに割れていたり、ヒビが入っていたりする。
みんな気にしていない。
北米ではずいぶん前からジェンダーについての三人称の選択肢が「彼 he/him」「彼女 she/her」「彼ら they/them」の3つあり、アミカは「彼ら」を選んでいる。
出会った頃は「彼女」だったため、今も私は時折間違えてしまうが、できるだけ慎重にこの三人称を遣うように努めている。
敬愛してやまない素晴らしいアーティスト仲間たち、信頼できるスタッフたち、そして愛するビレットの家族たち。
カルガリーでの日々が豊かに始まっている。
これまでにもたくさんの猫や犬や鳥たちと暮らして来たが、ブランチとも仲良くなれた。
ヤノミ
タミーのおもてなし
ウィニペグでの最終日、7月29日。月曜日なので早朝からアリーはオンライン会議に追われ、タミーも朝から大忙し。娘たちや家の世話をし、犬たちの面倒を見て、心理セラピストとして多くのクライアントを抱え、家の裏庭のリフォームをし、湖のコテージのメンテナンスをし、とにかくもう四六時中働いている。
私は荷造りなどをしていたが、急遽エドモントンのCBCラジオからインタビューが入って、いろいろな経緯を経てビデオインタビューとなった。どうやらラジオとテレビとウェブで放送されるらしい!ありがたい。
デジャがいて、インタビューの最中もマネージャーのように見守ってくれて、終わるととても褒めてくれたのち、いくつかアドバイスまでくれた。賢い18歳だ。ありがとう、デジャ!
CBCのインタビューを受けたことを、家族みんなが喜んでくれた。
夕方過ぎに、仕事を終えたタミーが帰ってくると、「すぐ戻るから!」とまた出かけていった。
キーラはタミーに指示されて料理に取り掛かっている。
そしてタミーがたくさんの物を抱えて戻ってきた。
なんと、お寿司、天ぷら、刺身、餃子、枝豆まで!お気に入りの日本食のお店でテイクアウトしてくれたのだ。
そしてキーラが手間をかけて作った、ナチョス!
今日は犬のオーデンとルナの誕生日。そして私のお別れパーティーを兼ねて、盛大にごちそうを用意してくれたのだ。
「この看板を持ってそこに立って。写真撮り終わったら見ていいから。」と謎の看板を持たされてチーズ。
「今夜飲むところを探しているのなら、まさにここだ!」
わざわざこのビンテージっぽい看板を買ったタミー。楽しいことを作り出すプロ。
アリーの息子さんと彼女もやって来て、家は賑やか。
何もかもとても美味しくて、みんないっぱい食べた。
私がいつか「お寿司より刺身が好き。」と言っていたのを覚えていて、タミーがわざわざ私のためにと刺身も買って来てくれたそうだ。なんという濃やかな思いやりだろう。
そして今日もワインをいっぱい飲ませてくれた。うれしいなあ。
オーデンとルナも特別なおやつにキャンドルを立ててもらい、みんなでバースデイソングを歌ってお祝いした。
そして私にもプレゼントが!
みんなが暑い暑いと言う中、いつでもパーカーを着て震えている私のために、新しいあったかいパーカー!しかも「ウィニペグが大好き」のロゴつき。
のちに知ったことには、このパーカーはローカルの個人店で売っているもので、タミーが「このパーカーを着てあちこちで写真を撮って送ってくれない?きっとこの店のオーナーが、自分のパーカーが世界中を旅していると知ったら喜ぶと思うから。」と連絡をくれた。
あったかいパーカー。
これがきっとこの先の私を護ってくれることだろう。
ウィニペグに来てすぐの頃に作ったあのイチゴジャムも、ちゃんとラベルをつけてプレゼントにくれた。
「ホーボーヒルトン最高級イチゴジャム2024」
ありがとう、タミー。ありがとう、みんな。私は一人ひとりにハグをして回った。
そしてリビングに移動して、カラオケ大会が始まった。
真冬にはマイナス40度にもなるというウィニペグ。リビングにはモダンな電子暖炉もあるし、カラオケマシンまであるのだ。
みんなで次々に歌を歌った。ラケルは人生初のカラオケで、歌わずにみんなを観ていた。
タミーは途中もずっと、私が楽しんでいるかどうか、さりげなく気にして目を配ってくれていた。グラスが空くとすぐにタミーがワインを注いでくれた。
なんというおもてなしだろう。
姉妹によるデュエット。主にラップ。
シオとオーデンかな?
