あなたは「世界」と聞いて、どんなことを思い浮かべるだろう? きっと、とっても広い――それこそ、無限の空間を考えるのじゃないかなあ……
じゃあ「あなたの世界」だったら、どうだろう? これまた同じように無限に広がる空間を思うんじゃないだろうか……つまり「世界」も「あなたの世界」も等号で結ばれているわけだ。
ちゃう、ちゃう。
あなたの世界は、そんなに広くはない。ましてや無限でもない。さらにいうなら、あなたにとっての世界は「あなたの世界」以外に存在しない。一般用語でいう「世界」なんて所詮、概念に過ぎず、あなたの現実には存在しないんだよ。
また『非責任のススメ(鋭意、執筆中)』から引用しよう。
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いまいちど、いう。
ボクは「世の中のせい」とはいっているけど、それがそのまま「世の中が悪い」とはいっていない。もちろん先にも述べたよう……あなたにとっては「自分がうまくいかないのは世の中が悪い」ともいえるけどね。
でも、それは天気が晴れたり、曇ったり、雨になったり、雪が降るのと同じで――あなたが、どうのこうのできる問題じゃないといっているのだ。
……中略……
むしろ、あなたが支配できる範囲をしっかり識って、そこでプレイしたほうがいい。
そこで「あなたの世界」について考えてみよう。
仮にいま、あなたが本書を自分の部屋で読んでいるとする。そうだね、ベッドに寝っ転がって、くつろいでいる状態としようか。そこでちょっと、あたりを見回してみよう。
ベッドは、あなたの体重を心地よく支えてくれて、なかなか案配がいい。天井ではシーリングライトが部屋を明るくしている。入り口のドアは閉まっていて、当面、だれからもじゃまされる心配はない。デスクにはパソコンが置かれ、モニターがお気に入りのSNSのページを映している。まあ、ブログでもいいけど(笑)。窓に眼を遣るとカーテンが引かれ、外の景色は見えない。エアコンが部屋の温度や湿度を適度に保ち、空気には鉢植えの花の匂いがかすかにする。
じつは、これが「あなたの世界」のすべてなんだよ。すなわち世界は、あなたの認識できる範囲でしかないのである。
きっとあなたは「えっ、そんなことはない。窓の外にはとなりの公園が見え、ドアを開ければ廊下があってつぎの部屋につづき、その先にはダイニングキッチン、さらにバスルームもトイレも……」というだろう。
そうなんだけど、やはりちがうんだ。そんなものは、ないのである。
言い換えるなら、いま現在のあなたには関係ない。なくていい。だから「ない」のだ。もちろん、あってもいいんだよ。あると思うのが当然だ。
でも、あろうがなかろうが、いまのあなたとは無関係である。よしんば、なくても、いまのあなたは困らない。まったく問題がない。本書を読むあなたの部屋が、環境が快適ならば、あなたは大丈夫だ。
そして、あなたが窓のカーテンを引いた瞬間に外の景色が見えればいい。窓を開けるまでにとなりの公園ができていればいい。部屋のドアを開けた時に廊下があって、廊下を過ぎるまでにつぎの部屋ができて、トイレのドアを開けるまでに便器が存在すれば、あなたにとってなんの問題もないのである。
するとあなたは「いやいや、テレビのスイッチを入れたらニュースなんかで、世界情勢も世の中のようすも知ることができる……」というかも知れない。
たしかにそうだ。
でもね。あなたが観ているのは、あなたの部屋にある、あなたのテレビの画面であって、けっして現場ではないということを識ってほしい。よしんばそれがニュースを模したドラマであっても、あなたには分からない。ほれ、北朝鮮の番組なんかをイメージしてみると理解できるだろう。あくまで情報の送り手の意図が反映された制作物だ。
……中略……
まあ旅番組なんかで――例えば、アメリカ・ニューヨークのタイムズスクエアのようすが映し出されているのには、まず情報操作がないと考えられる。
だけど、あなたが観ているのはテレビとその画像であって、けっしてタイムズスクエアを直接ではない。だから、あなたにとってはいま、タイムズスクエアが存在していなくてもかまわないのだ。気持ちよく映像を楽しんでいれば事足りる。
でもってあなたが「いっちょ、ニューヨークに旅してみるか」と思い、飛行機に乗る。そして、あなたの到着時にニューヨーク・タイムズスクエアができあがっていれば問題ないわけだ。
当然のことながら、ボクは「あなたの行動に合わせて、あなたの周辺世界がパタパタとできる」といっているわけじゃない。もちろん、ハナからあっていいし……あると考えるのが自然だ。
ここでボクがいいたいのは「なくても、あなたは困らない。なんの差し障りもない」ということである。まさしく関係ないのだ。言い換えるなら、いまのあなたに関係があるのは、あなたがいる部屋の状況だけなわけ。こっちは、急に空気がなくなったりしたら大変だ(笑)。あなたはとても困る。でも快適ならば問題ない。
分かったかな。あなたがいま、あなたの「人生ゲーム」で取り組んでいるダンジョン(ゲームの面)なんて、思いのほか狭いのだ。小さいのだ。つまり、あなたが認識できる範囲が、いまの「あなたの世界」なのである。
もちろん、あなたが移動すれば、その範囲は変わる。外に出れば、見渡す限りが、あなたの世界だということもできるだろう。だけど、あなたの視界に滲む山で雨が降っても……よしんば落雷があっても、あなたには関係ない。直接の影響はないのだ。
さらに行動の経緯でも考えてみよう。あなたはもう、外にいるのだから、さっきまであなたがいた部屋がなくなってしまっていても問題はない。あなたには関係ない。あなたが帰るまでにまた存在していればいいのだ。いま、あなたが山登りを企てているとしても、あなたがいくまでに天候が回復していればいい。
こう考えてみると「あなたの世界」というのは「いま現在」にあなたが認識していて、あなたに影響を与え、あなたが支配できる世界でしかないのである。なのにそれ以上だと勘違いを犯すから大変になるわけ。しんどい状況に陥ってしまうのだ。
割り切ってしまおう。
世の中は、そんな設定になっていて、その中の「あなたの世界」なんて思いのほか狭いのである。そこさえ快適なら、あなたはしあわせなのだ。
だから、あなたに影響を与える部分が基本設定のルールによって、あなたが支配できないのは、み~んな「世の中のせい」なのである。
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どうだい?
あなたが「ある」と思って、思ったようにあるのが「あなたの世界」ということ。それ以上でも以下でもない。ただ、それだけだ。
なのに――それ以外にまで思いを馳せてしまうのが思考……すなわち「こころ」のはたらきであり、あなたのほうが騙されていることに気づこう。