ネットフリックスで「ザ・レディ・イン・オーケストラ: NYフィルを変えた風」(The Only Girl in the Orchestra)を鑑賞しました。

 

2025年アカデミー賞、短編ドキュメンタリー部門にノミネートされています。

2月15日にみましたが、一週間たってしまったので、昨晩、再鑑賞。

35分の作品なので、再鑑賞のハードルが低いのが嬉しいニコニコ

ニ度みて、理解が深まりました。

 

ザ・レディ・イン・オーケストラ:NYフィルを変えた風The Only Girl in the Orchestra

 

あらすじ

コントラバス奏者として草分け的存在のオリン・オブライエンは、スポットライトを求めるような人物ではなかった。しかし、1966年にレナード・バーンスタインが彼女をニューヨーク・フィルハーモニック初の女性音楽家として採用すると、彼女は必然的にメディアの注目を集めるようになり、最終的には同世代で最も著名な音楽家の1人となった。Filmarks映画より引用

 

 

 

 

感想

 

一見、大旋風を巻き起こしたスターのような印象を受けるかもしれませんが、実際に鑑賞してみると、オリンさんはとても控えめな女性です。55年間ニューヨーク・フィルハーモニックに常任奏者として在籍し、2021年には87歳で引退されたというだけでも驚くべき実績にもかかわらず、彼女はむしろスポットライトを拒むかのような静かな献身を見せ、その姿に心を打たれます。

 

その控えめな姿勢は、彼女が演奏するダブルベース(コントラバス)にもよく表れています。学生たちに指導するシーンでは、次のように語っています。

"You don't want to stick out. You're a support for what else is going on. You're the floor under everybody that would collapse if it wasn't secure."


「目立ってはいけません。あなたは、他のすべての動きを支える存在です。しっかりした土台がなければ、みんなが崩れてしまうのですから。」

さらに、こうも述べています。

"I chose the double bass because I liked the idea of playing with other musicians. I didn't have ambition to be a soloist. I like being in the background."


「私は他の音楽家と一緒に演奏するという考えが好きだったので、ダブルベースを選びました。ソロとして輝く野心はありませんでした。背景にいるのが好きです。」

彼女の「目立ちたくない」という想いに反して、若い頃、レナード・バーンスタインの指揮の下、唯一の女性としてダブルベースを演奏していた姿はとても美しく、その存在感が際立っているというギャップが感じられます。

 

その背景には、華やかなハリウッドの大スターであったご両親との複雑な家庭事情があるのかもしれません。特に、戦争から帰還したお父さんが悪役しか与えられなくなった結果、両親はやがて離婚に至ったという経験が、彼女の心に深い影響を与えたと考えられます。こうした過去が、オリンさんがスポットライトを避け、むしろ仲間との絆の中で自分の居場所を見出す生き方を選ぶ理由のひとつとなっているのではないでしょうか。

 

また、彼女は次のようにも語っています。

"I don't have any children of my own; my students are like my children."


「私自身の子供はおりませんが、生徒たちは私の子供のようなものです」

この言葉には、私自身も深く共感するところがあります。

 

この作品は、華やかな成功や目立つ栄光だけではなく、互いに支え合う絆の中にこそ、本当の美しさがあることを、静かにそして確かに伝えてくれるようにも感じます。

 

そしてオリンさんの音楽はオーケストラや、彼女の教え子の活躍とともにいつまでも続いていくのですね。

芸術ってすばらしいです。オリンさん、ありがとう。

 

素敵なドキュメンタリーでした。

 

おまけ:オリン・オブライエン(Orin O'Brien)さんのご両親の情報です。

お父さんは、George O’Brien お母さんはMarguerite Churchill。

 

共演作は「紫のセージの騎士」Riders of the Purple Sage(1931)。

 

 

お父さんのファンサイトのリンク。41歳で第一次大戦で海軍に入隊するまで、たくさんの映画に出演されています。その後の出演作は減り、1985年に86歳で没。

大きな変化を経験した世代ですね。

 

お母さんのゴージャスなお写真。

 

ジョン・ウェインと。若いですね〜。