福岡大学 精神医学教室の 斎藤陽子先生のお話を聞きました。
斉藤先生はPTSD治療の認定セラピストで、
専門に外来を受けてらっしゃる数少ないトラウマのプロ。
教えていただいたことと、感じたことを、書いてみました。
長いのですが、よかったらご覧ください。
感想・・・★
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・発達障害とトラウマの影響は似ている。
発達障害とトラウマの影響による症状は似ていて、
特にトラウマの場合、その人(子ども)自身が周りに分からないよう
カモフラージュすることもあり、区別を難しくさせています。
成育歴、養育環境、養育の時の難しさなどを慎重に
見ていくことで、発達障害との区別ができます。
「もしやトラウマ?」という「トラウマレンズ」を通して症状を見
区別して診断できる医師は、まだ少数。
★「トラウマかな?」と感じる時には、トラウマについてよく理解した
医師を選んで相談することが大事なようです。
・逆境的環境で育った子どもの特徴
自分の感情を気づくこと、言葉にして表すこと、感情のコントロールが苦手です。
自分の感情をコントロールできず、予測もできず、急上昇したり
急降下をしたりして、無力感に襲われます。
そんな自分で自分の気持ちが分からない、伝えられない、制御できない
苦しさを味わっている子に、相手の気持ちを考えることは、難しすぎること。
なので、「相手の気持ちを考えてごらん」は禁句。
この子は大変な環境で育った、体験をしてきたんだなと思う子、
厄介な行動が目立つ子に対して、どう接したらいいんだろうと思ったとき、
「感情を育てること」を意識するといいそうです。
どんな気持ちでも(殺してやりたい!!というような反社会的なものでも!)
気持ちが気持ちである限り、害はありません。
感情にはとことん共感し代弁するのはOK。(でも行為には共感を示さない)
例:むかむかして、怒りで殺してやりたくなる!
→ そんなことがあったら本当に腹立つよね。怒って苦しくなるよね。
また、どんなひどい気持ちでも、時間が経てば必ず終わることを
気づかせてあげる。
もしかしたら、自分は誰にも理解されないと思っている、
自分の反応がおかしい、ダメだと思っている子。
その子の感情を代弁したり、共感したり、その反応はおかしくない
(自分を守るために体が自然にそうしているんだよ)と気付かせて
あげることがいいそうです。
★まずは、その子が安心して、自分の心の声、感情に気づくのを助けること
ジャッジせず、まずは受け止めること
ライフスキル教育の「お絵かき」のコーディネーター研修で
奥村先生が、まず受け止めることの重要性を言われていました。
あの極意が役立ちそうです。
・チャイルド・マルトリートメント
日々の生活で繰り返され、長期間に及ぶ、不適切な関わり。
虐待とは言い切れないようなものも含まれます。
こうした関わり方や扱いを受けると、ストレスホルモンである
コルチゾールが慢性的に放出されて、
脳の中の扁桃体(警報スイッチ)が暴走し、視覚、聴覚、
知的能力、語彙力などに影響します。
★フィリピンで仕事をしていた時、困難を抱えている子どもや
そのご家族と接するとき、なぜこうも、みんな会話が続かないのか、
語彙が出ないのか、一貫性、論理性に欠け、聞き取りが難しいのか、
その共通性を感じていました。
そしてそれを、子ども時代の栄養不足と片づけてしまうことが多々ありました。
置かれた環境や体験によって、自分の感情への気付きが弱くなり、
言語化できず、制御できない…すごく腑に落ちます。
・トラウマ反応
過酷な体験をしても、体験者の多くは、自然に回復します。
でも、災害では数%、性暴力では60%、PTSDに苦しむと言われています。
トラウマ反応となって残ってしまうかどうかは、
その「こと」が決めるのではなく、その人が自然に回復できたか
そうではなかったかの違い。
1年後の時点で軽減していない場合は、治療しない限り、
その苦しみはずっと続くのだそうです。
★実際は、苦しむことがあっても、病院まで行かないケースの方が
