昨年の8、9月にかけて、小学校で実施した、
親御さん対象の教育貯蓄セミナー。
「1日5ペソの貯金でも、積もり積もれば、
お子さんが大学に入るための資金になりますよ」
という趣旨を伝えるセミナーだったのですが、
この地域の皆さんは、簡単に銀行に行って
簡単に口座を開設して貯金する、ということが
できないので、少額貯金を手軽にできるように、
特別の貯金箱を作って配りました。
その貯金箱が果たして使われているのか
それを確かめるため、
あるご家庭に訪問させてもらいました。
小学校でお母さんと待ち合わせて、
ジープニーに乗って、
路地を歩いて、
川の上にかかる小さな橋を渡って、
やがて道が土になって・・・
行くこと20分。

4人家族が住む、かわいいおうちに到着しました。
37歳のお父さんはミンダナオ島スリガオのご出身。
週に2日、ジープニーの雇われ運転手として働いています。
仕事の日は朝6時から4時頃まで、あのマニラの
排気ガスを吸いながら、一日中運転です。
仕事のない日は、市場に行って野菜や果物を仕入れ、
1時間ほど車で移動したところにある、人通りの多い路上で、
販売しています。
路上での販売は、夕方始まります。日中市場に行き、
帰宅途中で買い物をする人が増える夕方5時から10時が
商売の時間。
子どものときはエンジニアになりたかったけれど、家に
そんな余裕もなく、小学校を卒業してから、すぐ働くようになった
お父さん。運転は見様見真似で覚えました。
マニラに来て、ジープニーの運転手になって、
そこで友達になった同僚の娘さんが、
今の奥さんでした。
10歳の年の差カップルです。
実は、お母さんも小学校を卒業しただけ。
この二人が今、子育てで望むことは、
1日に3度、ご飯をたべさせてあげること、
子どもが望むだけ学校に行かせること
この二つ、だそうです。
貯金箱、見てみると・・・

8月20日からコツコツ貯金をして、11月13日までで、
なんと2250ペソも貯めていました!
なのに、その後の記録がありません。

中身を見ると、コインが九つ。
「貯金は使っちゃったんだ…えへへ、
パスコ(クリスマス)でね。
でも返すつもりなんだ。返してまた始めるんだよ」
と、お父さん。
クリスマスの時期は、これまで働いてきたものを
すべて使い尽くすような勢いでお金を使うのがフィリピン流。
家族親戚が集まって、みんなでおいしいものを食べたり、
ギフトを交換しあったり、友達を呼んで幾度もパーティーをしたり…
日本のお盆と正月が一緒に来たぐらい重要な日。
この時期お金を使えないというのは、とってもとっても、
切ないことです。
あたたた、やっぱりそうなったか…と思ったのですが、
よくよく聞いてみると、実はクリスマスのために散財した
というのではなく、その時期に子ども二人と奥さんが
病気になってしまい、入院費、何度も続けて病院に行った交通費、
医薬品のために、消えてしまったのでした。
薬も見せてくれました。
クリスマスで散財してしまったように、冗談めかしてしゃべったお父さん。
どんな理由でも、貯めようとしていたお金に手をつけてしまったこと、
自分で自分が、恥ずかしかったんでしょうね。
私にはそう見えました。
と、いうことで、貯金は今日から再開することに。

一度に、元の2000ペソに戻そうなんて考えると
嫌になってしまうので、ゼロから再開して、こつこつ
やったらいいじゃないですかと言ってみました。
だって、お母さんのこんな姿

家族のこんな姿を見たら

この夫婦がどんなにこの貯金を大事にしていたか、伝わってくるのです。
無理しないくていいですよ、二人ならきっとできるから、と
伝えたくなります。
ビッキーさんに、出納メモ帳の記入の仕方を教わって、
「また頑張るね」、とご夫婦。

働きもののお父さんは、排気ガスを吸いながら
一生懸命働いたお金を、また少しづつ貯めていくのでしょう。
現実を見ると、なかなか貯金を成功させるのは、
難しそうです。
でもやってみて分かるのは、貯金したいという意欲そのものが
ないわけではない、ということです。
この取り組み、半信半疑で始めたのですが、想像していたより、
こつこつ型のお父さんお母さんたちと遭遇する率が高く、
うまくいかないんじゃないかなあと心配していた自分の思い込みを、
今反省しています。
3月までモニタリングしていきますが、どうなっているでしょう。
30分の予定が、1時間半も長居をして、この家庭を後にしました。

途中、お絵かきの授業を受けるためのチケットをなくして、
それ以来参加できなくなっている子に遭遇しました。

「チケットは再発行できるから、来週おいでね」と
お母さんに話すビッキーさん。
パヤタスでも、カシグラハンでも、一つ問題が発生すると、
そのたった一つで、全てのチャンスをあきらめてしまう傾向が
見られます。
実に多くの子どもたちや親御さんたちが、
えっ?そんなことで?と思えるような小さな障害で、
全てをあきらめ、それを受け入れ、鎖から解き放たれないのです。
そんな簡単なことで?というのは、情報を簡単に手に入れ、
便利な生活ができる立場にいる私達だから思えることで、
便利さ、速さ、選択肢をもったことがない状況、
訴えが受け入れられたり、望みがかなった体験や経験がない場合は、
ささやかに思える問題さえも、実は
高い高いハードルなのかもしれません。
食い下がって、続けられる道を探す、
あと一押しをする
目の前の課題を乗り越える術を、考えてみる、
人に聞きに行く
そうだったらいいな、を
そうなるように、
行動にしていくには、
何が必要なのか…
解き明かしたいことです。
子ども図書館や学校での取り組みで、
少しづつでも、ゆっくりでも、
変えていけないか、
そう考えています。
たまたま会えて良かった…。
きっとおいでね、来週は。
