「勇気と自信と行動力」のロールモデル | 身体からの悟りを目指して ~ 少林寺拳法

身体からの悟りを目指して ~ 少林寺拳法

我孫子道院 道院長のブログ

戦後、志のある若者を集め、勇気と自信と行動力を養わせるための“私塾”を原点に開創された少林寺拳法

今でもその目的は普遍だが、現代の若者達が、勇気と自信と行動力のある若者達になっていくには、そのロールモデルが必要なのではないだろうか

つまり、具体的に「勇気と自信と行動力を持った、こういう人物になりたい」と思わせる憧れの人の存在が、不可欠だということだ


逆にいえば、一人前の大人になるには、そうした人物との出会いが欠かせないはずなので、一端の大人に聞けば、すぐに2~3人の名前は挙がってくると思われる


ちなみにワタシなら、以下の3名を推挙する


①いわずと知れた 開祖 宗道臣

(16歳のときに読んだ「秘伝 少林寺拳法」は、人生を変えた一冊でした。しかし、開祖は「こうした大人になりたい」という意味では、すばらしい目標となっているが、「こうした青年になりたい」という目標として、最適かとなると、ちょっと……かもしれない)


②坂本竜馬

今年の大河ドラマが「龍馬伝」で、ある種の龍馬ブームだから、彼の名前を挙げるわけではない

むしろワタシは、ブームや流行にはあえてそっぽを向く‘あまのじゃく’体質で、「龍馬伝」も5回ぐらいしか見ていない

しかし、勇気と自信と行動力のある若者像を語るうえで、やはり竜馬ははずせない

司馬遼太郎の「竜馬がゆく」は、それまでマンガしか読まなかったワタシがはじめて読んだ(中学三年生)長編小説で、ワタシに読書の楽しさを教えてくれた大事な本

そして司馬遼太郎の描いた坂本竜馬にどれだけ感化され、勇気づけられたことか……

ちなみにワタシは大学二年の夏休み、青春18キップを片手に、千葉から、京都→高知の竜馬の史跡を訪ねる旅に出たことがある(一部、野宿や車中泊)

それはともかく、いまの日本が「にっちもさっちも」いかない状況になりつつあるのは確かであり、こうした時代に竜馬を知って、彼の勇気と自信と行動力を手本にするのは、ベストチョイスといえるのではなかろうか

さらにもうひとつ付け加えるなら、竜馬の明るさも、いまの時代が求めている、大事な要素だと思っている


③浮谷東次郎

最後の一人は、浮谷東次郎

彼は開祖や坂本竜馬に比べれば、まったく無名かもしれないが、

現代の「勇気と自信と行動力」のある若者像という意味では、ワタシの知る限り、彼以上の適任者はちょっと思い浮かばない

彼は1942年生まれで、私が生まれる前の1964年に23歳で亡くなってしまっている

彼は当時トヨタの契約ドライバー(プロのレーシングドライバー)で、鈴鹿サーキットで練習中の事故でこの世を去ってしまったのだが、

ワタシが注目してもらいたいのは、レーシングドライバーとしての浮谷東次郎でなく、人間存在としての東次郎、一青年としての東次郎なのだ


彼は「がむしゃら1500キロ 」、「俺様の宝石さ 」、「オートバイと初恋と わが青春の遺産」という三冊の本を残してくれているが、これらの本は、いずれもレーシングドライバーになる前に記されたものだ


「がむしゃら1500キロ」は、中学生時代の東次郎が、まだ舗装もされていない当時の国道1号線を通って、50ccの原付で千葉の市川から大阪までをひとりで往復したときの旅行記(ワタシが中学生ぐらいのとき、「新潮文庫の100冊」にセレクトされていた記憶がある)


とても15歳の少年が書いた文章とは思えない非凡な文章レベル、そのみずみずしい感性に面くらい、それ以上に彼のバイタリティに圧倒された


「オートバイと初恋と わが青春の遺産」は、彼の高校時代の日記と手紙をまとめたもの


「俺様の宝石さ」は、彼のアメリカ留学中の日記と手紙をまとめたもの


この浮谷東次郎三部作を読むと、1950年代後半から1960年代前半に、これだけダイナミックで、バイタリティがあって、人間的魅力があって、なにより勇気と自信と行動力のある若者がいたのか、と驚かずにはいられない


じつは縁あって、ちょうど去年の今頃、浮谷東次郎の実姉で、彼の死後、彼の残した日記や手紙を編集して「俺様の宝石さ」にまとめ上げた、浮谷朝江さんにお会いでき、市川のご自宅でいろいろお話をお伺いする機会をいただいた(仕事ではなくプライベートで)

それで、いつかはこうして東次郎のことを紹介したいと思っていたのだが、一年近くも経ってしまって……


知っている人は知っているだろうが、ワタシは物心ついたときからクルマ好きで、20代の頃は、それこそレース三昧。毎週サーキットに通ってひたすらドライビングテクニックを磨いていた

でも、そのことと浮谷東次郎の魅力は、分けて考えてもらいたい


青年時代、気力があるときのワタシは、彼の行動力バイタリティに憧れ、目標だった

へこんだときのワタシは、彼の本を読み直しては勇気をもらった


「竜馬がゆく」の最終巻で、竜馬が暗殺されてしまう

何度読んでも「竜馬があそこで殺されなければ」「大政奉還後の竜馬を見たかった」という思いに駆られるように、

浮谷東次郎の伝記を読んで、事故死の場面まで読み進むと「何で彼ほど才気溢れる人物が、23歳で散ってしまったのか」と思わず涙が出そうになる

でも誰かが東次郎を覚えている限り、東次郎のスピリッツは生きているわけで……


というわけで、「勇気と自信と行動力といわれても……」とちょっとピンと来ていない若者は、ぜひ浮谷東次郎をそのロールモデルにしてもらいたい



身体からの悟りを目指して ~ 少林寺拳法

浮谷朝江さんから頂戴した私家版の「俺様の宝石さ」


本日の「身体の知能指数」 (PQ=physical quotient) 『110』