母娘デュエット。
父と息子デュエット。
母娘デュエット。お気に入りの写真。
どんなにお礼を言っても言い足りない。どんなに恩返ししてもしきれない。
ありがとう、ホーボーヒルトンの家族たち。この先どんなにみんなのことを恋しく思うだろう。
ありがとう、ありがとう、ありがとう。
Love you so much!
ヤノミ
落ち込んだりもしたけれど
ついに11ステージ全てをやり遂げた!
ほんの数週間前にはクロアチアやブルガリアにいたというのに、もう3ヶ月くらい経ったような気がする。ものすごく濃い日々だ。
テクのキースが本番中に撮ってくれた写真。
観客が書き込むフリンジの口コミページに、いくつか悪い感想が上がっているのを発見し、落ち込んだりもしたけれど、私は元気です。(魔女の宅急便)
なぜならまたまたタミーやキースが励ましてくれたから。
「楽日までソールドアウト出して、5ツ星もらって、こんなにたくさんのお客さんが毎日あなたのショーを絶賛しているのに、こんなちょっとの悪い感想を気にするっての?こんなのクソ喰らえよ!無視無視!」とタミー。
そうなんだよ、頭ではわかっているけれど、99%の好評価と同等に1%の悪評に傷つくのがアーティストというものなんだよ。わかってはいるけれど。
そしてせっかくお金を払って観に来てくれたその観客たちを満足させることができなかったことに、とても申し訳なくも感じるのだ。ごめんなさい。
私を元気づけようとタミーが買ってきてくれた、カナダ名物のスラッピー。これはドクターペッパー味だけど、いろいろ種類があり、何しろソーダを凍らせた飲みもの。ウィニペグはなんとこのスラッピーの消費量がカナダで一番多いのだとか。
「スラッピーの首都へようこそ!」とタミー。
バス停から見上げた美しい空。
バーテンダーのアネイエスが毎日絵を描いており、日に日に仲良くなったので、日本から持って来ていたお土産の筆ペンをプレゼントした。
すると彼女はとても感激して、翌日にこの絵をプレゼントしてくれた。
筆ペンで描いた絵に、色鉛筆で彩色している。桜と鯉かな?
私がとても感激してお礼を言うと、アネイエスは「あなたがこの筆ペンをくれたから、この絵が出来たのよ!あなたがいなかったらこれを作れていなかったんだよ。」と言った。
ずいぶん歳の離れた若い友達。バーテンダーである彼女は私の舞台を一度も観ることはできなかったけれど、毎日毎日「今日はどうだった?今日はどの赤ずきんちゃんをやったの?」と話を聴いてくれた。
またきっと、会えるだろう。
そしてこちらはキーラが作り上げた、オリジナルライターケース!
暗闇でこの目が光るんだよ〜〜〜。世界にただ一つのライターケース。
何日も何日もかけて作ってくれたこのアート作品に、私はお金を支払った。キーラは断ったが、アーティストはちゃんとお金を受け取るべきだし、これは私のショーのチケットと同額だからフェアでしょ、と説明して渡した。
彼らにもエドモントンで出会ったような気がする。
土曜にはジョアンナの紹介でアルという名の男性が本番中の写真撮影に来てくれた。
そして日曜にはあのおしゃべり大好き男、グラハムが動画の撮影に来てくれた。とても気のいいおしゃべりおじさんは、ちゃんと早めに来て私にいろいろ確認し、真剣に撮影してくれていた。
私が小道具のプリセットをし始めると、「静かにするよ、集中できるように。」と黙っていたのもかわいらしかった。仲良くなれてよかったなあ。
写真も動画も楽しみだ。
赤ずきんちゃんのとあるシーンでは、7歳くらいの女の子が笑い転げていて、そりゃもう面白かった。終演後には毎回いろんな人が話しかけてくれて、とある老婦人は「素晴らしかったわ。あなたの人形たちは「私たち」よ。本当に…。とても寛大で美しい作品でした。」と言ってくれた。
すごくうれしい感想だった。ありがとうございます。
今年は何人か日本人のお客さんもちらほらお越しくださり、さらにはチケット買おうと思ったらすでにソールドアウトしていたと、わざわざメールをくださった日本人の方もいた。
昨年のシンシナティに比べると毎日ではなかったが、時おりスタンディングオベーションもいただいた。
楽日、片付けをしてキースとハグをして、迎えに来てくれたタミーの車に全ての荷物を積む。キースと仕事ができてよかった。毎回毎回、いろんなアドバイスをくれたり、感想をくれたり、赤ずきんちゃんの投票の際には挙手までしてくれるキース。
こんなテクもなかなかいるものじゃない。ほんとうにありがとう、キース。
彼と仕事ができて幸運だった。
キングスヘッドで友達たちと楽日を祝って乾杯する。
クリスがまたしてもビールをごちそうしてくれた。そしてまゆみちゃんとグレッグもビールや食事をごちそうしてくれた。ありがとう!
