西日本新聞「ライフスキル考」3月掲載分です。
<ケンとの出会い㊦〉二重三重の見えない鎖
多くの子どもたちが参加したチャリティー
マラソン大会の様子を、子守をしながら
うらやましそうに見ていたケン(仮名)。
そのきゃしゃな体には、幼い弟がしっかりと
抱きついていました。
マラソン大会の様子を、子守をしながら
うらやましそうに見ていたケン(仮名)。
そのきゃしゃな体には、幼い弟がしっかりと
抱きついていました。
次に見かけたのは約2週間後の
暑い暑い日曜日。
暑い暑い日曜日。
路上でお父さんが引くリヤカーを
後ろから押し、付近の家々から廃品を
集める仕事を手伝っていました。
ケンは私に気付くと笑って手を振ってくれました。
後ろから押し、付近の家々から廃品を
集める仕事を手伝っていました。
ケンは私に気付くと笑って手を振ってくれました。
住んでいる家が分かり、何度か
家庭訪問をするようになって
ケンやきょうだいとは一緒に遊んだり
話したりと、徐々に打ち解ける
ようになりました。
家庭訪問をするようになって
ケンやきょうだいとは一緒に遊んだり
話したりと、徐々に打ち解ける
ようになりました。
でも、お父さんだけは、どこか警戒
しているような感じでした。
しているような感じでした。
ある日家に行くと、お父さんの友達がいました。
愛想はいいけど、やはりよそよそしい。
知り合いの女性がドキッとすることを
教えてくれました。
愛想はいいけど、やはりよそよそしい。
知り合いの女性がドキッとすることを
教えてくれました。
「あの家は気を付けたほうがいい。
〝クスリ〟をやってるっていう
うわさがあるのよ」。
〝クスリ〟をやってるっていう
うわさがあるのよ」。
クスリとは麻薬のこと。
真偽は分からないものの、
ケンたちのために何かできることは
ないかと知人に相談したところ、定職のない
お父さんに作業現場の下働きの仕事を
紹介してくれました。
ケンたちのために何かできることは
ないかと知人に相談したところ、定職のない
お父さんに作業現場の下働きの仕事を
紹介してくれました。
でも、仕事をする日、お父さんは
現れませんでした。
現れませんでした。
しばらくしてケンたち家族は消えてしまいました。
近所の人に聞いてもどこに行ったのか
分かりません。
私たちの図書館の存在を知らず、本も
見たことがないと言っていたケン。
次に会ったときには、きょうだいも一緒に
図書館に誘おうと思った矢先のことでした。
分かりません。
私たちの図書館の存在を知らず、本も
見たことがないと言っていたケン。
次に会ったときには、きょうだいも一緒に
図書館に誘おうと思った矢先のことでした。
ハイビスカスが咲く図書館のアーチ門を、
子どもたちはどんな表情でくぐるのだろうと、
わくわくしていた気持ちは
大きな不安に変わりました。
子どもたちはどんな表情でくぐるのだろうと、
わくわくしていた気持ちは
大きな不安に変わりました。
ケンの家族がいなくなったのは、フィリピンで
麻薬犯罪の撲滅に向けた取り締まりが
強化された時期と重なります。
麻薬犯罪の撲滅に向けた取り締まりが
強化された時期と重なります。
人権団体の当時の報告では、麻薬絡みの
殺人被害者は約5千人。その大半は
売人グループによる口止め殺人で、
行方不明者も多数出ていました。
殺人被害者は約5千人。その大半は
売人グループによる口止め殺人で、
行方不明者も多数出ていました。
お父さんにも身の危険が及んでいた
のかもしれません。
のかもしれません。
ただ、それは大人の事情。
貧しく治療ができずに亡くなったお母さん、
お父さんの薬物依存、
はびこる暴力。
お父さんの薬物依存、
はびこる暴力。
貧困にまとわりつく二重三重の不幸の鎖に、
ケンのような子どもたちが絡まれ、
のみ込まれていくさまが
脳裏に浮かびました。
ケンのような子どもたちが絡まれ、
のみ込まれていくさまが
脳裏に浮かびました。
鎖を断ち切るはさみになりたい。
そう強く思いました。
(NPO法人「ソルト・パヤタス」理事)















