「新型コロナウイルスのパンデミックは

昔のパンデミックよりもまし?」

 

今回は、「歴史からわかるパンデミックの事実」

そして、「今回は何が違うのか」をテーマに解説します

 

 

※こちらは、YouTube動画としても公開しています!⇩

 

 

 

 

①本当に、人類は新型コロナに負けたのか

新型コロナウイルスのパンデミックが始まってから数年が経ち、その間に、様々な情報があふれました

中でも、陰謀論が大きく広がるなどの混乱も起きています

あるいは、陰謀論を信じなくとも、「今回は、人類が負けた最悪のパンデミックだ」と思い込む人も数多くいるでしょう

 

②歴史からわかる事実は?

 では、事実はどうなのでしょうか? 

本当に、こうした考えは正しいのでしょうか? 

いや、データや歴史を振り返れば、まったく異なる真相が見えてくるのです

 

疫病は大昔からある

 まず、ニュースだけを見ていては忘れがちですが、そもそも人間は、大昔から病気に苦しんでいました

世界中に疫病が広がるパンデミックは、決して、クルーズ船や飛行機によって生まれたのではなく、定住と農業から生まれています(注1

 

人工が密集するうえ、家畜由来の病気が広まるためです

そして、私たちはつい、現在進行中のパンデミックを見て、「最悪の事態だ」と思いがちですが、歴史を振り返ると、そうでもないことが分かります

 

16世紀のアメリカ大陸

 ヨーロッパ人がアメリカ大陸やオーストラリア大陸などに行き、先住民を虐殺して征服したことはよく知られています

例えば、長い歴史と文化を誇っていたメキシコは、たった60年で人口が10分の1にまで激減してしまいました(注2 )

 

そして、その主な原因は、直接の虐殺ではありません

なんと疫病だったのです。スペイン人の持ち込んだ病原菌が、中央アメリカ、そしてアメリカ大陸中に広がり、先住民の人々は、訳も分からないまま亡くなっていったのです

 

20世紀のスペイン風邪

 さらに近年まで時を進め、20世紀初頭を振り返ると、当時は第一次世界大戦が強く印象に残る一方で、同時期に起きた、いわゆる「スペイン風邪」は、我々の記憶から消されています(※実際には、発生源は「スペイン」ではないうえ、「風邪」ではなくインフルエンザ)

 

しかし、この疫病は、実は、第一次世界大戦そのものよりも大きな被害をもたらしたのです

第一次世界大戦での戦死者の数は800万人前後とされています(注3

一方で、この疫病による死者数は、少なくとも5000万人はいたとされています(注4 )

しかも、当時の世界人口は現在の4分の1以下なので(注5)、現在の人口だと、2億人以上がパンデミックで亡くなった計算になります

 

天然痘

では、人類は、ずっと疫病に苦しめられるだけなのか? 

いや、そうではなかったのです

 

人類が長らく、何度も苦しめられてきた疫病に「天然痘」があります

これは、先ほど説明した16世紀のメキシコの先住民を壊滅に追いやった感染症の1つです

 それでは、人類が3000年以上苦しめられてきたとされる天然痘が20世紀後半に再び現れた時はどうなったのか?(注6 )

 

医学的な対処と、それまでに培ったワクチンの技術を応用し、世界中に広めることで、1980年、WHOは、ついに天然痘の根絶を宣言したのです

人類史上、初めて疫病に勝利した瞬間でした

 

人間の何十万年もの歴史がある中で、つい最近になって、疫病が怒れる神や悪魔のしわざではなく、目に見えない生物やウイルスのしわざだと解明したこと

さらに、その仕組みを研究し、毒性を減らしながらも抗体を身に着けさせる技術を、数十年前になって世界中で駆使して成功を収めたことは、よく考えると、本当に驚きの偉業なのです

 

③近年のパンデミック

たしかに、サーズやエボラ出血熱などが、比較的小規模なまま終息できたことを考えると、今回の新型コロナウイルスは、対応が不十分だったかもしれません

 

とはいえ、歴史的に考えると、現在、私たちが目にしているのは、人類の疫病への敗北ではありません

むしろ、今目にしているものは、「人類がウイルスに対して勝利しつつある」過程です

 

2020年からのパンデミックについて、少なくない人が、「人類は疫病に負けた」と振り返っています

しかし、私の考えは異なります

 

疫病で人々が次々に亡くなっても祈ることしかできなかった16世紀の中央アメリカと違い、あるいは、為す術なく現在の換算で2億人以上が亡くなった20世紀初頭と違い

今回の新型コロナウイルスにおいては、わずか2週間でウイルスを特定して検査を開発し、1年足らずでワクチンを開発できたのです。これは、まさに科学の偉業なのです(注7

 

たしかに、今回のパンデミックで数多くの方が亡くなり、苦しんでいます

これは間違いなく悲惨な出来事ではあります

さらに、科学的には成功しても、国々の対応(政治)についての批判はあるでしょう

 