2杯引っ掛けてから、Jenny Awardの会場へ。
隣にいるのがグレッグとまゆみちゃん。バンクーバーから駆けつけてくれている。
2010年に出会って以来ずっと応援してくれている、ベテランのフリンジファン夫妻。
ウィニペグフリンジでは他のフリンジのようにちゃんとしたアワード(授賞式)はないものの、このジェニーアワードが開催される。
18ものカテゴリーが用意され、そこにノミネートされた作品のタイトルを司会者が発表し、それに対する観客の拍手と歓声の大きさでその場で受賞者を決めるというもの。基本的にはジョークのアワードでもある。
さらに、ジェニーアワードのレビュー(劇評)がもらえた作品のみがノミネートされるので、150作品全てが対象となるわけですらない。
カテゴリーの例としては、「タイトルに数字が入っている作品」とか、「セクシーな作品」とか、もういろいろ。こじつけみたいなものまである。
数百人が集うなか、会場の数カ所にこのような審査員が立っていて、自分の耳で歓声の大きさを測ってこのように得点を掲げる。めっちゃアナログ。騒音計とかで測るわけじゃなく人力なところがまた最高。
あまりに熱心に仕事しているので、この審査員にもビールをごちそうした。
観客もアーティストもビレットも、みんなそれぞれに好きだった作品のタイトルが上がるたびに可能な限りの大歓声をあげ、テーブルを叩き、足を踏み鳴らした。
大阪のシアターガンボが、大歓声を勝ち取り「最もセクシーでしたで賞」を受賞した。
おめでとう〜!!!
この手作りのロバが、ジェニーアワードの証。兄であるマーティンも勝ち取っていた。
Hppy Go Luckyもノミネートされていたが、カテゴリーもよくわからないままだった。ロバは残念ながら逃した。
グラハムと。
まゆみちゃんもガンボもいて、久しぶりに日本人と一緒に飲めて安心したのか、あるいは2週間11ステージをやり遂げた喜びからか、とにかく私はものすごくワインを飲んで、ものすごく酔っ払った。とにかく楽しい一夜だった。
海外ではいつも緊張しているため深酒もできないし、いつもスケジュールに追われているため、こんなに酔っ払うことも珍しかった。
ま、たまにはいっか!
まゆみちゃん夫妻の友達であるケビン夫妻の車で無事に送ってもらえたのだが、玄関にある防犯カメラで私の酔っ払いようを目撃したというキーラは、翌朝ゲラゲラ笑っていた。私は玄関の鍵の暗証番号を思い出せず、スマホで番号を確認していたらしい。
ほんと、お恥ずかしい限りですぅ。
でもま、たまにはいっか!
ともかく走りきった11ステージ!2週間!
そして13本の作品を観た。リストは以下。
1,000 Pieces of π
Sidetrack Bandits
ParaNoma PI
Ingi's Fingies
Bangs, Bobs, & Banter: Confessions of a Hairstylist
Funny Answers to Your Sex Questions
Super Funtimes Magic!
