士業・法務担当者のための登記パートナー
司法書士・行政書士の大越です。
既にみなさんご存知かもしれませんが、
平成27年5月1日付で改正会社法がいよいよスタートです!
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00151.html
(法務省の該当頁)
主に上場会社向けの改正であるため、
今日明日で何か対応をしなければいけない
事項というのは、原則としてありません。
改正内容も多岐に亘りますが、
主に中小ベンチャー企業の登記手続にも影響のある事項を
念のためいくつか案内しておきますので、
士業の方であれば顧問先・クライアント
会社の法務・総務担当者の方であれば自社又は
自社のグループ企業で影響がありそうな事項
がある場合には、ご留意ください。
これ以外にも改正事項は多数ありますので、
何か疑問点がある場合には、
お気軽に私までご相談ください。
<登記手続に影響のある主な変更点と概要>
①監査役の監査権限につき、「会計監査に限定する」旨の
定款規定が登記事項になった。
*現在、多くの中小・ベンチャー企業では、
監査役の監査権限につき、「会計監査に限定する」旨の
定款規定(会社法389条)を定めています。
当該定款規定を定めることにより、
監査役が取締役会への出席義務がなくなるなど、便利だからです。
但し、現在では、当該定款規定は登記事項ではないため、
登記簿謄本からは、当該定款規定があるかどうかの
区別かつかず、不便でした。
この点の改正があり、登記事項となりました。
*既存の会社には経過措置があり、改正時点で
当該定款規定を定めている会社であっても、
改正後、監査役の就任等の変更登記を行うまでは、
当該定款規定に関する変更登記を行う必要がありません。
したがって、原則として、改正後に監査役の任期満了等
による変更登記を行う段と併せて、当該定款規定の
変更登記申請をすれば足ります
(積極的に変更登記申請することは自由です。)。
②募集株式発行・新株予約権発行
(以下「株式発行等」という。)につき、
総数引受契約方式を利用した場合であっても、
原則として、総数引受契約に関する会社の承認が必要となり、
当該議事録の添付が必要になった。
*現在、譲渡制限規定のある非公開会社が、
株式発行等を行う場合、株主総会時点で割当先・付与先
が確定していることがほとんどなので、募集事項の通知等
を省略できる総数引受契約方式を採用して
手続を行うことが多いです(会社法205条・244条)。
この場合、割当手続が不要となり、割当者決定に関する
議事録(取締役会設置会社の場合は取締役会議事録)
の添付が不要となり、登記手続上も簡便であるため、
広く利用されています。
しかし、改正後では、上記総数引受契約方式で行う場合、
当該総数引受契約の承認(取締役会設置会社の場合は
取締役会議事録)が必要となり、当該承認に関する
議事録の添付も必要となりますので、ご留意ください。
*誤解されがちですが、総数引受契約方式そのものが
使用できなくなったわけではありません。
したがって、従来どおり総数引受契約方式を
採用することにより、株主総会日と払込期日を同日付とする
株式発行等は可能です。
この点、通常方式では割当決議の関係で、同日付とすることが
できませんから、
総数引受契約方式を利用するメリットは、改正後もあります。
*定款で別段の定めを置くことにより、上記承認決議を不要する
ことも可能です。
頻繁に株式発行等をする会社であれば、予め定款変更をしておく
ことも一考の余地があります。
③責任限定契約の対象範囲が拡大した。
*従前、社外役員+会計監査人にのみ認められていた
責任限定契約の範囲が、拡大され、
取締役→社外でなくとも、業務執行を行わない取締役でも締結可能
監査役→社外でなくとも、監査役であれば締結可能
となりました。
*責任限定契約の定款規定のある既存の会社が、
上記範囲まで拡大するためには、定款規定の変更が必要です。
*本改正は、社外役員の要件変更に伴う改正でもあります。
社外役員の変更後の要件については、細部に亘るため、
各会社ごとに検討するのが好ましいです。
本記事での記載は割愛していますので、
もしそのような会社があり、改正後の社外性の要件の判断が
困難な場合には、お気軽にご相談ください。