※今回の記事は、Youtube動画にもしています!
今、あなたがこの記事を見ているということは、読むことを選択したということですが、果たして、本当にそれは「あなたの意志で」選択したのでしょうか?
いや、近年の脳科学によれば、あらかじめ脳によってその行動は決められていたのかもしれません。
①人間に自由意志はない?
私たち人間は、「意識」を持っています。しかし、そもそも、よく考えると、コンピューターには意識がなく、人間には意識があるというのはおかしいものです。というのも、コンピューターの回路も、人間の脳も物質である点では変わらないはずだからです。
脳についての研究は、過去数十年でかなり本格化してきました。その中でも、意識、特に自由意志についての衝撃的な実験があります。
1980年代に、ベンジャミン・リベット博士によって、脳科学者の間で大論争となる実験が行われました。それは、「人の脳波を測りながら、その人が好きなタイミングで指を動かす」というシンプルなものです。
これによって分かったことは、簡単に言えば、私たちは、「(指を)動かしたいと思うから動く」のではなく、「そもそも脳が動かしたいと思わせている」ということなのです。指を動かす0.数秒前までには、すでに脳が指令を出していたということですから、驚きです。
すると、究極的には、私たちが会話する内容から、どのYouTubeの動画を見るかまで、あらゆる行動は、事前に脳によって決定されているのでしょうか?
さらには、脳へ電気刺激を与えて「欲望をつくる」実験もあります。「右手を動かすように」脳内へ適切に電気刺激を与えられた人は、「ふと、右手を動かしたいと思った」と言うのです。操作されたという感覚すらなく、右手を動かしたいという感情が生まれたのです。
②脳に関する驚きの出来事
そもそも、意識について理解するべきは、私たちの行動や思考は、かなり「無意識」によって決められているということです。イメージしやすいものとしては、体中に血液を流すことから誰かを好きになることまで、あらゆることを人は無意識に行っています。そう考えると、意外と、私たちは自分の体から思考までを、たいしてコントロールしないのです。
さらには、「意識」について深く考えさせられる事例もいろいろとあります。1つ目は、ある病気の手術の事例です。その手術では、なんと、治療のために右脳と左脳をつなぐ部分が切断されました。そして、驚くことに、その後、患者は何事もなかったかのように生活ができたのです。
ただし、そこにはもう1つ驚くべきことがあります。それは、この「分離脳手術」を受けた人の中には、なんと、左右の手が異なる動きをするケースが見受けられたのです。例えば、右手ではチャックを上げようとしているのに、突然、左手がそれを邪魔してくるというものです。もし、右手が自分の意志なら、左手は、いったい何者なのでしょうか?
他にも信じがたい事例があります。1966年にテキサス大学で痛ましい事件が起きました。ある青年が、無差別の発砲による殺人事件を起こしたのです。これにより、大勢が亡くなり、発砲していたその男自身も最終的に射殺されました。そして、この事件の本当の驚きはここからです。この極めて残虐な行為をした25歳だった男は、経歴や生活を調べると、平凡どころか優れた人物だったのです。無差別殺人どころか、人に危害を加えるような人ですらなかったのです。
それにも関わらず、残虐な行為をしたことに疑問を持ったのは、実は彼自身も同じであり、彼が残していた遺書には「最近、わけのわからない異常な考えが次々と襲ってくる」と記されていました。では、この原因は何だったのか? 実は、脳内に小さな腫瘍ができており、それが偏桃体を圧迫した結果、感情が制御できなくなっていたことが判明したのです。
以上の「分離脳」と「脳の腫瘍」の2つの例を考えると、「意識」や「自由意志」というものは、非常にあいまいなものだと気づかされます。右脳と左脳を分断すれば、「別の意識」に見えるものが現れてしまうし、脳にちょっとした異変があれば人間性まで根底から変わってしまうのです。そして、自分が「自由意志」で決定したと思っていることは、すべて(あるいは少なくとも大部分が)実は、あらかじめ決められていたものなのかもしれません。
すると、大きな疑問が浮かびます。意識や自由意志とは一体何なのでしょうか? 例えば、「石」には意識はあるのでしょうか? 斜面を転がる際は、石は、確かに動きます。しかし、石は、自分で移動するわけでもなければ、何かを感じるわけでもありません。あくまでも石の移動は「物理的な運動」にすぎないのです。
では、コンピューターはどうでしょうか? 石と同じく生物ではないものの、高度な計算をしているし、最近は人間と対話さえできます。しかし、コンピューターなどの「物」には意識はないでしょう。
人間の脳は、石と同じく物質でできており、コンピューターと同じく電気的な信号で動きます。そして、自由意志は実は存在しないかもしれません。つまり、私たちが「意識」や「自由意志」と考えているものは、結局のところ、石が落下したり、コンピューターが計算したりするのと同じく、単なる「物理的な運動」に過ぎないのでしょうか?
③意識と自由意志とは?
それならば、「意識」はなぜあるのか? 現代における主な答えはこうです。「意識は、生命の進化の過程で、たまたま生まれただけのものであり、何か重要な役割があるわけではありません。例えば、「飛行機の騒音」に何の意味があるのかと問うようなものです。飛行機は飛ぶことが目的であり、そのためにエンジンが必要です。そして、騒音はエンジンを動かすとどうしても出てしまうだけであり、騒音自体に役割はないのです。」
そうなると、私たちの言動は無意識に決まっていて、意識はただそれを感じ取っているだけだというのです。
ただし、それでも、まだ現時点では自由意志を完全には排除できないという意見もあることは確かです(注)。
はたして、私たちは、物事を感じるだけで、結局、何も自由に選択することはできないのでしょうか? そして、意識は、脳という物質が生む副産物に過ぎないのでしょうか?
(注)例えば、以下の書籍はこのテーマについて興味深く説得力のある問題提起をしている。
エリエザー・スタンバーグ『〈わたし〉は脳に操られているのか : 意識がアルゴリズムで解けないわけ』(インターシフト、2016年)
著者は「現時点で、自由意志がないと断言するのは早計だ」との旨を主張している。それには一定の説得力があるものの、最後の2章を中心とした「自由意志がなぜあると言えるのか」といった話に関しては議論の余地が大いにあるように思える。
【参考文献】
・意識と脳
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【筆者の詳細について】
―加藤将馬:著者、講演家、幸福学&ビッグヒストリー研究家
・加藤将馬のウェブサイトはこちら
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・YouTubeはこちら
【著書の紹介】
【1時間で読める要約版】宇宙と人類の壮大な歴史-ビッグヒストリー
紙の書籍773円→電子書籍0円!(今後変更の可能性あり)
宇宙と人類、138億年ものがたり ―ビッグヒストリーで語る 宇宙のはじまりから人間の未来―
本書は、宇宙と人類の歩みを考察する一冊です。
「宇宙が生まれた頃はどのような姿だったのか?」「なぜ数十万年も狩りをしていた人間は、今では宇宙進出を始めているのか?」「気候変動やAIなど、これからの人間社会はどうなってしまうのか?」といった大きな問いについて説明します。
そして、本書の最大のテーマは、「人間は文明を発達させて地球の覇者となったのにもかかわらず、なぜ世界には数多くの自殺者がいて、不幸が消えていないのか」というものです。
138億年にわたる壮大な物語を堪能していただくと同時に、人間社会のあり方にまで思考を巡らせてもらうことを本書では目的としています。そして、私がなぜ本書を書き、ビッグヒストリーを通じて何を伝えたいのか。ぜひ、最後まで見届けていただけると幸いです。

