まずは――恋せよ、乙女! | 魔法の言霊――寿詞(よごと)説法師が贈る人生のヒント

魔法の言霊――寿詞(よごと)説法師が贈る人生のヒント

おめでとうございます!

『魔法の言霊(東方出版刊)』の著者・橘月尚龍です。
ボクが、この本を上梓したのが2002年――
それから世には同様の表現があふれて玉石混合で、
わけ分からん状態になってます。

そこで本家としてのメッセージを発信することにしました。

 ボクの著書『聖なる魔女の微笑み ―恋の魔法で人生も仕事も成功させる23のステップ―(東方出版刊、ISBN4-88591-985-1、定価1,500円+税)』では――女性主人公のジュンコが、失恋と失職というダブルパンチで人生の苦境に立たされた状況から、やがて天命を識り、甦生していくまでを物語仕立てで描いている。

 プロローグ部分を引用しよう。

―――――――――――――――――――――――――――――

プロローグ

「ごめん、結婚を延期……いや、婚約を解消してくれないか?」
 婚約者のケンジから突然、そんな風に切り出されたのは、桜も散り染めの季節だった。あたりは春たけなわ。だれもが浮かれたような表情で会話の花を咲かせているのに、ふたりが話すオープンテラスは、忘れ物をした冬将軍が戻って来たかのよう……
 ケンジからの電話の声で感じていた厭な予感は的中していた。
「ふたり、いっしょだったら、なんとかなるわ」
 そういいながらジュンコは、自分の言葉が遠くから聞こえる他人の声のように、ひどく頼りなく、むなしいものに思えていた。

 恥ずかしい――
 ジュンコの偽らざる気持ちだった。
 寿退社でジューンブライド。上司の祝福と同僚の羨望。故郷の島に彼と帰った時、台所で、そっと褒めてくれた母。少し怒ったような顔をしながらも、安堵の表情をしていた父。ケンジのことを早ばやと「お兄さん」と呼んでいたちゃっかり屋の弟。
 もうすでに結婚式場や新婚旅行の申し込みも済んでいる。新居となるマンションの仮契約も、家具や家電製品の予約も……こう考えると、ジュンコのこころは、ますます沈んでいく。
 ふらふらと歩くアパートへの帰り道。いたるところに春の兆しがあふれている。街路樹に芽吹いた若葉。花壇をにぎやかす黄色や赤い草花。少し長くなった陽射しを浴びながら駆け回る子どもと犬たち。みんな、春を享受している。
 しかし、ジュンコには、どれもが自分とは関係のない遠い映画のシーンのように映っていた。それもモノクロームの映画――自分だけが春の宴から取り残されたたように思える。
 突然、ジュンコの頭の中にある言葉が飛び込んできた。
 慰謝料!
 ジュンコは、春の風にひるがえる上着の襟をグッと掴むと、
「慰謝料、慰謝料、慰謝料……」
 と呪文のように呟きながら家路を急いだ。

―――――――――――――――――――――――――――――

 この時のジュンコは世間体を気にし、プライドを維持するため、自分を苦境に陥れた相手を憎み「なんとか復讐してやろう」とばかり考え、それが生きている証のように思い込む精神状態にあった。
 ところが、あることがきっかけで「赦(ゆる)す」こと「受け容れる」ことへの気づき学ぶ過程でジュンコは、自分の存在意義を見つけていく。詳細は本書に譲るが、その「あること」こそが「恋」なのである。
 商業出版なので一般的な書店やアマゾンで購入できるので、もし興味をお持ちになったら注文していただけるとボクはうれしい。

 じつをいうと――恋愛は、女性からとてつもないエネルギーを生み出してくれる。それは核エネルギーの比じゃない。もちろん、野郎どもなんて足許にも及ばない。
 ところが、このエネルギー自体は純粋なので、善悪良否の判断を持たない。取り扱いを間違うと暴走して大変なことになる。
 そしてまた、それを健全に導いてくれるのも、やはり「恋」なのである。

 また女性は極めて現実的である。男性のように夢見る夢男クン状態で、わけ分からんところで自爆してしまうこともない。だから女性が健全に恋をするなら、この世も変革してしまうパワーを発揮できるのである。