Shadow Necropolis
Shunga Alert
Bloodline
Nuclear Family
New Wave Your Behaviour
Nuit
特にこのNuitが素晴らしかった。20代と思われる若い女性アーティストたちによる、エネルギーあふれる最高にフリンジらしい作品だった。
いろんな作品を観て、改めてまたまたインスパイアされた。
ありがとう、フリンジ。
ありがとう、ウィニペグ。
人生最高の興行となりました。
引き続き、がんばる。
ヤノミ
フラッシュライト・キャバレー
寝る暇もないくらい、怒涛の日々が続いている。うっかりすると食べる暇もないくらいだ。
今年はBYOVのため私は11ステージをやっており、実質的には2週間のあいだオフが一日もない。通常なら7ステージなので、体感としては倍のステージ数だ。
クロアチアから持ち歩いているミスしゃっくりの道具を国際郵便で日本に送り返したり、次のカルガリー行きのフライトを予約したり、カルガリーのみならず、エドモントンの、そしてバンクーバーの、フライヤーやポスターの情報をまとめて亜澄ちゃんとやり取りしたり。
日本からも次々とメールやLINEで連絡が来るので、その対応をしたり。
一つのフリンジで11ステージをやりつつ、同時進行で次の次の次のことをやっていかなくてはならない。
そしてせっかく大好きなフリンジに来ているのだから、できる限り観劇したい。
世界中から来ている、素晴らしいアーティストたちのショーを観たい。
そんなわけで多いときは1日に3作品ほどを観ている。そして自分の本番もやっている。
天才アーティスト、イングリッド。ものすごい天才。2010年以来ずっと、彼女の大ファンだ。
今年もすごい人形劇をやっていた。圧巻。
今朝は盛大に両足がこむら返りした。明らかに疲れが…。睡眠が足りていない。
だが、週のはじめの頃には早くもHappy Go Luckyの千秋楽までの全ての公演がソールドアウトしたと発表され、ついにフライヤーを配ったり宣伝をして歩くことから解放された。
これはものすごく大きなことだった。フリンジアーティストの最大の苦労は宣伝にあるわけで、フライヤリング(劇場ロビーやフリンジエリアにて、一人ひとりの観客にフライヤーを手渡ししつつ作品について話し、宣伝すること)こそが我々にとって最も苦痛で、最も労力を要する仕事なのだ。
そのことからこれほど早い段階で解放されたのも、もちろん人生初のことだ。
夢だったソールドアウト。ALL SHOWS!!
バンクーバーからフリンジのために来たというベテランのフリンジファン、トムとも出会った。
フリンジの人々が集うメインパブ、King's Headにてビールをごちそうしてくれた。
彼の観劇の予定表は、なんと1日7本もの予定でびっしり!
こういうファンがフリンジを支えてくれている。
素晴らしきマジシャンでクラウンのクリス。彼もまたビールをごちそうしてくれた。ありがとう!
フリンジアーティストが続々と集まって、この日はカラオケナイト。
すっかり声が戻った兄、マーティンと、同じくフリンジの大スターの一人、ジョン・ベネット。昨年のシンシナティではジョンのストーリーテリングのワークショップを受けて、私は人生初のストーリーテリングをシンシナティのスペシャルイベントで行った。
毎年毎年、新しい挑戦を続け、毎年何かしらの学びがある。
それらは全て、私の人生の糧となっている。
今年、あちこちのフリンジで一緒の劇場をともにするジミー。愉快な男。
キーラが作ってくれたハンバーグ。ちゃんと私の分を取っておいてくれたよ。ありがとう!
