なんだか今年のアカデミー賞ノミネート作品は、一時期のような「反白人」的な政治的でアグレッシブなムーブメントとしての多様性作品ではなく、少し落ち着きを感じさせ、かつてのようにまた純粋に良作を楽しめるような気がしています。
最近見ていたのは短編映画。
昨日は「Instruments of a Beating Heart (心はずむ 楽器たち)」のレビューを書きましたが、今日は「ANUJA(アヌジャ)」と、「I’m not a robot (私は人間)」について書こうと思います。
どの作品も秀逸で、22〜23分と短かさにもかからわず、強い印象や余韻を残す短編映画の魅力を、あらためて実感しました。
ANUJA アヌジャ
あらすじ
搾取工場で働くなか、賢い9歳の少女にめぐってきた学校に通うチャンス。自分と姉の将来がかかった難しい選択を迫られる少女の運命は。(Filmarks)
ネットフリックスで鑑賞しました。インドの貧困と教育の問題を描いた作品です。
姉妹の物語に強く惹きつけられます。
ラストで選択が明かされないのは、実際に救われる子供たちとそうではない子供たちがいる現実を暗に示しているのでしょうか。
本編映像後には、アンジュのようなデリーのストリートチルドレンを支援するNPO、「サラーム・バーラク基金」の様子が映し出されます。また、アンジュを演じた少女、Sajda Pathanちゃんの笑顔もみられるのが嬉しいです。
Sajdaちゃんもかつてはスラムに住み、物乞いをしていた子供の一人だったそうです。
心に残る作品。四つ星です。
I'm not a robot. 私は人間
あらすじ
CAPTCHA認証に何度も失敗したフェミニストのラーラ。そんな彼女に投げかけられたのは、「あなたはロボットですか?」と言う質問だった。(Filmarks)
The New YorkerのYouTubeチャンネルで鑑賞。約23分の作品です。
こちらはSF的な要素があり、起承転結がしっかりとした物語になっています。
仕事中に、「私はロボットではありません」のチェックボックスが表示され、何度やっても認証がとおらないー。そんな出来事からはじまるこの物語は、途中で展開が読めそうになるものの、最後には意外なツイストもあり、面白かったです。
こんな短い時間でこれだけの物語を作れるなんて、短編映画の魅力を改めてみなおしました。
日本語のタイトルが本当に「私は人間」なのか、それとも仮タイトルなのかわかりません。でもこの話の鍵となるのは「私はロボットではありません」というチェックボックスの決まり文句なので、なぜタイトルを変えたのかなと思いました。
同じタイトルの作品がすでにあるために、混同を避ける意図があるのかも?
社会派の作品と比べると重厚さはやや異なるような気がしますが、それでも最後までひきつけられる秀逸な作品でした。
星三つ半〜四つ。