先月、父親のドラッグの問題で危うい状況にいる子どものことを紹介しました。
あれから、私たちが注目し出したことを警戒したのか、父親は子どもたちを連れてコミュニティーから消え去りました。そして1週間ほどで帰ってきました。
仕事を探しに行った、ということでしたが・・・謎です。
カタールの母親から送られてきた送金を受けとって、家族はまた同じ暮らしを続けています。
この家庭だけではなく、ドラッグの影響を受けている家庭はパヤタスでもカシグラハンでも数多くみられます。コミュニティーの問題=薬物の問題と言っても過言ではない気がします。
10代~30代の男子の薬物依存の話を、よく耳にします。
薬物に犯された兄や父を持つ子どもたちは、その影響から逃れることができません。身近な家族、父、兄が薬物依存に陥ると、子どもの心も暮らしも不安定になります。
中毒の息子を持った母は、子どもを守るため近所親戚との仲が疎遠になり、家族は壊れ、孤立していきます。
家族の不和、うしろめたさ、虐待、家出・・・家族全員が不幸になります。
せっかく学費をもらえるようになって、希望をもって学校に通っていたはずの奨学生が、学習意欲がなくなり、途中であきらめ退学するケースに、私たちは度々遭遇してきました。
その背後に、薬物の影がちらつきます。
ソルトの奨学生の退学で、本人自身が中毒で・・・ということは、ほぼありません。家族の依存に、引きづりこまれるケースがほとんどです。
薬物依存の中には、販売に手を染める人も出ていきます。
販売に手を染めた親の子は、その仕事の一端を背負わされます。
積極的に手伝うことはなくても、親のしていることを黙っていなければならない、人に言えない秘密を背負う、それが子どもたちの心に暗い影を落とします。
麻薬から入るお金の味を占め、苦しい生活から手っ取り早く逃れる方に流れます。善悪の感覚がおかしくなっていきます。
Dさん、Cさん、Aさん、A君・・・救えなかった子たちです。
まだまだいます。
薬物の怖さは、そのネットワークが見えないこと、命の危険を伴うことにあります。誰がどのような形で、販売に関わっているのかが分かりません。安易に当局に通報、告発しようとすると、危険が自分や家族の身にふりかかります。一旦関われば抜けられない、抜けようとする時は死を覚悟せねばなりません。密売人の情報を知ってしまっているからです。
先日、カシグラハン地区で、13発の拳銃の弾を体に受けた女性の亡骸が発見されました。薬物販売、人身売買に手を染めていた女性でした。パヤタスから移住してきた女性でした。
ソルトのスタッフの住むブラカン地区。マニラ郊外からバスで1時間程の住宅地でも、先日発砲事件がありました。5人の子を持つ父親が、自宅で銃撃を受けて亡くなりました。地域の飲み会で、つい口を滑らせて、自分がたまたま見つけてしまった麻薬関連の話。それが原因ではないかと見られています。
そのどちらも犯人は見つかっていません。
バランガイ(村)の有力者、治安や法規を守るべき村役員や村長自らが関係していることもあります。警察が関与していることもあります。そうでない良心的な人もいます。でも、分からないのです。その人に打ち明け、助けを求めていいのか、それとも危険なのか。
スタッフは言います。
「告発をする、それは密売に関わるネットワーク全てを敵にすることです。」
相談した薬物依存者の支援ネットワークでも、社会福祉省の窓口でも、そのリスクを言われました。その子どもたちを助けたいけれど、保護者が動かない限り動けない。何かが起こるまでは何もできないと。
父親を立ち直らせること、麻薬をコミュニティーから無くしていくこと、それらを私たちの目的にはできません。残念ですが、それは私たちが太刀打ちできない領域なのだと、認識することから、介入が始まります。
気になる子。
学費支援という唯一のこの細い細い糸の将来の希望を自ら切り離さずにいてほしい。
太陽の下で幸せをつかむ道をあきらめないでいてほしいと思います。
父親の反応に注意しながら、距離を見ながら、皆で祈るような気持ちで、Eさんの様子を見守る日々です。