素晴らしき友人、ジョアンナ。10役を演じる一人芝居。彼女は毎回自分のカーテンコールでも私の作品の宣伝をしてくれた。
私の劇場の外にある屋外パブのバーテンダーとジョアンナ。
フリンジで最も大好きなイベント、フラッシュライト・キャバレーに今年のウィニペグではジョアンナとコラボショーをやることになり、その打ち合わせや稽古をした。
これは20年ほど前に、フリンジのレジェンドと呼ばれるジェム・ロールズが他のアーティストとともに始めたイベントで、各地のフリンジで伝統となっているもの。
期間中の一夜限り開催される特別なキャバレーショーで、観客は懐中電灯を持ち込み、劇場の照明は全て消され、無数の懐中電灯の明かりのみでショーが行われる。
アーティストたちは自分の通常の作品とは全く別のピースを3分から5分ほどで次々と披露していく。一夜限りのコラボも多数あり、ステージに限らず、客席であったりステージ脇であったり、さまざまな場所でランダムにパフォーマンスが始まる。
司会者はおらず、次々と突然始まるパフォーマンスに合わせて、観客の懐中電灯が一斉にそちらを照らすのだ。もちろんプログラムは事前に出演者のあいだで共有されており、我々は出番を理解している。音響のキューも最小限に絞られており、ほとんどの演目は音響なしの生声あるいはマイクで行われる。
このキャバレーショーこそ、フリンジのスピリットであり、アーティストたちは忙しい日々の合間をぬってこの夜のために特別な準備をする。出演者へのギャラは発生しないのだが、チケットは有料でどこのフリンジでもおおむねソールドアウトする人気のイベントだ。
私とジョアンナも何度もアイディアを出し合い、ネタ合わせを重ね、小道具を用意した。
タミーのダイニングに飾られた紫陽花。友人からのプレゼントだという。ウィニペグでは白い紫陽花がほとんどで、青いものは珍しい。
タミーが作ってくれたオムレツの朝ごはん。ありがとう、タミー。
うちの劇場のバーテンダー、アネイエスが描いた絵。窓の外に見える木と、彼女の想像による風景画。
実際の木。
悪友のジョン・マイケル。本番前に全力でアップする彼の姿。
5ツ星の劇評が出たにもかかわらず、集客が伸びずに非常に苦悶しているジョン・マイケル。
作品の良し悪しと集客は必ずしも比例しないところが、ショービズの恐ろしいところでもある。私もずっとずっと長年この苦悶を味わっているので、気持ちがよくわかる。
いつも乗っているバス。
帰り道にある立派な建物。
タミーの家の紫陽花。
タミーが作ってくれた素晴らしきディナー。深夜11時とかに帰って来る私のために、いつもちゃんと残しておいてくれている。
タミーの結婚式の時に作ったという特別なワイン。
タミーとアリーの名前と日付入り。
キッズフリンジのエリア。
フリンジパークと呼ばれる広場では、毎日野外ステージにて音楽ライブや大道芸などが行われ、フリンジを盛り上げている。司会の男性は私が2010年に来たときにもいて、海賊の衣装を着て元気よく進行している。
LA在住のパリスによるソロ作品、Bloodlineは素晴らしいものだった。開演前のステージ。
日本の演劇界では舞台上にバミリと呼ばれる蓄光テープを貼る際に、できる限り小さく、観客から見えにくいように最小限の数にするのが良しとされる。バミリがあまりに多いと、「星空かよ!」と演出家が怒ることさえある。
しかし北米フリンジで見るバミリは、そりゃもうでっかくて、「これで絶対間違えないよね〜!」と言わんばかりの大らかさ。同じ劇場をいくつものカンパニーがシェアするため、各作品ごとにバミリテープの色を変えてあり、色とりどりのカラフルな星空が広がっている。
私はこの光景も嫌いじゃない。なんだか微笑ましくて、愛おしい。
木曜には日本のカルチャーセンターにもお邪魔した。
先週、私のショーを観にきてくれた日本人ののりこさんが、ここで毎週踊りを教えているというのでクラスに案内してくれたのだ。
浴衣を着て河内男節を練習する日系カナダ人の女性たち。みんなカナダで生まれたそうで、日本語はほとんど話せない。
カナダに移住した日本人の歴史を伝える絵画。
8月に開催されるというフォークロラマという他民族文化のフェスティバルに向けて、子どもたちも練習中。
さまざまな年代の日系カナダ人の皆さん。とても素敵だった。
フラッシュライト・キャバレーに向かうジョアンナの耳には、私が贈った折り鶴のピアス。
出番を待つ楽屋の様子。みんな真剣そのもの。アーティストのプライドをかけて全力でくだらないネタに挑む。
オムツ姿の男性アーティストたち。腹抱えて笑った。
懐中電灯のみで照らされる、キャバレーの会場。満席。
私とジョアンナは客席から登場し、ステージでネタを終えるプラン。
大成功!
