Viva La Vida
6年ぶりに
かのこちゃんとマドレーヌ夫人
万城目学『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』を読みました。
万城目さんの小説を読むのは、
『鴨川ホルモー』『鹿男あをによし』『プリンセス・トヨトミ』
に次ぐ4冊目です。
僕は『鹿男あをによし』が大好きで、
「好きな本は?」と聞かれたら、
迷わず挙げるほどです。
伏線が終盤に一気に回収されるのが圧巻です。
そんな『鹿男』に比べると、
すごく緩やかな本でした。
しかし、小学1年生のかのこちゃんが可愛らしく、
猫のマドレーヌ夫人はほんわかと、
そんな風に描かれているのには、
流石万城目さん!と思いました。
そして、万城目小説も、伊坂幸太郎のように、
作品間のリンクがあるのがおもしろいですね。
これからの作品にも期待大です。
『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』
小学生や中学生にぜひ読んでもらいたいと思う本でした。
おしまい。
きつねのはなし
森見登美彦『きつねのはなし』を読みました。
怪奇譚ということで、
背筋が凍るような怖さかと思いきや、
どちらかというと、背筋をさわーっと撫でられるような、
そんな怖さ、というか気味悪さでした。
この本を読んでから、
夜の京都がちょっと怖くなりました。
僕は大阪へ行くとき、
JR嵯峨野線を嵯峨嵐山駅で降り、
阪急嵐山駅まで歩いて、
阪急で大阪へ向かいます。
時間はかかりますが、
JRだけで行くと1280円のところが、
790円で行けるので経済的です。
先日も、大阪から帰る際、
阪急嵐山駅からJR嵯峨嵐山駅を歩いたのですが、
23時ごろだったので、
店は閉められ人通りも少なく、
森閑としていました。
そして嵐山には川と緑があるのですが、
それらが闇にひっそりと沈み、
とても妖しい雰囲気が漂っていて怖かったです。
そのうち森や水の中から、
魑魅魍魎が次々と現れるんじゃないかと、
そんなことを考えていると、
自然と歩く足が速まり、
普段は20分ほどかけて歩くところを、
10分とかからずに駆け抜けました。
やっぱり怖い話は苦手だなと思いました。
とてもおもしろかったけど。
おしまい。
Theatre of dreams
「トレブル」という言葉が何を指すかご存じでしょうか。
トレブルとは、
国内リーグ、国内カップ、そしてチャンピオンズリーグ。
全てを制覇すること、
つまり3冠を達成することです。
昨年、FCバルセロナがこれを達成したことは記憶に新しいですが、
では、バルサの前に達成したクラブはどこでしょう。
マンチェスター・ユナイテッドです。
98-99シーズン。
プレミアリーグとFAカップを制し、
トレブルへ王手をかけたチャンピオンズリーグ決勝。
ロスタイムに突入し0-1でビハインドの状況。
ここから、2分間で2点を奪い、歴史に残る大逆転を演じました。
この2点は、どちらもコーナーキックから得られたものです。
そしてクラブに栄光をもたらしたそのキッカーこそが、
今回のお話の主人公。
デビッド・ベッカム
ベッカムは92年にユナイテッドに加入し、
練習生、レンタル移籍を経て、
94年5月、ユナイテッドのトップチームとして、
プレミアリーグデビューを果たします。
それから9年の間で、
プレミアリーグを6度、
FAカップを2度、
そしてチャンピオンズリーグを1度、
クラブにもたらしています。
個人では、年間ベストイレブンに5度、
年間最優秀若手選手賞に1度、
UEFA年間最優秀選手賞に1度、
輝いています。
ユナイテッドのエースナンバー「7」を背負い、
正確無比なロングパスとクロス、
そして美しい放物線を描くフリーキックで、
クラブを何度も勝利に導き、
サポーターからの人気も絶大でした。
しかし、2003年7月。
彼は「銀河系軍団」レアル・マドリーに移籍。
クラブの象徴だったスター選手はクラブを去りました。
それから約7年が経ちました。
チャンピオンズリーグ09-10、
決勝トーナメント1回戦の組み合わせ抽選が行われ、
マンチェスター・ユナイテッドは、
イタリアのACミランと対戦することになりました。
この対戦は決勝トーナメント1回戦の中で、
一番の注目カードとなりました。
なぜなら、ACミランには、
デビッド・ベッカムが所属しているからです。
ユナイテッドのホームスタジアム、
「theatre of dreams(夢の劇場)」こと、
オールドトラフォードに、
7年ぶりにベッカムが戻ってきます。
かつて、その右足から放たれる美しい放物線で、
サポーターたちを歓喜に酔わせたベッカム。
背に受けていた応援に、
今度は真っ向から対峙します。
彼を待ち受けるのは、
歓迎の拍手でしょうか、
敵対のブーイングでしょうか。
迎えた2010年3月10日。
マンチェスター、オールドトラフォード。
マンチェスター・ユナイテッドvsACミラン。
ベッカムはベンチスタートでした。
試合はユナイテッドが圧倒的な強さを見せ、
後半14分に勝利を決定づける3点目をあげます。
そして後半19分、ACミランは選手交代。
ついにベッカムがピッチサイドに現れます。
03年5月の試合を最後に、約7年ぶりのピッチ、
そこに初めて相手チームとして立ちます。
彼を待ち受けていたものは、
サポーターが彼に送ったのは、
歓迎の拍手と声援でした。
ベッカムがピッチに入ると、
ユナイテッドのサポーターは立ち上がり、
温かい拍手を送りました。
横断幕には「Welcome Home!Beckham!」の文字。
そして、彼らは応援歌を奏でます。
「There's only one! David Beckham!」
「唯一無二の存在、デビッド・ベッカム!」
彼らにとってベッカムは、ベッカムなのでしょう。
相手チームの選手に応援歌を歌うこと自体すごいことですが、
さらにこの応援歌は、
ゴールの瞬間を除いてこの日一番大きい声援でした。
その後は、ベッカムがボールを持つたびに、
掌を返したかのような大ブーイングが起こりました。
歓迎はする、しかしあくまでも今は敵。
ということでしょう。
それでもこのブーイングに込められたものは、
決して敵意ではありませんでした。
ピッチに登場したベッカムの目は、
オールドトラフォードの眩い照明を映し、
きらりと輝いて見えました。
彼にとっては、
7年ぶりの「ホーム」から見た景色は、
少し滲んで見えたかもしれません。
おしまい。
