小さな小売店を営む小林セキは、学は無いが思いやりのある女性だった。自慢の息子、多喜二は小樽高等商業学校(現:小樽商科大学)を卒業後銀行員となりつつ、プロレタリア文学の小説家として頭角を現していく。そんな多喜二をセキは見守る。国家権力の弾圧が強まる中、突然起きた息子・多喜二の虐殺という悲劇。悲しみに暮れるセキ。失意の中で過ごす毎日、訪れたキリスト教会で十字架刑に処せられたイエス・キリストと、息子イエスの死を悼む聖母マリアの話を聞く。無実の罪で殺された息子と、その死を悲しむ母という境遇を自分達に重ね合わせ、セキはクリスチャンとなる…。
三浦綾子氏の小説「母」の映画化。「反戦の意志も込めて作った」という山田火砂子監督の、渾身の力作。
因みに「しんぶん赤旗」コラムによると、セキ氏は亡くなる約1年前に共産党にも入党したとの事。