自分の用意したピースのみならず、他のグループからも声をかけられて参加する。
今年は2ツ星などの酷い劇評が多く出たらしく、それらをもらったアーティストたちは怒りと失望と悔しさでいっぱいになっていた。しかしそれで終わらないのがフリンジアーティストたちの素晴らしいところ。彼らはその理不尽さをネタにして、一つのショーを作り上げたのだ。
私は5ツ星をもらったアーティストとしてそのネタに加わり、2ツ星のみんなから「出て行け!!!」と怒鳴られる役。
面白いネタ、美しい演目、くだらないピース。全裸になるアーティスト、半裸になる者、セクシャルなネタやクィアと呼ばれる性的マイノリティをテーマにした演目。歌、影絵、詩、スタンダップ、無言劇。今年はやたらと多かったマジシャンたちが一堂に会し、一斉に客席から現れて同時にあちこちでマジックを披露し、誰が一番人気なのか争うという演目もあった。めちゃくちゃ面白かった。
舞台袖や客席や通路からそれらのショーを眺めつつ、私は幸せでいっぱいだった。
こんなクリエイティブで平和な場が、フリンジにはある。
世界中のアーティストたちが、同じ時間、同じ劇場で、お金のためでもなくただひたすら面白いこと、美しいことをやっている。初めて出会った者同士でさえ、今夜限りのコラボをやり、互いの背中や肩を叩いては讃えあい、ハグを交わし、笑い合い、ジョークを言い合う。
私とジョアンナが行った演目の後、休憩中にも客席ではずっと、我々がばら撒いた小道具の風船がいくつもいくつも観客のあいだを行き来して飛び跳ねていた。
フィナーレでは紙でできたいくつかの提灯が暗闇の中を漂い、呼吸を始めた。そして全出演アーティストたちが客席からステージから登場して、より多くの提灯の明かりをふわふわと動かした。劇場全体がアートの光に包まれた。
客席からは鳴り止まぬ拍手と歓声が送られた。
私は、フリンジが好きだ。
このスピリットこそが、私がずっと愛してやまないものだ。
全てのボーダーを超える、シアターの力。
生身のアーティストと生身の観客と生身のスタッフで作り上げる、この世のファンタジー。
そこには人間の希望と、生きる力がある。
まだ、ある。いっぱい、ある。
ヤノミ
5ツ星レビュー!!!
日曜日、タミーたちが帰ってきた!
そしてアリーも昨夜に出張から帰ってきた!
3人でビレット感謝パーティに出かける。
フリンジが開催してくれたビレット・グリーティングというもので、アーティストを受け入れてくれるホームステイ先のファミリーとアーティストを招いて、ドリンクチケットと食券とスナックが振る舞われた。
フリンジパークで乾杯!
インド料理の屋台でチキンカレーなどを食券で買った。
いつも忙しいふたりと、久しぶりにゆっくり話せてうれしい。
大好きなシャロンとクリスにも再会!
シャロンは2010年のツアー以来、これまた何度も私を助けてくれた大事な友達。素晴らしく才能あふれる優しくて聡明な女性。
クリスも10年以上前に出会ったフリンジアーティスト。
うれしいなあ、うれしいなあ!
タミーたちが車で劇場まで送ってくれた。
私がバスの7デイズパスを新たに買わなくちゃと心配していたら、タミーがコインを差し出して、「とりあえず今日の帰りの分。」と言うではないか。
いやいや、小銭も持っているし、パスは今日まで有効だから、大丈夫だよ!
なんという優しさ。
お母さんか!!
ありがとう、タミー。何もかも。
日曜の3時。今日も満席!
全力で感謝を込めて、大事に丁寧に上演する。
客席はとても盛り上がり、子どもたちも大活躍し、良い回になった。
そして終演後、私と同じ劇場で2本の作品を観劇。
Sidetrack Bandits Sketch Comedyは、7名ほどの役者たちによるコメディ。
スケッチコメディというのは、ショートコント的な短いコメディ。若者たちによる馬鹿馬鹿しくも楽しいコメディだった。そして歌がうまい。
もう1本はParaNormal PI。ヒラリーという女性アーティストによるソロショー。
ものすごく!フリンジらしい、とてもイカれたコメディで、私は大好きだった。
たった一人で舞台に立ち、全身全霊でしょうもないことをやって暴れ回り、観客を巻き込んで笑わせる。とてつもない勇気と、体力と技術。精神力だ。
そして彼女の演技は自信に溢れていて、かっこよかった。
ジョアンナからメッセージが届く。
「おめでとう!素晴らしいレビューだね。まさしくふさわしい!」
見ると、ウィニペグのメインメディアの一つであるWinnipeg Free Pressからついにレビュー(劇評)が出ていた。
なんと、5ツ星!!!
