日本の公立小学校を題材に撮り上げたドキュメンタリー映画「小学校 それは小さな社会」の短縮版、「Instruments of a Beating Heart 心はずむ 楽器たち(2024)」がアカデミー賞、短編ドキュメンタリー部門にノミネートされる快挙!

 

先週、YouTubeで鑑賞しましたが、23分と短いので、昨夜、再鑑賞しましたニコニコ

 

Instruments of a Beating Heart心はずむ楽器たち(2024)

 

 

東京都内のごく普通の小学校が舞台。1年生が楽器オーディションに挑む奮闘の日々を描く。第97回アカデミー賞短編ドキュメンタリー部門ノミネート作品。日米国際共同制作。 新1年生の入学式で「歓喜の歌」を披露するという最終学期の課題が課せられた1年生たち。あやめさんは、大役である大太鼓の奏者となるためオーディションに挑戦するも失敗。演奏メンバーには選ばれるが、練習では…。カメラが学校に入ったのはコロナ禍真っただ中の2021~22年。1年間長期密着した映像には、見たことのない子供たちの日々が記録されていた。(NHKのサイトより引用)

 

 

感想

 

このドキュメンタリーは、一年間、日本の小学校で撮影された映像の中から、新一年生の入学式に披露する楽器演奏のためのオーディションから本番までの出来事を切り取り、20分強の映像でみせていますが、その短い時間で「日本人らしさは、小学校の教育で作られる」というテーマを、ここまで鮮やかに浮かび上がらせているところがすごいです。

 

 

この作品の感想は、見る人それぞれの経験や立場によって変わってくると思います。

 

私は幼稚園から大学まで一貫教育の東京の私立校に小学校から高校まで通い、そこでの教育は、個性や自由と平等を尊び、環境や平和教育に重きをおく、探究学習が基本で、小学校では教科書を使わずに学んでいました。

 

日本の大学を卒業後に就職しましたが、一年後にオーストラリアへ渡り、オーストラリアの大学を卒業、小学校の教員となりました。(日本人向けの補習校ではなく、現地の小学校です。)

 

私の勤める学校はIB教育をとりいれた私立校なので、結局、日豪とも一般的な「公立校」を一度も経験したことがなく、この作品は、オーストラリアの教師としての視点でみた部分が大きかったと思います。

 

しかし、日本人であることは私の根幹なので、給食の経験こそありませんが、小学校でお掃除はしたし、まっすぐ整列された机と椅子に座って勉強したし、この映像でみることに自分のルーツを感じることもあります。

その点は日本人の心を持ちながら、外国人の視点が理解できる、監督の山崎エマさんに通じるところがあると思います。

 

まず一番驚いたのは、小学校一年生の「オーケストラ」を決めるのに、オーディションがあること!

ワクワクしながらオーディションに臨んだあやめちゃんが選ばれなかった時の涙、そして次に選ばれた楽器の練習で間違えて、先生に厳しく叱られた時の彼女のショック。

 

これはフォローする担任の先生の存在が大きかったし、音楽の先生ももちろん正しく教育的な意図をもって、あえてこうする必要があったのはわかるのですが、オーストラリアの現代の教育では子供の心を傷つけないことが重視されるので、それに慣れた身には衝撃的で、うわっ、これをみたら世界の人は驚くだろうなぁと思いました。

 

それでもきちんと心をこめて自分たちで自分たちの学校をお掃除するとか、食育を基本とする学校のプログラムとか、運動会が単なる競技会ではないこととか、日本の学校教育が、日本人の素晴らしい文化、社会のベースになっていることは間違いないと確信しているので、このようなドキュメンタリーが作られて、アカデミー賞ノミネートで多くの人の目にふれて、考えるきっかけとなってくれるのは、本当に嬉しいことです。

 

願わくば完全版の「小学校 それは小さな社会」もオーストラリアで観られるようになりますように。

 

★★★★☆(四つ星半)。アカデミー賞、がんばれ!