士業・法務担当者のための登記パートナー
司法書士・行政書士の大越です。
「士業・法務担当者のための会社法入門」
2.吸収合併手続
まずは、吸収合併の一般的スケジュールは
以下の通りです(会社法749条等)。
<吸収合併スケジュール>
①吸収合併契約の締結
②事前開示書面の備置
③株主総会の承認
④株主・登録株式質権者・新株予約権者
への通知又は公告
⑤債権者に対する官報公告
(合併の内容・一定の期間内異議を述べられる旨
・最終の貸借対照表の開示場所)
⑥会社が把握している債権者に対する
個別催告通知(公告と通知内容は同一)
⑦異議を述べた債権者又は反対株主等
に対する対応(弁済、株式買取等)
⑧合併の効力発生
⑨存続会社の変更登記及び消滅会社の解散登記申請
⑩事後開示書面の備置
減資と同様、官報公告等の債権者保護手続が必要です。
債権者保護手続が完了していないと
合併の効力が生じないのは、減資と同様です
(会社法入門第27回をご参照ください。)。
3.新設合併手続
次に、新設合併手続の一般的スケジュールは
以下の通りです(会社法753条等)。
<新設合併スケジュール>
①新設合併契約の締結
②事前開示書面の備置
③株主総会の承認
④株主・登録株式質権者・新株予約権者
への通知又は公告
⑤債権者に対する官報公告
(合併の内容・一定の期間内異議を述べられる旨
・最終の貸借対照表の開示場所)
⑥会社が把握している債権者に対する個別催告通知
(公告と通知内容は同一)
⑦異議を述べた債権者又は反対株主等
に対する対応(弁済、株式買取等)
⑧新設会社の設立登記及び消滅会社の解散登記申請
⑨事後開示書面の備置
スケジュールにすると、ほぼ吸収合併と同じ手続ですが、
新設会社は合併に際して会社を設立するため、
新設会社では債権者保護手続や株主への通知等
が不要です。
また、新会社の設立なので、 設立登記の申請の日に
合併の効力が生じます(会社法754条)。
他方で、設立の登記には設立会社の定款を添付しますが、
通常の設立と違い、定款に公証人の認証は不要です
(会社法814条)。
4.合併契約書と印紙税
合併契約書には、印紙税として収入印紙4万円を
貼付する必要があります。これは契約書毎に必要です。
通常、契約書は当事者の分だけ作成しますので、
数社合併の場合には、相当数の印紙税が必要になります。
しかし、例えばグループ間の合併の場合には、
同じ部署で書類を一律管理することもありえますので、
契約書原本は1通あれば足りることも多々あるかと思います。
その場合には、契約書の末尾を「本書1通を作成し、
甲(存続会社)が保有し、乙及び丙(いずれも消滅会社)は
原本の写しを保有する」とした上で、
作成する原本を1通だけにすれば、
収入印紙は4万円で足りますので、節税になるかと考えます。
5.まとめ
減資と同様、合併も債権者保護手続が必要であり、
かつそれ以上に多岐に渡る手続が必要なため、
スケジュールには余裕をもって準備することが必要です。
また、官報公告等不備があった場合には
再度一からやり直しとなる手続もありますので、
スケジュール作成段階から司法書士等専門家に
相談されることをお勧めします。
次回以降は、合併手続の各ポイントにつき、詳細に解説していきます。
次回は、「合併手続で個別催告通知を省略する方法」 を予定しています。