各地のフリンジでもほんのひと握りの作品にしか出ない、正真正銘の5ツ星。
これは滅多にないすごいことだ…!
人生で一度しかもらったことがない。それも10年以上前のことだ。
以下、劇評の日本語訳。
東京のヤノミ・小心ズは、この面白くて、感動的で、まったく不思議なソロ人形劇の巨匠である。照明が戻った後もずっと心に残る作品だ。
60分の公演は、小心ズが創作・操作する魅力的な人形キャラクターを主役にした短編で構成されている。機転の利かない正直さは残酷かもしれないが、甘ったるい偽りの顔もまた信用できないことを教えてくれる二つの顔を持つ女性、小心ズの口によって頭を操作され、彼女の手によってマレットの足を操作される木琴を弾く小さな精霊、そしてミニチュアの舞台に立ち「私は有名人です!」と自己紹介する2024年にアップデートされた赤ずきんちゃん。
ショー全体を通して小心ズの姿は見えるが、彼女がそこにいることを忘れてしまいそうになるのは、彼女の生き生きとした、完全に実現されたキャラクターと熟練した人形劇の証だ。しかし、最後の登場人物、愛する人の思い出を静かに偲ぶ老女は、本当に特別なものを目撃したような気分にさせてくれる。
★★★★★
なんという素晴らしいレビュー。ものすごく丁寧に観て、めちゃくちゃ誉めてくれているではないか!!!
過去にひどいレビューが出て泣いたことさえある私。
レビューというのはアーティストにとって大きな影響があり、集客にも関わる上に、何よりもメンタルに関わる。
実際、ジョアンナにはひどいレビューが出たらしく、彼女は落ち込んで怒ってもいた。
その後、アーティストラウンジで合流したたくさんのアーティストたちも、口々にまだレビューが出ないだとか、誰それにひどいのが出たとか、それはもう真剣に話していた。
私は5ツ星をもらったことをついに最後まで誰にも言い出せなかった。
悪友のジョーン・マイケルにも5ツ星が出たそうで、彼は泣き出さんばかりに感激していた。実際の彼の人生に起こった大変な出来事、トラウマを作品にして上演し、文字通り人生を懸けて舞台に立ち続けているジョーン・マイケル。
自分のショーを通じて、社会問題にも立ち向かっている姿に、いつも尊敬を覚える。
よかったね、ジョーン・マイケル。
今夜も空に真っ赤な満月が大きく大きく輝いている。
エリカ、ポール、パリス、リバ、ショーン、スティーブンと一緒に、パブで食事をしながら飲む。政治の話、舞台の話、自分たちの仕事の話、フリンジの話。
ポールとエリカはいつでもそっと私を振り返り、私が会話について行けているかどうかさりげなく気にしてくれている。どんな時も優しい彼ら。
普段、子どもたちに演劇を教えているというパリスの話もとても面白かったし、ダイバーシティについて何かの研究をしているというショーンのものの見方もとても素晴らしかった。
新しい出会いがたくさんあり、たくさんの刺激がある。
みんなそれぞれが命を懸けて舞台に立っている。
今日もバスにはさまざまな人種の、さまざまな人たちが乗っていた。
ドラッグ問題も深刻なウィニペグでは、車内で突然運転手に怒鳴り始める人や、喧嘩を始める人や、危うげな人も少なくない。
だがしかし、降りるときにほとんどの乗客は運転手に「ありがとう」と言う。
私も毎回必ず言う。
運転手は「良い夜を。」と返してくれた。
これまでの17年間、どんなに辛い時も応援し、支え続けてくれたたくさんの友人や家族に、改めて心から感謝します。
人生最良のフリンジと言って差し支えないだろう。
これからもこつこつと恩返しして行きます。
ヤノミ