 ボクの『聖魔女待望論』から、そのあたりを引用してみよう。

―――――――――――――――――――――――――――――

 ……前略……

 よくいわれる(?)ことだが「男性は放射状に恋をし、女性は直線状に恋をする」らしい。つまり、男は好きになる女性が、ただただ、だらしなく増えていく。いま、ある女性と恋愛中であっても、むかしの恋人からコナをかけられると、ついフラフラ~ッといってしまいやすい。新しくって、好みのタイプならなおさらだ。
 これに対して、女性はいつも本命はひとりだけということ。それで、別れたら、つぎの男性と恋愛――というパターンをくり返すという。こんな風にいうと「そんなことはない。複数の恋人を持つ女だっている」と反論があるかもしれない。たしかにそうだ。
 でも、その女性のこころの中には、厳然とランクづけがある。少々、露骨な表現をするなら「使う男」と「使われていい男」だ。もちろん、本命が「使われていい男」である。かのツルゲーネフの『はつ恋』でも、主人公を蔑みまくる女性が、自分のあこがれのひとには、からきし弱いところに通じるだろう。
 これに対して、男性のほうにはランキングはあることにはあるのだが、女性ほど明確じゃない。放射状たる所以(ゆえん)だ。そのため、節操がなく、タチが悪いともいえるかも知れない。

 このように男性は播種本能を燃やし、女性は生命を燃やす。それは女性はいつも、ひとりの男性の子どもしか宿せないことによるのだろう。このことは、ある意味、女性は非常に現実的だともいえる。なぜなら、その男性の子どもを産むということは、自分の生命を賭けるということにもなるのだから……。だから女性は、ひとりだけの恋人に集中できる特性を持つようだ。
 ということは、いま集中している男性に対して、すごく生命を賭けるわけ。このエネルギーたるやスゴイものがある。ホント、もう燃焼しまくりといっていい。ところが、なんらかの原因で別れる。そして新しい男ができると、まえの男に対しては「そんな男……いたっけ?」くらい、ケロッとしている。まあ、いってしまえば「別れたら、つぎのひと」って感じである。これには、ある意味、驚かされる。

 ……中略……

 でも、とことん涙を流したら、案外「ケロッ」のようだ。やがてムクムクと本源的に持つエネルギーが目を覚ます。生命力が動きだすわけ。そうなんだ。女性の生命力は恋愛と連動している。だから「恋せよ乙女」ということ。それも真剣にね。

 ……中略……

 プロセスをトレースしてみよう。
 まずは知り合う。これがないとはじまらない。そして恋愛初期。女は男に会うというだけで、足が地に着かない状態。デートの前の日からドキドキで、あれを話そう、これをしようと頭の中はパンパンになる。そんなことを夢想しまくり、眠れない夜を過ごす。
 当日は寝不足で、眼の下がクマになってしまい、これをなんとかカモフラージュするため、シャワーを浴びたり、顔面パックをしたりする。化粧をしては「気に入らない」「ここが、あそこが変」と落とし、落としては塗り壁工事をくり返す。あっというまに出かけないといけない時刻が迫ってる。
 でも、着ていく服が決まっていない。いや、きのうの夜には決めていたんだけど、どうもちがうような気がする。昨夜のチョイスはちょっと大人っぽ過ぎて、露出が多すぎるので、男からハスッパな女と思われると癪(しゃく)だ。かといって、ブリッ子過ぎるのも男に女の魅力をアピールできない。どうするべ? 悩みは尽きない。
 結局は、悩んだ挙げ句、無難ないでたちで待ち合わせ場所に駆けつける。
「ごめんなさい。待った?」
「いや、ボクも来たばかりだよ」
 定番のやりとりを交わし、男について、ちょっと洒落たレストランへ。
 男が訊く。
「なにがいい?」
「おまかせするわ」
 これまた定番の会話。男は、あらかじめ下調べしておいたコース料理をオーダーする。
 ところがサラダにスープ、ナンタラいう魚にカンタラの肉……つぎからつぎに出てくる料理に、女は眩暈(めまい)がしそうになる。
 これをどうして片づけよう?
 でも、これがデートという儀式なのだ。乗り越えなければ未来はない。女は儀式に立ち向かう。男に会うことは天にも昇るこころ持ちだが、大量の食物は呪わしくさえある。男が、どこぞのマニュアルを精読してオーダーしたワインで機械的に嚥下する。味なんて分かるわけがない。
 ナイフとフォークの使いかたは、まちがってないだろうか? 添えてあるクレソンは食べていいのだろうか? キャロットを落っことさないだろうか? 口紅がはげ落ちてないだろうか? それどころか、ソースがグワーッと顔についていないだろうか? 料理に気がいきすぎて、ガニ股になってないだろうか?
 それでも「美味しい?」って訊かれると、微笑みながら「ええ、とても」と答えなければならない。
 しまった! ボディスーツがきつい。キャミソールにしておけばよかった。でも、それではプックリの下腹部がバレてしまうし、スカートのボタンがはじけ飛んでしまうかも知れない。額に汗が浮いてくる。
 女は食糧危機の国のひとが見たら、それこそ激怒するくらい大量に残す。
「どうしたの、少食だね。――それに暑いの?」
「うううん、大丈夫。ちょっと酔ったみたい」

