役員の新制度~会計参与設置のメリット~ | 士業・法務担当者のためのマニアックな登記・会社法・債権法改正情報~司法書士・行政書士大越一毅~

士業・法務担当者のためのマニアックな登記・会社法・債権法改正情報~司法書士・行政書士大越一毅~

帝国ホテル傍で開業している32歳・キャリア10年目
の司法書士・行政書士こっしーが、開業したての士業の
ためにマニアックな登記・会社法・最新の法改正
(今は債権法改正が控えています!)情報や育児のこと
を語るブログです。

ブログ訪問、ありがとうございます。

士業・法務担当者のための登記パートナー 司法書士・行政書士の大越です。



「士業・法務担当者のための会社法入門」


第24回である今回は、前回の告知通り、「役員の新制度~会計参与設置のメリット~」です。


この会計参与、会社法施行直後は↓の記事でも書いた通り、

注目されましたが、実際の運用率はというと、

うーん?どうなんでしょ。といった感じでしょうか。


税理士会でも会計参与の行動指針を作成し、それなりに力を入れている

みたいいですが、責任の重さから、仮に会社側から会計参与への就任

の依頼があっても、お断りするというケースも多いみたいです。

むしろ顧問税理の立場で従来通り、アドバイスしたいということでしょうか。


会計参与を置けば、監査役を置かなくともよいというメリットもありますが、

そもそも取締役会を置かなければ、監査役も会計参与も会社法上は

不要ですからね。


あ、監査役って、海外だと呼び名に困るらしいですよ。

監査役に相当するポジションがほとんどの国で無いみたいです。

日本だとなじみのある役職ですけどね。

ということは、会計参与なんて、もっと説明がつかないかも・・。



1. 会計参与とは


会社法の施行により、会計参与という新たな機関を設置できるようになりました。
会計参与とは、経営者と共同名義で会社の貸借対照表等計算書類を作成する専門家



であり、公認会計士又は税理士でないと就任することができません(会社法333条)。

どの規模の株式会社(以下「会社」といいます。)であっても原則として

会計参与設置義務は無く、かつ監査役と異なり専門家である必要があるため、

会社法施行直後に会計参与を設置する会社は多くなかったと思われます。

しかし、会計参与を導入した中小企業に対し融資条件を優遇する金融機関

が出てきたことや、公認会計士協会・税理士会連合会が行動指針を公表し、

かつ会計基準の改正に合わせて随時改正を行うことにより、

企業でも注目度が高まってきております。

また、当初は公認会計士・税理士の間でも就任に消極的であった会計参与ですが、

近年では私の知り合いでも会計参与に就任したという話を耳にするようになってきました。

特に顧問税理士と兼任が可能な税理士では、顧問先にオプションの1つ

として提案されている方もいるようです。


2. 会計参与設置のメリット

会計参与を設置すると、当然報酬を支払う必要があります。

会計参与設置のメリットとしては、以下の点が考えられます。

会社法上、会計参与を設置することによって、免除される行為はありませんので、

あくまで事実上の視点からのメリットです。

<会計参与設置のメリット>

  1. 会計参与を設置することにより計算書類の正確性が向上する

  2. 会社に対する信頼性がより確保される

  3. 金融機関からの融資などが受けやすくなる

  4. 貸出金利の優遇措置を受けられる金融機関がある

会計参与の設置は登記事項ですので、計算書類の作成に

会計参与が関与していることを対外的に公示し、信頼性を増加することが可能です。

近年、金融機関は、融資に際し人的担保・物的担保に頼りすぎているという批判を受けており、

また競争激化とともに、融資先に格差を設ける傾向にあります。

会計参与設置により、金利等を優遇するのもその一環であり、

会計参与が今後より普及すれば、このような金融機関が今後も増加すると考えられます。

残念ながら、現時点では大手銀行・都市部の銀行で

優遇措置が積極的に行われているとは言いがたい状況

(中小企業庁のHP参照。)ですが、不況の現在であれば、

より融資状況は厳しいので、会計参与設置が融資判断をする上でのオプションの1つ

になることも充分にありえることでしょう。


3. 会計参与の職務


会計参与を設置した会社が、会計参与に依頼できる主なことは以下の通りです。

<会計参与の職務>

  1. 計算関係書類につき、取締役との共同作成(会社法374条1項、6項)

  2. 会計参与報告の作成(会社法374条1項)

  3. 計算関係書類を承認する取締役会への出席と意見の陳述(会社法376条)

  4. 株主総会での株主からの質問に対する説明(会社法314条)

  5. 計算関係書類・会計参与報告の備え置き並びに株主等への開示(会社法378条)

  6. 取締役の職務執行に関し不正等重大な事実があることを発見した際に監査役への報告(会社法375条)

特に 1. につき、取締役と共同して計算関係書類を作成しますので、

作成に際しては、取締役と会計参与の意見が一致している必要があります。
どうしても意見が一致しなかった場合には、会計参与に辞任(又は解任させる)してもらう等の措置が必要になりますので、ご注意ください。


4. まとめ

親族が取締役となる場合と異なり、会計参与のなり手は税理士等の専門家ですので、

無報酬というわけにはいきません。

したがって、コストが増加しますので、会計参与を設置する際には顧問税理士と相談の上、判断されることをお勧めします。

多くのケースは会計参与を設置する場合、顧問税理士の方が兼任されることになるかと思います。

会計参与は他の国にはない日本特有の制度です。

したがって、まだまだこれからいかようにも発展しうる制度といえます。
私個人の意見としては、ベンチャー企業のように、外部資本を注入し、

かつ株式上場前から株主総会等において、外部株主・金融機関に対して

説明が必要な機会がある会社には利用価値が少なからずあるのではと考えます。


次回は、「会計監査人設置会社の注意点~毎年登記が必要です~」を予定しています。