10月30日に、とうとう実行されました。
あと3軒残っていた家が、取り壊しになりました。
その1軒は、アーネスト・ラウディットさんの家でした。
パヤタスのごみ山の拡張の動きは、さかのぼれば10年以上前から始まります。
ごみ山を閉鎖する、開発する、衛生処分場にする等々紆余曲折がありましたが
実際は、みなさんご存知のように、投棄は今なお続き40メートル以上のそびえたつ
山になり、拡張を続けています
それらの経緯は改めて別のレポートにてお伝えするとして・・・
とにかくこの1年は、私がこれまでパヤタスに関わってきた中で最も急激に拡張が進み
コミュニティーの形がどんどん変わっていくのを目の当たりにした1年でした。
ごみ山を拡張するのか、閉鎖するのか、自分たちの居場所や暮らしに直結する重要なことなのに
住民には正式な開発計画がまともな形では伝えられてきませんでした。
補償は水面下で進められ、団体での会議、交渉の要請はことごとく拒否し
不安の中にいる住民を、時に政治活動に利用し
住民同士の猜疑心を生み
抵抗する一部の人には力を見せて脅し
抗議や交渉、住民間の団結や協力ができないようになっています。
約束を踏みにじるような行為がなされているにもかかわらず
大きな抵抗運動を起こさせず、波風をたてずに住民を大人しく立ち退かせることに、
自治体も地主も、大方成功していると言えるでしょう。
住民は、自分たちが受ける対応に違和感と理不尽さを感じながらも、その先の暮らしと
リスクとを天秤にかけ、ひとり、またひとりと去っていきました。
抵抗した時に受ける脅しの恐怖、目先の補償金、実際に日々迫るごみの悪臭・汚水…
私も、もし今パヤタスの住民だったら、できるだけ補償条件を良くして
立ち退く道を選んだと思います。
あの地で、あの状況の中で立ち退かずに踏ん張っている人の勇気は、
いったいどこからやってくるのか・・・
人権意識からか
自己の利益のためだけでなく、自分と同じ境遇にいる他者の利益のために命をはれる正義感や義侠心か
他に捨てるものがない崖っぷちの「やけ」なのか
最初は、立ち退きの補償金交渉を有利にするために抵抗しているのかと、冷やかに見ていたことがありました。
でも彼の行動を見ていくうち、そして、
家族を守りたい父親としての気持ちとの間で葛藤し苦しむ姿を目にして、
それは違うと思うようになりました。
今は、世の中にこんな人がいるのか・・・という気持ちでアーネストさんとその家族を見ています。
過去の経緯、住民に対してなされた行政の約束を考えれば、今現場で起こっていることは違反です。
そのことを、アーネストさんは法的根拠をもって、暴力を使わず、忍耐強く訴えています。
NGOや人権弁護士の力を借り、天然資源環境省、オンブズマン、議員らに手紙や嘆願書を送り、
マスコミに声をかけ、ラリーに参加し、いろんな思いと戦いながら、続けています。
(ラウディットさんの居住権)
他の住民はどうしているか・・・
いろいろです。前は住民のリーダーだったのに、個人的に好条件の補償を得て、
立ち退き推進の立場に変わった人、アーネストさんの動きを冷やかに見ている人
他人事ではないと応援する人。
彼によれば、住民の中には彼に心情的共感を示し、気をつけて、頑張ってと励ます人が多いのですが、
表だって行動を共にする人は少ないのが現実だそうです。
はたから見れば、負けると分かっている戦いに挑んでいるように見えますから。
相手は自治体、その背後にいるのは、もしかしたら「国」なのかもしれません。
本人が一番、途方もない戦いであることを痛感しているでしょう。
「どうせ命の危険を冒してそんな運動をやっても、結局は立ち退かされるだけ・・・・」
そして、10月30日、その家が取り壊しにあいました。
直前の通告はなく、同意もなく、強制的な取り壊しでした。
Lauditさんたち一家は、パヤタス内の別の場所に、小さな部屋を借りて、今はそこで住んでいます。
これまで補償金の交渉には耳を貸さなかったLauditさんに、一銭の補償金も入ってきていません。
31日、Lauditさんはバランガイ・ポリス(地域の警察署)に行きました。
不当な取り壊しなのだから、調査してほしいと申請しました。
この国の司法に希望を捨てず、新たな法的手段に訴えたLauditさんです。
戦いは続いています。
もしも、彼と彼の家族を応援したいと思われる方がありましたら、
事務局までご相談ください。
メッセージ、生活応援、現地訪問、承ります。
http://www.saltpayatas.com/