多いのでしょうね。上記の数値は一部かもしれません。
災害、目で見る、耳で聞く暴力、抑圧…人は(私自分を含め)
誰しも大なり小なり、自分の中だけで自然回復させられなかった
トラウマ反応を抱えているものかもしれません。
・成長後の問題行動とマルトリートメント、トラウマ
トラウマやマルトリートメント、つまり環境が、脳の機能低下を起こし、
これらに影響しています。
勉強できない、言葉にできない、いじめ、非行、不登校。
★決めつけはいけませんが、もしや背後にトラウマの影がないか、
トラウマレンズで見てみる大人が、周りに1人でも多くいると
その子の対応は変わるのかもしれません。
ACE研究では、勉強や行動だけでなく、
健康・病気との関係も指摘しています。
肥満、肺の疾患、鬱などなど。
・希望 - 脳の可塑性
安定した環境、安心できる大人の存在で、脳は回復を見せてくれます。
特に子どもの間の可塑性は目覚ましいもの。
★一人でも多く、信頼できる、安心できる、受け止めてくれる大人が、
増えるといいです。
そうなりたいです。
でも、その大人自身、自分で自分を安心、安定させていられる
大人でなくてはいけないんですよね。
セルフケア、とっても大事です。
・トラウマ・インフォームド・ケア(Trauma informed Care TIC)
トラウマや逆境的体験が及ぼす影響について、知識を持った人が
増えていくことが大切。
★専門医師でなくても、情報としてトラウマを知っている人が増えることで、
子どもを、大人になっても苦しみ続けている人を取り巻く環境が
少しづつ変わってくるでしょう。
「知ったら変わる」これは、他の様々なことで証明済みですよね。
・心をけがしたんじゃない?
「心をけがしたんじゃない?」
「あなたがダメなんじゃないよ」
「けがしているからうまくいかないだけ」
心の免疫力を高める、言葉がけ。心理教育。
★自分に起きたことを認知し、感情に気づき、その反応が
自然な反応であることを認める、それを何度でも繰り返し、定着させていく。
癒やしや回復には、安心して話せる人と一緒に、
自分自身で受け止める作業を繰り返し行うことが、効果的なようです。
・役立つ絵本(先生おすすめ!)
ねえ、話してみて
こわい目にあったアライグマくん
さよなら、ねずみちゃん
いずれも誠信書房
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以上が、とっても有意義な2時間半の講座のごく一部と
その感想でした。
おしまいに・・・
子どもも大人も、自分の感情に気づくこと、
それが表現され、誰かに認められたという気持ちになると
「安心」しますよね。
でも、助けたい、力になりたいと思っても、自分の心が
安定していないと、かえって助けたい人の不安を高めてしまう
ことになるかもしれません。
不安や恐れがうつってしまったりすることは
支援や治療の現場ではよく見られること。
セルフケアが大事です。
自分で自分の心の声に耳をすませ、それを言葉にしてみること
そんな練習からやってみるといいかもしれません。
心の声を聴く、体の声を聴く、感覚から感情をコントロールする…
有効性をまた強く実感した夜でした。
今回の講座は、「子ども家庭応援(おせっかい)ワーカー養成講座2018」の
第7回目「トラウマケアとメンタルヘルス」の会でした。
全13回の講座の紹介文の冒頭には、こんなことが書いてあります。
「子どもの虐待が増加していく中で、地域にもっと子どもや家庭を応援する人が
必要だと考えるようになりました。困ったときに近くにいて支えてくれる、
面倒見のよいおじさんやおばさんが必要です。そのおじさんやおばさんが、
子ども家庭福祉や支援の専門的な知識やスキルをもっていると、より安全です。」
こんな気持ちがベースになっている学びの場。
40名定員の連続講座ですが、単発でも聴講可能(1回1000円)で、
私もそれで参加させてもらいました。
主催はワーカーズコープ九州沖縄事業部です。
素晴らしい、講座でした。
山口さん、日下さん、斉藤先生、ありがとうございました。