増資よりも時間がかかる減資手続 | 士業・法務担当者のためのマニアックな登記・会社法・債権法改正情報~司法書士・行政書士大越一毅~

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帝国ホテル傍で開業している32歳・キャリア10年目
の司法書士・行政書士こっしーが、開業したての士業の
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を語るブログです。

ブログ訪問、ありがとうございます。

士業・法務担当者のための登記パートナー 

司法書士・行政書士の大越です。



あけましておめでとうございます!

今年も、会社法を中心に情報発信

していこうかと思いますので、

よろしくお付き合いください。

今年は初詣時のおみくじで



「半凶」という珍しいものを引いてしまいました。

ある意味、ツイてるのでしょうか(^_^;)



さて、


「士業・法務担当者のための会社法入門」


第27回である今回は、前回の告知通り、



「増資よりも時間がかかる減資手続」です。



これ、結構勘違いされている方が多いです。


増資の場合は、会社法入門第16回

「総数引受契約方式」

http://ameblo.jp/shoshi-ohkoshi/entry-11152932571.html

(第16回)


でも解説しました通り、最短1日で手続を実施することも可能です。



一方、減資は、資本金を減らすだけで、新株式の発行もないし、

むしろ増資よりも簡単にできるのでは?

と考えている方が非常に多いのでは?と思います。



しかーし、これは大きな誤りです。

後で解説するとおり、

減資の場合は常に「債権者保護手続」

必要です!


そのため、官報公告の申込から掲載までで1~2週間+保護手続期間1ヶ月

最低でも2か月弱の期間を要することが必須

で、短縮できません!

株主が一人会社でも同じです!

これは会社債権者を保護する必要があるからですね。

でも債権者がいない会社でも手続期間の短縮は無理です。


よく、定時株主総会とか決算期の直前に減資したいという

相談を受けますが、その場合には、上記を加味して、必ず早めにご相談ください




1.減資とは



株式会社の資本金の額は、貸借対照表上資本の部に記載し、

かつ登記簿上公示されています。

資本金の額を減少することを一般的に減資といいます。

減資をした場合、欠損填補等をすることにより分配可能額が増加するため、

終局的には剰余金の配当によって会社財産が流出する可能性があります。


したがって、増資と違い、株主だけでなく会社債権者に与える影響も大きいため、

株主総会の承認では足りず、債権者保護手続が必要です。

後述の通り、債権者保護手続は法定期間を短縮することができないため、

増資のように最短1日で行うスケジュールは物理的に不可能

ですのでご注意ください。

(増資手続のスケジュール短縮方法については

会社法入門第16回をご参照ください。)。

通常、減資は、前述の通り欠損填補をして将来の剰余金配当を容易にした上で、

同時に募集株式の発行を行い会社経営の再建を図ることを

目的として行うケースが多いです。


会社としては、減資をせずに募集株式の発行だけをしたい場合であっても、

欠損が生じていると株式の引き受け手が見つからないからです。


出資者側から、出資の条件として、減資により欠損填補

をすることを提示されることもあります。

なお、会社再建のために減資と増資を同時に行う場合、

新たな出資者が経営権を取得することが通常であり、

既存の株主の持株比率を下げるために

株式併合又は自己株式の取得も併せて行います。


一旦資本金額をゼロにする100%減資を行う場合には、

株主を総入れ替えするため、反対株主も含め全ての既存株式の買取り

を可能にするために、全部取得条項付種類株式を利用するケース

が増えてきています。

(全部取得条項付種類株式については会社法入門第13回をご参照ください。)。

ちなみに、会社法下では、資本金と株式の関係は完全に分離されたため、

減資をしても当然には株式が消却されず

別途上記のように自己株式の取得等の手続が必要になりますので、

ご注意ください。



2.減資のスケジュールと手続

減資の一般的スケジュールは以下の通りです(会社法447条、449条)。

<減資スケジュール>


①株主総会の特別決議


②債権者に対する官報公告
(減資の内容・一定の期間内異議を述べられる旨・最終の貸借対照表の開示場所)


③会社が把握している債権者に対する個別催告通知(公告と通知内容は同一)


④異議を述べた債権者に対する対応(弁済等)


⑤減資の効力発生


⑥登記申請



上記②~④が債権者保護手続です。


会社は、減資をする旨の公告及び個別通知をしてから1ヶ月間

債権者に対して異議を述べる期間を与える必要があります。

そして、減資は会社が定めた効力発生日に効力が生じますが

債権者保護手続が終了していない場合には、その効力が生じません。

また、公告を官報に掲載する場合、申込から掲載まで2週間かかります。

(決算公告を毎年している会社の場合には1週間

決算公告については会社法入門第26回をご参照ください。)


したがって、準備期間等も鑑みると、最低でも

手続開始から減資の効力発生までに2ヶ月間は必要です。

会社債権者も含め関係当事者全員が同意している

又は会社債権者が存在しなかったとしても、

官報公告を省略することはできないため、手続の短縮をすることは不可能です。

他方で、③個別催告通知は、電子公告等と官報公告を併せて行う

ことにより省略することが可能です。

手続の詳細は、次回以降の組織再編で説明します。



3.まとめ


中小企業の場合、分配可能額の増加・経営権の交代目的だけでなく、

会社法上の機関設計又は税務上の問題、

若しくは助成金取得のための資本金額要件をクリア

するために減資を行うこともあります。


その場合、事業年度の末日までに減資を行う必要があるケースが多々あります。
しかし、上記の通り手続に最低2ヶ月必要なため、

減資を検討している企業はその点を認識の上、早めに準備する必要があります。

そして、官報公告等不備があった場合には再度一からやり直しとなる手続

もありますので、念のため司法書士等専門家に相談されることをお勧めします。



次回は、「合併手続のキホン」を予定しています。