第15回 FUE の傷跡が気になる | 他院での自毛植毛の失敗、経過など写真付きで解説

他院での自毛植毛の失敗、経過など写真付きで解説

自毛植毛の失敗で悩んでいる方 植毛のやり直しは任せてください
植毛はオーダーメイドでありその人に合った治療が必要です。
何より大事なことは、正しい知識と技術を持って治療することです。

FUE は“傷が残らない”とか“坊主頭にしてもばれない”などウソや誇張されたPRもあって普及していったのですが、本当は“傷が残らない”のではなく“点状の傷が残る”が正確です。最近は我が国でFUEを受けてその瘢痕に悩まれている方もいらっしゃいますが、海外で施術を受けた方からいろいろと結果についての相談をうけることも多くなりました。たとえば韓国でFUEを受ける日本人は1年で200例程度にすぎないと聞きましたが、不満足な結果について相談を受けることが本当に多くなっています。


FUEの傷とは?

FUEは1ミリ径ほどのパンチで一個一個の毛包単位(フォリキュラーユニット)を直接くり抜く方法です。傷跡は無数の白い虫食い状の点になります。問題になる状態は以下の3つに分類されます。
①一個一個がケロイドになる
②一個一個の瘢痕自体が目立つ
③ドナー部全体が薄くなってしまう


なりやすい方の要因とは?

①の状態は受ける方の体質によりますが頻度はごくまれで、海外の学会で1,2その写真を見たに過ぎませんし、私にも経験がありません。

海外で行われたFUTとFUEのケース

どちらの施術後も瘢痕がケロイドになっています。

こうなるとFUTよりFUEの方がやっかいです。



なりやすい施術の要因とは?

②と③の状態がこれにあたります。
②については、一般的に1ミリ径以上の大きさのパンチを使うFUE は瘢痕が目立ちやすいとされています。その意味で小さな径のパンチを使うべきですが、その分毛根切断のリスクが大きくなります。日本人のヘアは白人よりも大きい(太く毛根が深い)ので毛根切断のリスクはもっと大きくなってしまいます。また1ミリのパンチをドナー頭皮と直角にくり抜けば1ミリの傷になるはずですが、ドナー部のヘアは斜め下方に生えているので直角にではなく斜めにくり抜くことになり、その断面は1ミリよりも大きくなります。さらに傷のなおる過程で瘢痕はパンチのサイズよりも2倍ほどに大きくなるはずです。

1mmの瘢痕は2mm、1.2mmの瘢痕は2.4mmに近い。
さらにパンチを斜めに使うと瘢痕はより大きくなります。





広告で目にするロボットによるFUEや、オムニグラフトという機械を使うFUEは1.2ミリ径と聞いています。その場合には傷跡は2.4ミリに近くなって、結構目立つはずです。


ロボットを使ったFUEの瘢痕。
一個一個の瘢痕が大きく同じ範囲から集中して株が採られている



③の状態はパンチのくり抜き密度に関係します。
一般的にドナー部に存在するフォリキュラーユニットの4分の1以上をくり抜くとその範囲全体が薄くなったと感じるとされています。いわゆるwhite wall(白い壁)とよばれる状態です。日本人は白い頭皮と黒髪との色の対比がとても強い上に、ヘア密度自体が白人より低い(まばら)のでこの状態になりやすいと思います。





FUEで採取された範囲全体が薄く見える




予防策は?

医師がパンチのサイズを出来るだけ小さくすることと過激なドナー採取をしないことです。ただ、私の経験では 2、3本毛は1ミリか、最低でも0.9ミリ径が必要だと思います。植毛は一度ですむとは限らず、長い視点で考えるべきですが、特に海外で施術を受ける場合には、日本人のヘアの特長を理解している医師を選ぶ、またせっかくだからと言って一度に過度の株数の採取を希望しないなどの受ける方の注意も必要になると思います。


改善策は?

とてもやっかいな状態です。どうしても改善してほしいならスカルプマイクロピグメンテーションといって一個一個の白い瘢痕に色素を入れてその範囲全体を濃く見せる方法が考えられますが、広い面積なら結構大変な作業になります。