ただし、歴史を振り返ると、未だに完ぺきとは程遠くても、間違いなく人類は進歩しており、幾分と「まし」になったことは明らかなのです

今回は、歴史を経て、人類が科学の力で疫病に対処できるようになってきたことを説明しました

 

私たちは、まだまだ疫病に苦しめられ、未だに数多くの人々が疫病で亡くなっていることを日々痛感する一方で、歴史を振り返ると、昔から悲惨なパンデミックはあったこと、そして、現在の私たちには科学の力があることが分かります

 

パンデミックが引き起こしている悲しい現状に向き合いつつも、時には歴史を振り返ることで、多くの人が見逃しがちな科学の進歩に気づけるし

 

パニックになってフェイクニュースにだまされることもなく、冷静で客観的な視点を持てるはずです

 

それは科学への理解と信頼を深めることにもつながります

それは、学問から学べる大切な教養だと私は思います


 

注1...農業を歴史的観点からどう見るかについては、歴史的名著であるジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』をぜひ読んでみてほしい。

注2...1520年の2200万人から1580年の200万人に減少した。 Hugh Thomas, Conquest: Cortes, Montezuma and the Fall of Old Mexico (New York: Simon & Schuster, 1993), 443–6; Rodolfo Acuna-Soto et al., ‘Megadrought and Megadeath in 16th Century Mexico’, Historical Review 8:4 (2002), 360–2; Sherburne F. Cook and Lesley Byrd Simpson, The Population of Central Mexico in the Sixteenth Century (Berkeley: University of California Press, 1948).

注3...Western Front | World War I, Definition, Battles, & Map | Britannica https://www.britannica.com/event/Western-Front-World-War-I War and Peace - Our World in Data https://ourworldindata.org/war-and-peace

注4...N. P. A. S. Johnson, J. Mueller, Updating the accounts: Global mortality of the 1918-1920 “Spanish” influenza pandemic. Bull. Hist. Med. 76, 105–115 (2002).

注5...Population, 10,000 BCE to 2023 (ourworldindata.org) https://ourworldindata.org/grapher/population

注6...Smallpox (who.int) https://www.who.int/health-topics/smallpox#tab=tab_1

注7...こちらの記事も参考にしたい。 『サピエンス全史』のユヴァル・ノア・ハラリ氏、 “新型コロナウィルス”についてTIME誌に緊急寄稿!|Web河出 (kawade.co.jp) https://web.kawade.co.jp/bungei/3455/

 

 

 

 

【筆者の詳細について】

―加藤将馬:著者、講演家、幸福学&ビッグヒストリー研究家
・加藤将馬のウェブサイトはこちら
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【著書の紹介】

自殺大国ニッポン: メンタルヘルスと幸福学で分かる日本最大の課題
紙の書籍1188円→電子書籍0円!(今後変更の可能性あり)

 

「身体的には平和になったものの、精神的には非常に危険な国である」というのが今の日本の実態です。そんな中で、いったい何が起こっていて、どのような対策がされているのか。それが本書の1つ目のテーマです。
 そして、最大のテーマは「そんな日本は、いかにして幸せな社会になることができるのか」というものです。ある著名な論文では、「アメリカや日本は短期間で何倍も経済成長したのにも関わらず、幸福度は上がらなかった」という衝撃的な研究結果が公開されました。国連による「世界幸福度報告」では、「北欧の国々は幸福度が一貫して高い」「中南米諸国は、経済力に対して幸福度が高い」といった考察がまとめられたことがあります。果たして、これらは本当なのでしょうか。そして、本当ならば、果たして日本は、いかにして幸せな国になることができるのでしょうか。

 

【1時間で読める要約版】宇宙と人類の壮大な歴史-ビッグヒストリー
紙の書籍773円→電子書籍0円!(今後変更の可能性あり)

 


宇宙と人類、138億年ものがたり ―ビッグヒストリーで語る 宇宙のはじまりから人間の未来―

本書は、宇宙と人類の歩みを考察する一冊です。

「宇宙が生まれた頃はどのような姿だったのか?」「なぜ数十万年も狩りをしていた人間は、今では宇宙進出を始めているのか?」「気候変動やAIなど、これからの人間社会はどうなってしまうのか?」といった大きな問いについて説明します。
 そして、本書の最大のテーマは、「人間は文明を発達させて地球の覇者となったのにもかかわらず、なぜ世界には数多くの自殺者がいて、不幸が消えていないのか」というものです。
 138億年にわたる壮大な物語を堪能していただくと同時に、人間社会のあり方にまで思考を巡らせてもらうことを本書では目的としています。そして、私がなぜ本書を書き、ビッグヒストリーを通じて何を伝えたいのか。ぜひ、最後まで見届けていただけると幸いです。