 ある日、男がいう。
「こんどの週末。遅くなってもいいかい?」
 来た来た来た~あ! いよいよホントの恋人になるんだわ。彼の腕に抱かれて、あんなこと、こんなこと……夢想が宇宙規模に広がってしまう。
 その週、女は俄然、忙しくなる。部屋中を引っかき回して、戦闘の準備に入る。服、バッグ、アクセサリーに靴……武器の確認に躍起になる。ところが最終兵器が、どうしても気に入らない。
 女はデパートに走る。エレベーターの扉が開く時間すらもどかしく、兵器売場に突進する。一瞬、女はたじろぐ。白、赤、ピンク、青、黄、紫……まるで、花畑のようだ。でも、その花畑には淫靡な匂いが立ちこめている。だって、そんな色が、薄いスケスケの布になったり、サテンのような光沢を放ったり、ジャカードで穴だらけになってるんだもの。
 もっとも「淫靡な匂いが立ちこめている」のは、女の頭の中だけで、そこには、いつもと変わらないランジェリー売場の光景が広がっているんだけどね。でも「ただいま発情中」のフダをぶら下げた女には、めくるめく世界のプレリュードだ。
 店員の目で我に還った女は、平然を装いながらも、いちばんセクシーなものを手に取ってみる。また「淫靡な匂いが……」状態が復活する。男が脱がせやすいように両脇をヒモで結ぶのやら、どうしたら中身が隠れるのといいたくなるTバックスタイルやら、洗濯はムリと思えるラメがまぶしてあるのまで……。
 かのロバート・ムーアが「女性はなぜ下着を身につけるのか? それは脱ぐためである」といったとか。女はそれを地でいっている状況。
 鼻の頭に汗が光る。
 セクシーなパンティをなで回しながら、
 これじゃあ、男に色キチガイと思われるかも知れない――
 つぎに女は、可愛い路線に向かう。花柄にフリルがついたのを手に取ってみる。
 これじゃあ、男がガキって思って、大人の女を演出できない――
 女は清楚な感じのオードソックスな白とベージュのコーナーに移動する。純白のブラジャーとパンティのセットを手にして、女は考え込む。
 これじゃあ、男は平凡でつまらない女と思うんじゃないか――
 もう女の頭の中は支離滅裂。ここはどこ? わたしはだれ? 状態だ。それまで女の気魄に気圧されて、戦況を見守るだけだった店員が、女の弱ったタイミングを見計らって「どういったものをお探しですか?」と声をかけてくる。
 しっ、しまった、捕まった。タイムアップだ。
 女は、セクシーも可愛いも清楚もグワシッと鷲掴みにして店員に渡す。
「三万一千五百円です」
 なんだと~っ!
 サイフの万券を数えてカンネンした女は、クレジットカードを取り出して、ひきつった微笑みを浮かべる。そして、こう思う。
 絶対にモトを取ってやる――

 ……後略……

―――――――――――――――――――――――――――――

 分かるかな?
 女性の恋愛は現実なのである。生活なのである。助平野郎どものように「ヤりたい」でギンギン状態ではないんだ。
 むしろ、人生と直づけ状態……だから、そのエネルギーを具体的に活用できる。もちろん活用できるようになるためには、内に眠る魔女才能を開花させ「聖魔女」にならないといけないんだけど、この才能は本源的には女性だけに内蔵されている。
 言い換えるなら、女性こそが聖なる魔法を使って素敵な世の中を創造できる選ばれたジェンダーということである。